高森町議会傍聴記

 6月19日の午前中、高森町議会を傍聴してきました。

総務民生委員長の不法行為

 安保法制は重要なことですが、6月11日に書いた「政府に地方自治を尊重するよう求める意見書」についての質疑もありました。沖縄辺野古への米軍基地建設に関連して、沖縄県が国に対して抵抗していることに関連して、自治体や住民の意志を踏みにじる政府にそういうことをするなよ、一般的な意味において「地方自治」を尊重してよねというのは至極当然。次は高森町にたいしてそういうことが行われるかも知れないのですから。

 総務民生委員会で審議したのですが、その過程で住民が傍聴を拒否されたという事件。大島総務民生委員長が議会の規則を「根拠」に拒否したとのこと。しかし、中川議員が「理由」をただしても委員長は「明確な説明」はできず、3月議会でも同内容の請願が出されたからという程度のものでした。高森町の住民は、同じ内容の請願は一定の期間を過ぎないと出すことができない、あるいは議会/委員会は採択してはいけないという法律があるとは思えません。

(2015/06/20 追記) この点に関して、20日の『信毎』は、大島正光委員長は「(請願者本人がいると)率直な意見の交換や意思決定の中立性がそこなわれる」と説明した。同議会の委員長報告の質疑で話した と書いています。私もこの言葉は聴いていますが、こんなものが理由にはなりません。20日の本会議の傍聴には請願者が来ていたと記憶しています。20日の本会議の様子を見て思いましたが、傍聴人にお聞かせできないようなお粗末な発言しかできない議員さんが委員会のうちかなりいるのが本当の理由だと思います。

 委員長は傍聴を希望した住民に対して「根拠」である条文を示したそうです。林議員が住民に説明する際に示した資料について委員長に確認をしました。全国町村議会議長会編の「議員必携」を示したとの回答。実は示したものは全国の自治体の議員向けに出されている「議員必携」に書かれた「いわば」「ひながた」(標準議会会議規則)であって、「高森町の議会規則」ではなかったようです。たとえ条文の一字一句同じであったとしても、これは不法行為だと思います。この委員会での採決は可否が3対3で最後は委員長が不採択と決したそうです。大島委員長は無意識かも知れないですが、こういう違法行為=自治体で定めた条文の軽視または無視をする委員長が、不採択と決するのは無理はないと思います。

 議会規則は自治体ごと全て異なると考えるのが当然です。というのは、これより後の議事で、傍聴者が傍聴席に杖を持ち込んでよいという、高森町の議会の「傍聴規則」についてではあるのですが、その改正について審議があったのが何よりの証拠です。つまり、「根拠」は「高森の議会規則」でなくてはならないはず。原本かそれに準ずるものとか、直接それら複写したコピーを示すかすべきだったはず。

 大島委員長のやっちゃったことは、地方自治の基本を無視する行為であって、住民の正当な権利を根拠なく委員長個人の恣意的な判断で封殺したといえます。総務民生委員長の行為は即刻委員長辞職に値すると思います。

傍聴者を挑発する馬鹿議員

 安保法制への意見書の審議ですから、傍聴席は満席でした。田切征勝議員は請願を採択すべきでないという趣旨の討論を述べました。発言席から傍聴席の直前にある自分の席まで戻って、座る前に傍聴席にむかって、「ざまーみろ」とでもいいたげなしぐさをしました。傍聴席がややざわつきました。

 議員がこういう行為をできるのは、安倍首相が国会で「早く質問しろよ」みたいなヤジを飛ばすのが常態化しているからだと思います。自由民主党を支持する地方議員も腐りきっているということなのでしょう。

 後のほうで、傍聴席に杖を持ち込んでよいという議会規則の改正の議論がありました。全員一致で可決しましたから、田切議員も賛成したわけですが、それはマヌケすぎると思います。田切征勝議員は自分の頭が杖で殴られる可能性はないと考えているのでしょうか? 民主的な政治制度は暴力的な支配や闘争に変るものです。田切征勝議員のやったことは、民主主義に挑戦するものです。何も発言できない傍聴席にむかって挑発的な態度をとることは民主主義に大いに反する行為です。それは暴力を誘発しようとするものです。高森議会は、田切正勝議員に対して辞職勧告の決議をすべきだと思います。

 議員のこういう行動を、議長は即座に叱責すべきだと思います。それをしなかった議長の責任もまたきわめて重いと思います。

地方自治の尊重とは

 田切議員は、地方自治の尊重を政府に求める請願の審議のなかでは、それより前に発言した中川議員個人に対して、「隣組(自治会)に加入していないくせに何をこく」みたいな発言をしました。中川さんはすぐに反応して不規則発言をしました。高森町では自治会に加入していない住民が相当います。中川さんが当選できたのもそのことを示していると思います。

 公明党の宮下議員はもっと回りくどいいいかたで、請願を出した住民ではなく、やはり中川さんにたいして自治会に加入していないものが地方自治の尊重について語る資格はないという意味の発言をしています。宮下議員は自身が林務委員(吉田区が所有する山林を管理する委員)をやったことを語り、自治会に加入していない中川議員はそういう共同作業で汗を流さないとでも言いたげでした。私はできるだけ地区の共同作業には参加しようと思うし、自分でできるものであれば役割は受けるつもりですが、中川さんをそういうことをしていないといって批判する気持ちはありません。おそらく、中川さんをこういうことで批判しようと考える町民はごく少数だろうと思います。なぜなら、自治会が、無駄な行事や、無理な出労を強いる面もあるのになかなか改善されないということも知っているからです。自治会の側でも新たに加入してもらえるよう、いろいろ改善すべき点があるというのが高森町全体の共通認識だと思います。

8人のわからんちゃんと内股膏薬

 安保法制への意見書と地方自治の尊重の請願については、「請願を不採択とする委員長報告に賛成」の議員がどちらも8名で同じ顔ぶれでした。

 宮外議員は、安保法制への意見書について、請願の趣旨の一部は理解でき賛成だが、なんだかわけの分からない理由で委員長報告には賛成(=意見書を出すべきでない)という討論をしました。地方自治の尊重について市川議員が似たような発言をしていました。いわく、趣旨は賛成だが沖縄の問題に比重がありすぎるから反対と(=委員長報告に賛成)。こういうのを内股膏薬というのでしょう。宮外議員はアジア共同体構想に共感していると延べ、鳩山内閣のブレーンだった寺島実朗氏の名前をだしたのはいいのですが、安保法制について寺島実朗氏がどういう見解を示しているのか知っているのか、ちょっと勉強不足じゃありませんか?

 賛成の討論をしたのは、宮下議員(公明)、岩口議員、田切征議員。賛成の議員さんに共通するのは、一生懸命に話されているのですが、原稿を、しかもどっかからコピペしたようなのを、りきんで読み上げているだけで、意味が通じる話じゃなかったです。共通していえることは、兵站が戦争の一部であり、勝敗を決める重要な要素であることが理解できていない点です。こんな人たちに限って好戦的だというのは困ったことです。太平洋戦争では、日本軍は兵站を軽視したのに対して、米軍は兵站を非常に重視しました。インパール作戦がもっとも典型的な例ですが、ガダルカナル島やレイテ島も補給を無視したことで大きな犠牲を出しました。田切議員は「自衛隊へのスクランブル発信が増えている」といっておられましたが、それって、自衛隊機が中国やロシア他の国の領空を侵犯しているという意味ですよ。

 反対の討論は小平芳幸議員(共産)、中川賢俊議員、林まゆみ議員、加藤糸子議員(共産)、城子唯久議員、福澤千惠子議員。これらの方々の発言は非常に理解しやすい。分かりやすい話ができるというのは、考え方がしっかりしている証拠だと思います。これだけ重要な問題に関して発言できなかった議員さんがいるというのは驚きでした。高森町議会は定数15。賛成が8ですから反対6。反対派は全員がきちんと意見を述べているのに、賛成派は8人中4人が意味不明の理屈をこねただけ。

賛成、反対

 議題は、請願についての委員長の報告に賛成か反対かです。請願を不採択とするというのが報告内容です。請願の内容は、ざっといえば、安保法制はやめてよねという意見書を政府にだしてねという内容。その請願を不採択というのが委員長の報告でそれを審議するので、安保法制に反対するという請願の内容に賛成の議員は「反対」討論をするのです。なにか分かりにくい感じがしました。

 安保法制に反対の議員が協同で意見書案をだせば、町民には分かりやすいのにと思いました。

時間の無駄?

 議事のあいだ、町長、副町長と役付きの役場職員はずっと黙って座っています。もちろんこれは必要なことだと思います。しかし、具体的にこの日のような議事が行われているのを見ると、有能な職員がこの間仕事ができないのですからなにか無駄だなと思いました。地方自治を尊重すべきという意味なのですから、こういう意見書は速やかに決して提出すること。地域に即したもっと重要な案件について審議の時間が取るべきです。町民の多くが安保法制に心配しているのだから、これも速やかに意見書をだして、地元の問題に議論の時間を割くのが町の議会の議員の務めじゃないかと思います。

参考

アメーバニュース(2015年06月17日 10時05分)「標準市議会会議規則」って何?(地方議会ニュース)

多くの市町村議会の「会議規則」をみると、「標準・・会議規則」をそのままコピペしているようなものが大半です。
このため、どこの議会の会議規則も、だいたい同じような規定です。

(2015/06/20)

(2015/06/21追記)『朝日』4月23日は、寺島実朗氏のインタビューをのせています。寺島氏も安保法制には反対していると思います。少なくとも安倍首のやり方にはきわめて批判的と思います。

 米国は今、日中の紛争で米中戦争に巻き込まれたら大変だと思っている。米中が、戦略的対話と意思疎通を深めているとみるべきだ。
 日本は対中戦略の一環として、集団的自衛権の行使容認に踏み切ろうとしている。そこには「米中が対立すれば、米国の愛情が日本に向かうのでは」との屈折した心理がある。だが行使容認は、米国がユーラシアで引き起こす戦争に自動的に巻き込まれる恐れがあることにも気付くべきだ。
 これからの日本は軍事に傾斜せず、周辺国と信頼の枠組みをつくる努力を前提とすべきだ。軍事衝突の可能性を限りなく少なくするよう、アジアの真のリーダーとして存在感を強める努力をすべきだ。

(補足 2015/06/25)

(参考資料) ○高森町議会委員会条例

(傍聴の取扱い)
第16条 委員会は、議員のほか、委員長の許可を得た者が傍聴することができる。
2 委員長は、必要があると認めるときは、傍聴人の退場を命ずることができる。
(秘密会)
第17条 委員会は、その議決で秘密会とすることができる。
2 委員会を秘密会とする委員長又は委員の発議については、討論を用いないで委員会に諮って決める。

 つまり、今回の場合は、請願理由を説明するために委員会に出席した、たとえばAさんは、委員長に、委員会を傍聴させてねとお願いして、委員長が許可したら傍聴できるというのが第16条。事前に申し込みがなかったのだから、説明が済んだら出てってねというのは条文に照らしてOK。さらに傍聴の申し込みの仕方について規定がないので、一般町民はアクセスのしようがない。と考えるか、民主主義と地方自治の原則に照らして基本的に傍聴ができると考えるかのどちらか。

 それとは別に、審議議題の何であっても、委員や委員長が、秘密会にしたいと発議すれば話し合わないで、委員会で話し合って決めるという意味がわかりますか。それと秘密会にできる理由、たとえば個人のプライバシー保護のためなどの理由について基準がない。つまり、お馬鹿な発言しかできないので恥ずかしいなと思った委員が「秘密会にしまいか」といえばそれでも秘密会にできる、委員長がそう思えば即座に秘密会にできるということじゃないでしょうか。

 第16条、第17条からわかるのは、委員会は基本的に自由には傍聴できない。傍聴の可否は委員長の恣意的な判断であっても良いということ。個別個人のプライバシーに関わる部分を除いては審議内容は全て公開にされるべきという民主主義の原理にはそぐわないと思います。現在のように自民党の超タカ派支持議員と公明党議員が多数を占めている場合にはとんでもない議事運営が好き勝手放題にできるということ。


補足 2015/07/06

補足 2015/08/01