JR東海の「中央新幹線における動植物の確認調査結果」(2015年6月)

 6月121日、JR東海はリニア沿線6県のルート周辺で行った希少動植物に追加調査の結果を公表しました。『信毎』13日によれば、大鹿村では16種が工事箇所から約600m以内で16種が確認されましたが、JR東海は工事計画や保全策の変更はしないと説明しました。距離だけでなく、周辺の水の条件がかわれば影響があるとする専門家もいて、県環境政策課は「専門家の意見を聞き、新たな対応が必要であればJRに助言する」としたそうです。

 『南信州』14日紙面では大鹿村では17種と書きました。『信毎』13日記事で16種。2紙の違いは、「ニホンキクガシラコウモリ」。

 JR東海のHPの 「中央新幹線における動植物の確認調査結果について」同・県別を見てみました。

 JR東海公表の資料では、哺乳類については、「留意種(N)」として「ニホンキクガシラコウモリ」と「ニホンカモシカ」があって(表1-1-4-1 確認調査で確認された重要種(哺乳類) = p1-10)、『信毎』は両方を省き、『南信州』は「ニホンカモシカ」だけを省いています。鳥類は両紙とも「サンコウチョウ」だけをのせていますが、「JR東海資料の 表1-1-4-2 確認調査で確認された重要種(鳥類) = p1-11」では7種のっています。記事のタイトルは「絶滅可能性ある16種確認」、「…17種の重要種確認」と・・・記事とJR資料を合わせ良く読むと混乱します。JR東海の資料には16種とか17種を一覧にまとめた表はないようです。

 本文を順に読んでいくと、 「1-1-4 調査結果 (1)大鹿村釜沢(A地区)」の「1)哺乳類」(1-10ページ)に「今回現地で新たにニホンキクガシラコウモリ、シナノホオヒゲコウモリ、ニホンテングコウモリが確認された・・・」、「2)鳥類」(1-11ページ)に「今回現地で新たにサンコウチョウが確認された・・・」、「5)昆虫類」(1-12ページ)に、「今回現地で新たにオオナガレトビゲラが確認された・・・」、「7)底生動物」(1-14ページ)に「今回現地で新たにヒメヒラマキミズマイマイが確認された・・・」、「2-1-4 調査結果 (1)大鹿村釜沢(A地区)」の「1)植物」(2-6ページ)に、「今回現地で新たにオオハナワラビ、トキワトラノオ、イワアカザ、ツメレンゲ、サイカチ、ギンレイカ、ヒトツバテンナンショウが確認された・・・」、「2)蘚苔類」(2-7ページ)に「今回現地で新たにミヤマコネジレゴケ、イチョウウキゴケが確認された・・・」、「3)地衣類」(2-8)に「今回現地で新たにヒカゲウチキウメノキゴケ、フイリツメゴケが確認されたが・・・」。つまり、「今回現地で新たに・・・確認された」という部分を拾って行くと『南信州』のように17種になります。

  1. ニホンキクガシラコウモリ
  2. シナノホオヒゲコウモリ
  3. ニホンテングコウモリ
  4. サンコウチョウ
  5. オオナガレトビケラ
  6. ヒメヒラマキミズマイマイ
  7. オオハナワラビ
  8. トキワトラノオ
  9. イワアカザ
  10. ツメレンゲ
  11. サイカチ
  12. ギンレイカ
  13. ヒトツバテンナンショウ
  14. ミヤマコネジレゴケ
  15. イチョウウキゴケ
  16. ヒカゲウチキウメノキゴケ
  17. フイリツメゴケ

 『信毎』が「ニホンキクガシラコウモリ」をあげなかった理由は良く分かりません。

 さて、『信毎』(13日)の記事の見出しは「絶滅可能性ある16種確認」、本文では「大鹿村釜沢では、新たに絶滅の可能性のある16種を確認・・・」と書いています。『南信州』(14日)の見出しは「釜沢で17種の重要種確認」、リードでは「釜沢では新たに17種の重要種を確認した・・・」、本文では「大鹿釜沢では、環境影響評価書に記載がない動植物17種の生息が新たに確認された」と書いています。

 JR東海は調査で確認された重要種をあげて表で示しています。釜沢地区だけについて書き出します。

  1. ニホンキクガシラコウモリ
  2. シナノホオヒゲコウモリ
  3. ニホンテングコウモリ
  4. ニホンカモシカ
  5. アオバト
  6. ハリオアマツバメ
  7. イヌワシ
  8. クマタカ
  9. オオアカゲラ
  10. サンショウクイ
  11. サンコウチョウ
  12. オオナガレトビケラ
  13. ヒメヒラマキミズマイマイ
  14. オオハナワラビ
  15. トキワトラノオ
  16. エビラシダ
  17. イワオモダカ
  18. イワアカザ
  19. ツメレンゲ
  20. ジンジソウ
  21. サイカチ
  22. ギンレイカ
  23. ホソバツルリンドウ
  24. タチキランソウ
  25. ヒトツバテンナンショウ
  26. ミヤマコネジレゴケ
  27. イブキキンモウゴケ
  28. イチョウウキゴケ
  29. ヒカゲウチキウメノキゴケ
  30. フイリツメゴケ

 『信毎』、『南信州』が見出しで書いている重要種が16とか17種に比べると、倍近い種が確認されているとJR東海はいっているわけです。報道機関がこういう数字を「値切る」意味があるでしょうか。確認された総数をどちらの記事も書いていません。

 重要なことは、JR東海がやった環境影響評価は5割り近くも手抜きをやっていた可能性がある、穏便にいえばかなり不十分すぎたということじゃありませんか。

 他紙は、『毎日』13日『中日』13日など随分あっさりした書き方です。

(2015/06/16)

 参考として、6月12日の『中日』は、静岡市がリニア予定地で独自に行った環境調査を発表した記事では、JR側の環境影響評価(アセスメント)手続きで確認されなかった動植物十三種を含めて四十六の重要種を確認した。と書いています。JR東海のアセスメントの調査期間が十分な長さであったとしたら、長野県でJR東海自身がやった追加調査の結果や静岡市の調査の結果とアセスメントの結果が3割も5割も違うことはないと思います。

 『毎日』17日も静岡市の調査について書いています。

(2015/06/18)