『金曜日』は創刊15周年でお終い

(株式会社 金曜日 の封筒の裏面より)
一般的には、民主主義の前提は自由闊達な論議です。その基本はウソではなく事実に基づいた主張です。このちいさな囲いの中で「自由闊達な論議」を『金曜日』は、それを「自由な作家・評論家と自由な市民からなる読者との直接交流」と表現しているようです。
きくちゆみ氏が主催する「第2回9.11真相究明国際会議」が決して開かれたものでないことは、「第2回9.11真相究明国際会議」 で説明しました。事実を歪曲した根拠に基づいた9.11陰謀説はその成り立ちからして民主主義的な論議の場にふさわしいものではありません。資料の事実に基づいて意見を述べるような参加者や論者は彼等にとっては不埒で変な奴なのです。『金曜日』は2002年9月以来、執拗に米ブッシュ政権の事件への関与を匂わせる論説を掲載してきました。『ヴァンドルディ』の精神など既に忘れてしまったのでしょう。
『ヴァンドルディ』は日本語では本来の「意味」は『土曜日』です。特に1990年台であればまだまだ多くの市民・勤労者・労働者にとってはそうであったはずです。「『土曜日』は人々が自分達の中に何が失はれてゐるかを想出す午後であり、まじめな夢が瞼に描かれ、本当の智慧がお互に語合はれ、明日のスケジュールが計劃される夕である。」 。もちろん1993年の創刊当時は「バンドル」なんて言葉もそれほど一般的ではなかったし、「花金」などという言葉とは無縁の人もまだ多数いた時代で、本質的には現在も変ってはいません。『金曜日』は東京の一種浮かれた感覚にすぎなかったのです。その点では、イメージだけを売り物にした東京中心主義の文化を広げようとする大手出版社の雑誌と大差なかったのです。戦前の土曜日は90年台の金曜日と等価ですが、時代背景が全く違いました。戦前は『土曜日』でも意味があったのです。
『金曜日』は11月に創刊15年です。『金曜日』の成沢宗男氏が『続9・11の謎 ‐「アルカイダ」は米国がつくった幻だった』を出版しました。その出版記念のイベントが開かれます。
出演するのは:
- 藤田幸久さん(参議院議員、民主党国際局副局長)
- 戸田清さん(長崎大学教授) ※
- きくちゆみさん(ライター)
- 司会:成澤宗男(『週刊金曜日』企画委員)
※ 長崎放送に出演されています。Youtube NBC長崎放送 報道センター 「論争続く米同時多発テロ」 2007/9/14 「2007/9/14、NBC長崎放送の番組「報道センター」にて放送された、911テ ロ陰謀説についての特集。長崎大学の戸田清教授の話や、ドキュメンタリー映画「LOO SE CHANGE」の映像を交えながら、911テロ事件の疑問点を紹介。」Youtube の解説 (2008/09/27 追記)
という顔ぶれ。戸田清さんは、「著名な」神学者デイビッド=レイ=グリフィンの著書の翻訳を きくちゆみ氏と共同で行っています。書名は『9.11事件は謀略か』といういささかダサいタイトルで、ほとんどはフランスのチエリ=メイサンの「大きなウソ」の内容をアメリカ人のグリフィンが検討もせずにそのまま紹介したようなものです。もし戸田氏が肩書だけじゃない本当の研究者なら、即座にこの本はすごく変だとわかったはずなのに。アイリス=チャン女史の『ザ・レイプ・オブ・ナンキン』でさえ、「イエロー=ジャーナリズム」 と呼ぶ『金曜日』の厳しい価値基準からすれば『9.11事件は謀略か』も同じくイエロー=ジャーナリズムでしょう。残りの方の人物評は こちら。
成澤氏の本はタイトル以外まだ読んでいません。2001年以前に「アルカイダ」という呼称が一般的でなかったとしても、たとえば1993年のWTCの爆破事件は既に現在のアルカイダと密接にかかわりのある人物達によって実行されていました。また、東アフリカの米大使館爆破事件もビン=ラディンを要とするネットワークが実行したものでした。ビン=ラディンはソ連のアフガン撤退後、新たに構築した組織をアルカイダ(基地の意味)と呼んでいました。こういう事実を陰謀論者が翻訳すると「『アルカイダ』は米国がつくった幻だった」となるのでしょう。なぜなら、9.11事件以後に「広く」知られるようになったからです。ある事件があったのでその犯人たちの名前が知れ渡ったけれど事件の前までは無名だったなんてことは当たり前のことじゃありませんか。
科学的な問題(『買ってはいけない』)ではいろいろ指摘を受けてきているようです。また、本多勝一氏の「日本人のDNAは・・・」というような決定論じみた書き方や、一般市民には理解不可能な「侵略」と「戦争」は別だ論、日中戦争は侵略だが太平洋戦争は帝国主義同士の「ケンカ」だという珍説、真珠湾攻撃はルーズベルトの陰謀だ論なども読者離れの原因かも知れません(いずれも南京大虐殺があった論の論法とは非常に矛盾した論理です)。
本多氏や佐高氏のような弁のたつ方と論議する必要も、成澤氏のような屁理屈をこねる方とも論議する必要もありません。一読者としては貧者の一灯である定期購読を止めればそれが一番の批判です(インターネットが普及した現在において、500円の週刊誌は内容が非常に優れていたとしても本来『金曜日』の対象とすべき読者から見ると感覚がずれていると思います。たとえば「しんぶん赤旗日曜版」は一部あたり160円から200円[月800円]で旅行、釣りや囲碁将棋、子供向けのページまであります。また経済関連の記事は『金曜日』より理解しやすいと思います。『金曜日』は陰謀説やニセ科学のような無駄な与太記事、またお手軽に書かれた記事が多すぎるのです)。
創刊月の11月は契約更新の読者が多いはずです。誌面内容の現状から見て、定期購読者が減るのは確実と思えます。最近、トンデモ本を出していた草思社が倒産しました。『金曜日』、凱風社、社会評論社、緑風出版と困ったときの「陰謀説」頼みをした出版社が軒並み倒産するなんてこともないとは言えないでしょうね。出版「者」としての眼力が全くないのです。中味が空虚な雑誌を売ろうとしても消費者は買いません。NHKは受信料の上にあぐらをかいて腐敗しました。『金曜日』も創刊15年経っても定期購読者に依存しているのですが、発行部数が伸びない、むしろ減少しているのは、読者の意識や取り巻く経済環境や社会情勢の変化だけでなくて、編集方針に大いに原因ありといえます。
9.11陰謀説は、反ファシズムではなく、逆にネオ=ナチや全体主義と連なるのものです。
(2008/09/13、9/20 字句訂正)
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