原因は誰が作ったのか?

 松川町の深津町長は20万立米の残土の受け入れと引き換えに上片桐の工業団地の用地7ヘクタールの造成をJR東海にやらせます(『信毎』8月10日)。JR東海がガイドウェイ組立ヤードとして使用するのは3ヘクタールだけ。

 大鹿村の柳島村長は、リニアの工事に同意することで、JR東海と長野県に県道の改良をさせました。多分来年中には改良工事は終わるので、そうしたら全村挙げてリニア工事に反対すれば良いと思います。

 高森町の熊谷町長は9月29日の議会全体協議会の席上、来年1月の町長選には出馬しないと表明しました。高森町はJR東海のガイドウェイ組立ヤードのために下市田河原にある用地を町の予算で造成するといっています(『中日』9月6日『南信州』9月6日)。29日の全体協議会では、用地は借りてもらうか買ってもらって、ガイドウェイ組立ヤードとしての使用が終わった後についても、JR東海で利用して欲しいと考えているというような話も出たそうです。何を考えているのでしょうか。6.7ヘクタールの優良農地の全体をアスファルトで舗装するのだそうです。


 飯田市座光寺の河原にある住宅団地は、もとは県の貯木場のあった場所です。飯田市が約20数年前に住宅地として分譲しました。当時は抽選になったそうです。購入時には1坪が12万7千円だったそうですが、今はせいぜい10万円位だそうです。地形のためもあるかもしれませんが、いまだに下水道が完備しておらず、共同の浄化槽を住民が運営しています。この団地をリニア路線が通ります。全体で約25戸、そのうち約20戸が移転対象になるはずです。「飯田市が分譲したのに」といって意味が通じるのは飯田下伊那の人だけかもしれません。


ルートにかかるこの団地は20数年前に飯田市が分譲した

 最近、他県のリニア訴訟の原告のお一人を案内した時「飯田市が分譲したのに」と説明したら、同行した地元の原告が、路線がここを通るのは飯田市が希望したからと補足してくれました。つまり、飯田市が、飯田市内に駅をもって来たくて、だだをこねた結果、飯田市が自ら分譲した住宅団地が30年もたたないうちに、ほとんど全戸が移転しなくてはならなくなった。移転の原因は飯田市だと。いわれてみればその通り。

 とすれば、JR東海からの補償にプラスして、飯田市からは賠償金的なものを支払う必要があると思います。現在の生活環境を別の場所で再建するとすれば、JR東海の補償では足りないのですから。もちろん、それではほかの移転対象者について言えば、不公平になるのですから、その方々の不足分も、飯田市が補填すべきだと思います。

 各自治体のリニアに対する対処、利用のしかたはいろいろですが、本当に住民のことを考えているのか、地域の将来のありかたについてきちんと考えているのか疑問という点では共通する点がありそうです。

 しかし、それにしても、高森町の言っていることは、ほとんど意味不明です。とくに、買い上げてもらうという話については、あとあと所有者がどうなるか、どう土地を使うかについて心配として、周辺の住民の中には懸念する声も少なからずあります。

 9月29日の前日28日に町議会はJR東海を呼んでリニアについての勉強会を開きました。1時間ほどの勉強会だったようです。その中で、JR東海は、トンネル残土の処分地で確定したところは無いと説明したそうです。やっぱりね。ガイドウェイ組立ヤードが必要な段階まで行くかどうか。リニアの実現可能性と、地域の産業経済への効果についてきちんとした見通しが持てる実力・能力が、首長や議員さんには必要だと思います。高森町にはリニア工事対策委員会もないし、議会にもリニア対策特別委員会もありません。JR東海に媚び売って何の得があるんでしょうか? とはいっても、高森の場合、リニアなんか関係ないよという気持ちでやればいいんだと思います。

(2017/10/02)