嘘つきは泥棒の始まり

 嘘つき泥棒の始まり。

 だいたい、福島第一原発の事故処理もきちんとできていないし、東日本震災の復興も進んでいない状況で、五輪どころではないはずだったのに。


 左のベルギーの劇場のマーク。TÉÂTRE DE LIÈGE の最初の「T」と3つ目の単語の頭の「L」を図案化したことがすぐに理解できます。「T」の字の横棒の右半分を「L」の横棒と置き換えて、点対称の図形にしたということが見ただけで分かります。三角形の斜辺の曲線は外側の円形と同心円になる円の一部です。シンプルだけれど気が利いています。

 右の東京五輪。左の三角形は東京の「T」の字の横棒の左側と分かります。右側の赤丸は「日の丸」と「T」の字の横棒の右半分と分かります。じゃ、右下の斜辺が曲線の三角形は何の意味でしょうか。なにか東京五輪という言葉そのものや関係する言葉などの中にこういう形で連想できるものは無いようです。また斜辺が曲線になっている理由もわかりません。

 「T」の字を左右二つに割って、右側をひっくり返したんだから、「東京」の「T」の意味だといういいわけもしていないようです。

 とすれば、点対称の図形がデザイナーの記憶の中にあった。日の丸を付けたことで左右のバランスは取れたのですから本当は右下の三角形は必要ない。しかし、記憶の中にあったベルギーのデザインは気が利いている。そこで三角形の色を灰色にして左右のバランスをとりつつ、元来の点対称図形も生かそうとした。そう分析して見ると無意識のうちに盗用してしまったのではと疑いをもたれても仕方ないでしょうね。

 図案の骨格部分がウリフタツなのは、少なくとも見た目からは明らか。

 だいたい、東京を象徴する文字は「T」でなくても「ト」でも「と」でも「東」でもよかったはずで、26文字しかないローマ字表記なら「T」で象徴される土地や事物の名前など世界中には無数にあるわけです。デザインを審査した五輪関係者が迂闊だったのではないでしょうか。「組織委の広報担当者は『発表前にベルギーを含めて世界中の商標確認をしており、問題ない』」といっているのですが。こんな時期に開催するなんてトンデモナイの意味で「ト」にすればよかったのに。

 さらに、スペインのデザイナーの考えたスマートフォンの壁紙とも似ていると指摘されたそうです(『朝日』7月30日)。『朝日』によれば、「東日本大震災後に寄付金を募るネット上の活動に参加し、11年に公表していた」ものだそうです。こちらのデザイナーはおうようで、「『(五輪のエンブレムという)重要な案件に、インスピレーションを与えたとしたら誇りに思う』と答えた。法的な措置などをとるつもりはない」といっているそうです。


 安倍さんの場合、どの嘘が最初の嘘か分からないところが困ります。現在、憲法を解釈改憲でドロボーしちゃったのは確かなんですが。

 安倍さんと大の仲良しのJR東海の「葛西さんのリニア」だって、嘘が多いことは共通点が多い。

(2015/08/07)

8月16日付『中日』の子供向けのページの記事「東京五輪エンブレムが話題」。デザインした佐野氏のコメント「『和を非常に強く意識した』と意図を説明。全ての色が集まることで生まれる黒は、・・・異なる人種や文化を認め合う多様性を示すという」。黒はファシストが好む色で、ファシストはたいてい差別主義をとっていたことを佐野さんは知らないみたいです。

(2015/08/17)

 『朝日新聞』8月29日によれば、佐野氏のデザインは最初はベルギーの劇場のロゴとは似ていなかったそうです。しかし、実は「ある国のある会社の商標に」似ていたので大会葬式委員会が直してねと頼んだそうです。修正をもう一回お願いした結果、ベルギーの劇場のロゴに似てしまった。最終的に絞り込んだ応募作品は佐野氏のものとほかに2点、合計3つあったそうです。ほかの2点を選ぶという道もあったはず。すごく間抜けだと思います。


 最初のデザインが、またはデザイナーが、そもそも「筋が良くなかった」といえるのではないか。ほかの作者のほかの作品にかえればよかったのかもしれません。リニア中央新幹線だって同じで、超電導磁気浮上方式はどんなに改良を重ねてもものにならない技術。

(2015/08/31、09/01改訂)

その後

1. この図案のポスターをこういう場所に張り出すとこんな風に見えますよと紹介する写真。フォトモンタージュみたいなものですが、佐野氏はその土台になる写真2枚をネット上から無断借用していたことがバレてしまいました(『朝日』9月1日)。ズクのない話です。JR東海の環境アセスメントなんかはこんな杜撰さもあるけれど、担当の社員さんが撮影技術も顧みず土台用の写真を撮っているなど権利関係は問題ないです。

2. 佐野氏の最初の案に類似のデザインがあったことが分かってしまいました。それは、「ヤン・チヒョルト展」の図録の表紙。(『朝日』9月1日)。ヤン・チヒョルトは活字書体の創生に努めた人ですから、佐野氏が自身の専門分野との関連でこの展覧会と図録を見た可能性は高いと思います。

3. 1日、審査委員代表と佐野氏の協議で佐野氏が応募作の撤回を申し出たので、大会葬式委員会は佐野氏の案を白紙撤回して再度公募することになりました(『中日』9月2日『毎日』9月1日)。

4. 佐野氏の仕事については、サントリーの景品のバッグのデザインでも問題が指摘されていました(「ITmedia」8月13日)。

5. 新国立競技場の建設計画の白紙撤回に続いて、エンブレムも白紙撤回と、お粗末すぎる話。海外でも評判になっているようです(『朝日』9月1日)。

(2015/09/02)

6. 新聞記事などで、文字をデザインすればどうしても似てきてしまうという「専門家」による擁護、弁解のようなコメントが複数のっていました。アルファベットを使うからそうなる可能性が高くなるんだから、日本の文字を使えばよかったのにと前に書きました。佐野氏も大会葬式委員会も意外と古臭い西洋かぶれなのかもしれません。

7. 賞金の100万円は返してもらったそうですが、五輪グッズとかポスターなどもう作ってしまったものもあるそうです。協賛企業が作ったものも相当あるようです。安倍五輪はお金と労力の無駄遣いの連続。原発と同じ。リニアもきっと同じ。

(2015/09/02)

8. デザイン自体の良しあしが問題にされていないという専門家の指摘もあったようですが、ロクでもないデザインだからこそ、問題が大きくなったのだろうと思います。参考にならないですが、私は良いデザインとは思いません。『朝日』3日の投書欄に「64年東京五輪エンブレムでいい」という意見が載っています。同じように国立競技場も64年当時のものを復刻するとよいと思います。つまり壊した競技場を復元。そばに「無駄遣いは二度としません」という石碑を建てます。

(2015/09/04)

9. 8. で、そもそもデザインが悪いと書きました。『信濃毎日新聞』9月27日にスポーツ評論家の玉木正之さんが「創作とは過去しのぐもの」という文章を書いています。「佐野氏のデザインが過去の作品に『似て』いても問題ない。が、残念ながら、過去を凌駕する斬新さは認められない。」

(2015/09/28)