大鹿村で住民説明会(6月2日)

 大鹿村でJR東海が工事用道路計画などについて住民説明会がありました。


 小渋側右岸に予定されている電力変換所(変電所)への高圧線の景観への影響が心配されるので中部電力の社員も参加しました(写真後列の灰色と黄色の服)。また道路改良については長野県も関係するので県から2名が参加していました(写真はステージの左側だけ写っているので右側にいた県職員は写っていません)。

 19時に始まり、終了は22時を回っていました。いろいろな質問が出ましたが、非常に狭い谷間ですから、どのルート案を採用してもどこかに必ず支障が出るのはあきらか。教育委員会からは国道152号線の代替としてJR東海が最良と考えている小渋川右岸の堤防を走るルートについて、小学校の教育活動と生徒の健康への影響を考えるとやめて欲しいという意見が出ました。

 どの質問に関しても、JR東海の回答は基本的には以前と変らないという感じでした。

 変電所への受電側の送電線については質問と回答がありましたが、配布された資料を見ていて、出力側の電線を上蔵の非常口までもって行く方法はどうなっているのか疑問に思いました。受電設備が一番下流側、その上流側に電力変換設備、さらに上流に出力設備という配置で、既存の県企業局の大鹿発電所の東側の斜面にできる斜坑口まで、現在は骨材の砂を洗っているプラントの一部を通過して電線を設置するはずです。

 釜沢の奥の斜坑を完成後に埋め戻すという話は初耳でした。

 中電の日程表を見るかぎり、送電線の建設については環境アセスメントは行わないようです。鳥類の生息などへの影響はという質問にたいして、中部電力は白鳥が電線に衝突する例があるが付近に湖や池はないのでそういうことはないだろうというような説明をしました。それに対してJR東海の沢田部長がそういう質問ではないという指摘があったりして、中部電力は説明方法をもっと研究しないと住民の理解を得ることは難しいと思いました。送電線のフォトモンタージュがいくつか示されましたが、対策をしたものが逆に目立ったりしてなにか変でした。鉄塔の鋼材の表面処理のサンプルは背景色が白で対策をした黒っぽい方がよりはっきり見えるというややマヌケなスライドもありました。数片のフォトモンタージュで理解しろというのは無理。

 フォトモンタージュといえば、変電所のものも示されました。豊丘村の説明会で示された枠だけのものでなく、構造物の画像がきちんと描写されているものでした。右側には赤ナギから出てきた土砂が見えます。以前、大崩壊地の対岸に変電施設のような重要な施設を設置するのは問題があるのではという指摘がでていた記憶があります。

 小渋線に新設するトンネルについては詳細な図面があるのに、拡幅部分についてはスライドで詳細な図面を見せたのに配布されていませんでした。配布された資料は住民から指摘があったとおり不十分で、分室で閲覧できるようにするといっていましたが、今の時代、HPに掲載するといわないのは気が利かないからなのか。そういえば、この2つのトンネルの残土はどう処分するのでしょうか?

 四徳大橋ともう一つ狭い橋があってそこがネックになるのではないかという質問がありましたが、シミュレーションでも「避けあい」が起きているのに問題はないという回答をしていました。四徳大橋は手前に広い場所があるのでまだまだ良いのですが、もう一箇所は見通しはよいとはいっても軽四同士なら安心という程度の幅であること、経験では橋に突っ込んでから対向車があることに気付くこともないわけではありません。橋の入り口の一方はほぼ直角の角になっています。上りの場合特に見落とす可能性が高い場所です。現在は小渋線の走り方になれた人が多いから問題がおきないという状態だろうと思います。お年寄りが病院に通うような場合にシミュレーションどうりにうまくいくのかといった疑問もだされました。

 省エネルギーが課題のこれからの時代にリニアは時代遅れという指摘もありました。JR東海は決して時代遅れとは思っていないと、当たり前ですが答えていました。

 事業が失敗したとき『責任』はどうなるのかという質問がでました。JR東海はきちんと答えませんでした。前の戦争では、陸軍、海軍、政府などの組織が無責任体制であったといわれています。JR東海や、国土交通省、長野県、飯田市などの関係自治体にも組織としての無責任体制があると思います。責任はともかくも、迷惑をこうむるのは住民、国民という構図が同じであってよいはずはありません。

 トンネル工事は県と共同ということなので、費用の分担割合が問題ですが、まだ決まっていないとのこと。東京のごく一部の人だけのためになんで長野県がカネを出さなければならないのか? これを機会に道路の改良をというのが自治体首長の手腕だと評価されるのは昔の話ではないかとも思います。そうやって作った身の丈にあわないインフラの維持管理はどうするの?

 静岡でも大井川の減水などで問題が起きているという指摘がありました。大鹿だけでなく、各地で住民の死活に関わるような問題があると思います。大鹿村では、リニアの建設に対してほとんどの住民が基本的に賛成していないという印象を受けました。そのような場所から工事を始めようとするJR東海ですが、実際にどのゼネコンがトンネルを掘るのかはまだ決まっていなかったと思います。

 JR東海がいっている「理解」というのは「我慢せよ」ということではないかという指摘もありました。釜沢の斜坑口付近で24時間体制の水平ボーリングでかなり迷惑を受けた結果わかったことだと質問者はいっています。同じようなことが10数年も続くのかと。丁寧な言葉遣いであっても、どうみてもJR東海の態度は「お殿様」であって「そこのけそこのけお馬がとおる」として「理解」せざるをえないというのは、ちょっと面白くない話です。

 県議選直前に脳出血で倒れながらも当選した吉川彰一議員が参加していました。大鹿では、そもそもリニア建設に反対の声が大多数ということが分かったと思うので、中途半端な態度ではなく、リニアは建設すべきでないという立場で活躍してもらいたいです。

(2015/06/03)

 思い出したので補足すると。JR東海の沢田部長は、残土の仮置きの量と運搬車両の台数の説明のとき、ここまで仮置きすれば何台になるという説明を、何段階もやりました。これについて、仮置きを大量に受け入れれば、台数は減るんだと強制しているような印象を受けると指摘した住民がいました。言葉遣いが丁寧であっても、説明の論理の組み立てに地金が出てしまったという感じですね。

 沢田さんは今年50歳だそうです。対して大鹿分室長の上野氏は57歳。別に意味はありませんが、参考になるかと思って。

 より詳しい報告が「美しい村」の議員日記 6月5日に掲載されています。

(2015/06/05)