大鹿村がリニア工事に同意

 10月21日、大鹿村議会と大鹿村長はJR東海のリニア新幹線工事について同意を決定。JR東海が急ぐ理由は、「南アルプスを貫通するめどが立つまでは、予定通りに開業できるか不透明な部分もある」(JR東海幹部、『中日』20日)。しかし、村当局が、一緒になって慌てる理由がわからない。村長は常に住民の側に目を向けるべき。村内に残土があふれ、小渋線は改良されずという未来がこないとも限らない。そうなればもちろん、そうなるまえでも、ダンプの走り回る大鹿村はもはや「美しい村」とはいえない。

 『中日』21日は"村の同意表明を前に、村議会が会合を開いて同意を決めた。賛成4、反対3。最後まで揺れて賛成した斎藤栄子村議(58)は「『今回ばかりは反対して』と懇願する支持者もいたが、同意しなければ村は何も変わらない」と語った。" と書いています。斉藤さんの考え方は、賛成した多くの議員さんの意見を代表していると思います。しかし、これはかっての日本がバスに乗り遅れるなと日独伊三国同盟に組し、あるいは日米開戦を決定したときの指導者たちの考え方と同じ。付和雷同とか和而不同っていう古い言葉を思いだしました。自治体、国会を問わず議員としてやってはいけない最悪の決断です。

 大鹿の議員さんたちが参加したかどうかは不明ですが、大鹿村を含む下伊那郡の北部5町村の議員さんたちは、この地方自治の危機の日に高森町に集まってマレットゴルフや宴会やっていたそうです。

21日は下伊那北部5町村の議会の総会で、マレットゴルフのあと総会、その後に慰労会というスケジュールで、大鹿議会の方たちは総会だけ参加されたそうです。全員がそれだけ重く受けとっておられることは理解できるのですが、もっと明朗快活でおれるような審議と結論を出すことができなかったかと、それが残念だと思います。他4町村の議員さんたちが何か学び取ることができたかどうか。特に高森町議の皆さんはよそ事と思っていては困ります。

高森町議の中川賢俊氏が次のように書いています。

今日の北部ブロック総会の件です。
大鹿村議会のみなさんは、午後いちのマネットゴルフ大会には参加されませんでした。午後4時からの総会の本会議には、出席されました。総会が済んでからの、交流会という名の飲み会にも参加されませんでした。村を二分する大問題の重みを受け止め、自粛されました。頭の下がる思いです。
北部ブロックとしても、議員交流を名目にして、遊んだり飲んだりはそろそろ卒業された方がよりしいと思います。地方議会や自治体をめぐる環境に、もっと危機意識を持つべきです。

 『中日』21日は最後に柳島村長のコメントを載せています。"着工同意を表明した柳島貞康村長もこぼした。「(リニア工事は)地元以外であればと思った。決してありがたい話ではない」" って、JR東海や長野県に同意しないと命の補償はしないぞとでも言われたのですか柳島さん? 徳富蘇峰が本当にそういったのか定かじゃないですが、日米開戦を決定した当時の東条首相は首相の器ではなかったとテレビドラマの中では西田敏行がいってます。

長野側トンネル1日着工 リニア最難関、大鹿村が同意
2016年10月21日 23時24分
 リニア中央新幹線の工事で最難関とされる南アルプストンネルで、JR東海は21日、長野県側の出入り口となる大鹿村で11月1日に着工すると発表した。住民の間では工事への懸念や反対が根強いが、21日は村が着工への同意を表明し、JR東海は条件が整ったと判断した。
 村の同意表明を前に、村議会が会合を開いて同意を決めた。賛成4、反対3。最後まで揺れて賛成した斎藤栄子村議(58)は「『今回ばかりは反対して』と懇願する支持者もいたが、同意しなければ村は何も変わらない」と語った。反対した河本明代村議(59)は「あまりに性急」と涙を浮かべ、悔しさをにじませた。
 村は南アルプスを望む急峻(きゅうしゅん)な山間部にある。工事現場近くの釜沢自治会長、谷口昇さん(46)は、昨春にあったボーリング調査で不快な音が山に反響し、谷中を覆った記憶が忘れられない。
 住民の改善要望にJRの担当者は「対策を取る」と言ったが、その後も騒音は響いた。昼間だけだったはずの調査は夜間も実施され、谷口さんは「住民無視のJRの姿勢に不信感は高まるばかり」と憤る。
 村では、人口を上回る1日最大1700台の工事車両が走る計画。コンビニのない村で買い物や通院に欠かせない生活道路を大型車が行き交い、狭い道路でのすれ違いも懸念されている。
 着工同意を表明した柳島貞康村長もこぼした。「(リニア工事は)地元以外であればと思った。決してありがたい話ではない」
(沢田佳孝)

 22日の『中日』

“密室”で僅差の賛成 リニア工事着工、大鹿村議会同意
2016年10月22日
 「密室」での結論は賛成四、反対三の僅差だった-。工事車両による生活環境の悪化を懸念する声は根強く、住民の賛否が割れるリニア中央新幹線の南アルプストンネル工事。二十一日、着工同意の是非を非公開で審議した大鹿村議会の判断は、身内の村議からも「村民の反発が出る」と疑問の声が上がった。
 村議八人が集まった村役場の一室では、近くに異例の規制線が張られ、一時間半の議論が続けられた。複数の村議によると、途中まで賛否を保留する村議もおり、最後まで同意に至るかは分からない状況だったという。
 終了後に会見した柳島貞康村長と熊谷英俊議長は「(過去に)リニアを巡る発言から傍聴人に激しく詰め寄られた議員がいた」として「自由に議論するため非公開とした」と説明した。村役場に駆けつけた住民団体からは「密室での決定は住民軽視だ」と批判の声が上がった。非公開を巡っては村議の意見も割れた。
 同意に反対した東村邦子村議(67)は「議論して悩んだ結論だという面が見えなくなってしまった」と非公開に疑問を呈した。同じく反対した河本明代村議(59)は「確認書の公表からわずか一日余り。議会として村民への説明責任を果たしたとは言えない」と述べた。
 一方、賛成した斎藤栄子村議(58)は非公開はやむを得ないとの立場。「村議も賛成、反対の支持者がいて板挟みで心苦しさがある。熟慮の上での非公開だったのでは」と理解を求めた。
◆知事、歓迎と注文
 阿部守一知事は「着工が広く県の地域振興につながる第一歩となると期待している」と歓迎する一方、JR東海に対し「大鹿村など関係する市町村の切実な要望に丁寧かつ誠実な対応を求める」と注文した。
 (五十幡将之、沢田佳孝)

 『中日』22日のもう一つの記事

リニア工事「理解、進んでいない」 反対住民が大鹿村長に文書提出
2016年10月22日
 二十一日、大鹿村と村議会がリニア中央新幹線工事の着工同意を僅差で決めたことを受け、反対する住民団体「大鹿リニアを止める実行委員会」代表の宗像充さん(41)は「結果は議員間でも意見が割れている証拠。住民の理解はまだまだ進んでいない」と強調した。
 午前八時前、宗像さんらは村役場近くに立ち「リニア反対」のプラカードを掲げた。村議会の会合が始まった後も、マイクで「もっと住民の方を向いて議論して」と庁舎に向けて呼び掛けた。
 宗像さんらは村議会の会合前、拙速な同意に対する反対文書を柳島貞康村長に手渡した。「村民への説明責任を果たしていない。会合も公開するべきだ」と訴えた。
 九~十月の住民説明会では、大量の工事車両が走ることによる生活環境悪化への不安や補償を訴えた。JR東海は「努力する」「ご理解いただきたい」と述べるにとどまり、納得のいく回答は得られなかったという。村が住民の不安解消より、工事を急ぐJR東海の立場を重んじているように感じる。
 リニア工事の禁止を求める仮処分命令を申し立てている住民グループの弁護団は二十日、村長と議長あてに抗議書を提出した。確認書締結に抗議し、着工同意を中止して住民投票するよう求めている。
 (服部桃)

 『信毎』21日、15時09分

リニア着手、大鹿村同意 南アトンネル 県内初、本体工事
 2027年東京(品川)―名古屋間の開業を目指すJR東海のリニア中央新幹線計画を巡り、下伊那郡大鹿村の柳島貞康村長と村議会は21日午前、村役場で協議し、県内初の本体工事となる南アルプストンネル長野工区(8・4キロ)の工事着手に同意すると決めた。村側は協議後、電話でJR側に伝えた。同社は「地域の皆さまにはご理解を深めていただけたと考え、工事を始めさせていただく」(広報部)と表明した。
 JRは11月1日に村内で安全祈願式を開き、準備工事に取り掛かる方向で調整を進めている。リニア計画で最難関とされる南アトンネル(全長約25キロ)は長野、静岡、山梨3県にまたがる。山梨工区(7・7キロ)は昨年12月に起工しており、長野側からも掘削のめどが立ったことになる。
 村議会が冒頭以外非公開で開いた協議には村議全8人が出席。柳島村長と共に、南アトンネル長野工区の工事開始について同意の可否を議論した。柳島村長は全会一致が望ましいとしていたが、採決となり、議員側は議長を除く7人中、賛成4人、反対3人の賛成多数で同意を決めた。
 約2時間の協議を終えた柳島村長は「確認書や住民説明会で住民の不安は低減された。村内には工事に対し賛成、反対さまざまな声があるのは承知している。村民の皆さんは心を一つにしてご協力いただきたい」と述べた。熊谷英俊議長は「JR東海に村民から要望する中、環境負荷の低減をある程度勝ち得た。議員はそれぞれの意思を表明する中で議会は同意を支持することになった」とした。
 JRが14日に開いた2回目の全村民対象の工事説明会では出席者から異論もある中、JRが「住民理解を得た」と結論付け、17日に工事着手の意向を正式に村側に伝達。19日には工事用車両の運行ルートなどをまとめた確認書を同社と締結、内容を公表した。
 村議会は今月3日、工事は村議会と村長が「工事開始への同意」を表明した後に行うなど8項目の意見書をJR側に提出し、JR側も尊重すると回答していた。21日の協議はこれに基づいた手続きで、確認書締結からわずか2日間での同意となった。
 大鹿村ではリニア本線のトンネル2本の掘削工事で約300万立方メートルの残土が発生する見込み。1日最大1736〜1350台の工事用車両が生活道路を通行する。JRによる14日夜の工事説明会では、生活環境を脅かされるとの懸念に加え、「住民理解」の捉え方を巡り、工事に反対の意見があるにもかかわらず「理解が進んだ」とする同社の姿勢に村内から批判も出ていた。
 反対派住民でつくる「大鹿リニアを止める実行委員会」は21日午前の村長と村議会との協議前、確認書締結を「結論ありきの拙速な手続き」として抗議し、工事開始の同意に反対する意見書を柳島村長らに提出した。
(10月21日、15時09分)

 『信毎』21日、8時49分

長野工区11月1日着手 リニア工事 JR東海が調整
 JR東海がリニア中央新幹線南アルプストンネル長野工区(8・4キロ)の安全祈願式を11月1日に下伊那郡大鹿村で開き、工事に着手する方向で調整していることが、複数の自治体関係者への取材で分かった。大鹿村では10月21日に村議会が柳島貞康村長と協議し、工事開始に同意する見込み。建設を巡る住民らの根強い不安や異論を残したまま、県内初の本体工事に入っていくことになる。
 同社の沢田尚夫・中央新幹線建設部担当部長は14日の全村民を対象とした工事説明会後、「住民理解が得られた」と表明。17日に工事着手の意向を村に伝え、19日には、長野工区着手の前提となり、工事用車両の通行時間やルートなどをまとめた確認書を同社と村で取り交わしていた。長野工区の作業用トンネル坑口(非常口)の作業場は既に整地が進んでいる。
 工事着手を巡り、県内沿線の住民には、トンネル掘削で生じる残土量に応じた埋め立て地や仮置き場が決まっていないことや、工事用車両の増加などを懸念する声が根強い。長野県など沿線1都6県の住民らが国を相手に工事実施計画の認可取り消しを求めた訴訟は東京地裁で係争中だ。
 同社広報部は取材に「関係機関との調整はしているが、安全祈願式の日程や場所はまだ決定していない」としている。
(10月21日、8時49分)

『南信州』21日、 16時29分

大鹿議会が南アトンネル工事着手へ同意
[ 2016年 10月 21日 金曜日 16時29分 ]
 大鹿村で計画されているリニア中央新幹線南アルプストンネル長野工区(8・4キロ)をめぐり、村議会は21日、工事開始への同意について柳島貞康村長を交えて非公開で協議し、村長、議会ともに同意することにした。JR東海は村側の同意を待つとしており、これにより県内初の本体工事に入る計画で、同社は関係自治体と安全祈願式の日程調整を進める方針だ。
 村は協議会後、JR側に「村および議会が工事着手については適当と判断した」と電話で伝えた。
 また村は同日、同意したことを村ケーブルテレビを通して村民に周知した。
 この日の会合は任意の協議会で熊谷英俊議長が招集し全議員8人が出席、柳島村長が同席した。柳島村長が確認書の締結を踏まえて工事着手に同意する意向を表明し、議会は議長を除く7人中賛成4人、反対3人の賛成多数で同意とした。
 2時間余の協議後に採決を選んだ理由について、熊谷議長は「『同意はやむを得ないが、立ち場上同意はできない』といった考えもある中で、このまま協議を続けても全会一致には至らないと判断した」とした。
 協議後、柳島村長と熊谷議長が会見に応じ、柳島村長はJRとのこれまでのやり取りを説明した上で「着手については適当だと判断した」と語った。JRと結んだ確認書については「住民の不安軽減策だと考える」との認識。村民に向けては「工事後の村づくりに向けて心を一つにして協力いただきたい」と述べた。
 村は来月をめどに、JRや県を加えた村リニア連絡協議会を設置する。柳島村長は設置の理由について「工事に対する賛成や不安などさまざまな意見があることは承知している。実際の工事による影響を確実に把握し、迅速な対応によって影響を最小限にするため」とした。
 18日に開かれた村議会全員協議会でも、議長を除く7人のうち4人が工事に賛成の姿勢を示していた。
 工事着手についてJRは、村議会から出された意見書に基づいて村長と村議会の同意を得た後としていた。
 同社の澤田尚夫・中央新幹線建設部担当部長は14日の全村民対象の説明開会後、「住民理解が得られた」と表明。17日に工事着手の前提となる確認書案を村に提示した。18日に議会側が確認書の締結を了承したのを受け、19日に工事用車両のルールや環境保全策などを盛り込んだ確認書を村とJRが締結した。