赤石号と天竜号

朝な夕な南アルプスを仰ぎ見て、その雄大な姿に敬仰の念をはぐくむべき子供たちのアルプス

 普通は、南アルプスのほうが通りがよいようですが、正式な名前は赤石山脈です。

 昔、飯田線には、伊那号、赤石号、天竜号という準急行が走っていました。伊那号は湘南型というタイプの4両編成の電車でグリーンとオレンジに塗り分けられていました。豊橋から東海道線に入って名古屋を経て終着駅は大垣でした。名古屋から先は快速だったと思います。これは上りの列車です。

 逆に、東京方面が下りです。下りの準急は、朝一番は、3両が「赤石」、2両が「天竜」の5両編成のディーゼルカーでした。ベージュと朱色に塗り分けてありました。辰野で「赤石」は中央本線の急行「アルプス」に連結して新宿に向かいます。「天竜」は長野に向かいます。飯田線は最初から電化されていましたが、昭和30年台になっても、中央本線や篠ノ井線は電化されていなかったからです。

 この「赤石」と「天竜」の5両編成は駅によってはホームが短くて最後の1両で乗降のできない駅もありました。ホームといえば、全長の半分の高さが低い駅がありました。多分、大正時代の名残だったのでしょう。今はそんなことはないようです。

 1970年台〜80年台ころまで、飯田線は古い電車や機関車があることで有名でした。戦前の関西で活躍した流電(流線型の電車の意味)や、東京周辺で活躍した通勤電車、米国ウェスチングハウス社製のED19機関車など。今は天竜峡から南のいくつかの秘境駅で有名なようです。運行しているのはJR東海です。

 先日の大鹿村のJRの説明会の質問のなかで、「赤石岳にあなあけるなんてバチがあたる」という言葉がありました。リニアのトンネルは赤石岳をくりぬくわけではありません。しかし赤石山脈は赤石岳で代表されるのですからこれでもよいのです。質問者は「『朝な夕な南アルプスを仰ぎ見て、その雄大な姿に敬仰の念をはぐくむべき子供たちのアルプス』、といえる、すばらしいことだと思いました。」と続けています。気になった言い回しなのでメモをしっかりとったので間違いはないと思います。最初に引用した時には「・・・アルプスといえる、すばらしい・・・」と二重カギカッコと句点を1つ省いています。質問者のいいたいことは、多分、子供たちが敬仰の念を抱くことができる赤石山脈がそのままであってほしいということだと思います。

 昔の飯田線では、「赤石」も「天竜」も、山並みや川の流れと同じ南北方向に走っていたのです。飯田線も地形にしたがって、集落、集落を結んで、敷かれていたからです。谷を分断するようによこぎるリニアはそういう伝統に逆らうものと思います。

(2013/10/17)