更新:2018/12/03

「リニア駅周辺整備計画の現状説明と意見交換会(市民説明会)」

 12月2日、飯田市の中央公民館で「リニア駅周辺整備計画の現状説明と意見交換会(市民説明会)」がありました。飯田市の佐藤健副市長の「リニア駅周辺整備計画の現状説明」のあと、「有限会社ハートビートプラン」代表取締役の泉英明氏の講演、地元高校生からのアイデア発表がありました。会場入り口では前回(2017年5月)と同じようにVR(仮想現実)で駅周辺整備の完成予想の映像を見ることができるようになっていました。佐藤副市長も最後のあいさつでふれましたが、高校生には知らせたけれど、組織的な動員はしなかったためなのか、参加者は54人(意見発表の高校生4名含む)とかなり少なかったです。泉英明氏の講演には「目が覚めるほど」新しい聞く価値のある内容はなかったと思います。


手前に手すりがあって、そこから前の座席数は245です。後ろも席があるのですが、報道席になっていて、一般参加者は手すりより前にいます。10月に市内の別の場所であったリニアに反対する側の学習会の参加者が76人ですから、リニアへの市民の期待や関心は低いといえるでしょう。この写真は高校生が発表を始めたところです。

 以下、高校生のプレゼンテーションのスライドです。


リニアが来れば飯田は、現在の八王子より近くなる。飯田に住みながら仕事ができる。大人も、こんなことを言ってますね。

 ちょっと気になるのは「開発業界」ということば。ある分野の産業や企業で開発分門があると思いますが、「開発一般」をする企業や業界ってあり得ないと思うのです。資本主義社会では、お金を儲けるという共通性があるわけで、つまり資本をできるだけ早く回転させる方法を考え出そうとするのです。それは資金の運用の技術です。それについてはコンサルタントなんていう仕事はあります。しかし、「開発業界」があるわけじゃない。


スライドの右下。「裏山しいちゃん」のレンタルスペースを利用して「リニアカフェ@裏山しいちゃん」というグループをやってるみたいです。参考 ⇒ Youtube:裏山しいちゃん

 ところで、相模原の反対グループの、「リニア新幹線を考える相模原連絡会」が、「リニアカフェ」というのを、かなりまえからやってます。


フードの透明化はコストの点でJR東海はできないといっています。


この発表をした高校生はリニアで人が来るものとは思えないので、駅前を農園にして集客をと提案。駅周辺の現状は、農地と商工業と住宅が混在している場所です。路線と駅部分以外を開発しなければよいということになるではないですか。


大人は駅へのアクセスに自動運転を活用なんて言ってます。だったら駐車場もいらないでしょという意見。大人はね、自動運転なんか実現するかどうか分からないって本心では思っているのです。少なくとも、かなりしばらくの間、いや永遠に、飯田下伊那で自家用車の自動運転が一般化することはあり得ないでしょう。


高校生が放課後に東京で道草するために飯田下伊那の高校生だけ対象にリニアの運賃の「放課後割引」を、という意見。高校生ってお気楽です。壇上の信大の上原先生だったと思いましたが、それは困る、東京へお金を持って行くことになると指摘。


会場入り口にあった、駅前周辺整備の模型。駅のデザインはいまだに決まっていません。それより、第一に南アルプスのトンネルが完成できますか。残土の置き場もないのに。

 スクリーンに投影されていた、駅周辺整備完成後の予想動画です。


駅の西の端上空付近の路線の南側から東京方面を見る。手前は現在、戸建て住宅とアパートが多い場所。騒音の問題が出てくるはず。映像では天竜川の上までフードがかかっています。橋りょう部分はフードがないはずと会場から指摘がありました。


上の画面を左に移動。土曽川上空から。竜東側を見る。


すこし左に移動。手前は中央道座光寺PAからのアクセス道路。画面右、駅の向こうに見える黒い建物はイオン。


国道153号線上空から西南を見る。


駅の東端の南側上空から風越山方向を見る。高架のほぼ直下になる住宅が結構出てくるのが分かります。


手前の道路は国道153号線。交差点は新たに建設する道路。国道沿いの白い建物群は、まったく予想できないはずなのに書き込んであります。


駅の南側上空から。手前の全体が芝生のようになっている場所は、とりあえずは現状維持のはずです。なぜ現状を再現しないのか?


会場の床の様子です。飯田市の施設はどこも老朽化しています。リニアが来ればよくなるんですか? 中央公民館は飯田市の中心部、丘の上にあります。日曜日の午後でしたが丘の上の商店街はシャッターの降りたところが目立ち、人通りも、車の通行もまばらです。中央公民館は公共交通が中心だったころは便利でしたが、自動車が発達し、われわれもズクが無くなったので、今ではちょっと不便な場所になっています。しかし参加人数が少ない主な原因じゃないです。種子法についての集会(3月3日)は参加者が入りきれずに、ロビーや別室でテレビ中継までしました。

 今回も飯田市長さんは出席されなかったですね。

 会場から、ある女子高校生が、今までリニアには否定的な意見を持っていたが、推進する人たちの話をは初めて聞いて、考えが変わったと発言しました。すくなくとも、今回の種々の説明に、彼女の考え方を変え得るような内容はなかったと思います。しかし、こういうイベントにひとが来ない理由は、やはり、特に路線に近い地域の住民には、リニアにたいしていまだに不安感や、疑念がかなりあるのではないかと思いました。

 意見発表をしたのは飯田高校の生徒です。2013年1月に飯田高校で行われた「こんにちは県議会」で、生徒がリニアにシビアな意見を述べて、県議が慌てるという事件がありました(『南信州』 2013年1月31日『「こんにちは県議会です」飯田高校』開催概要 )。 2014年の文化祭には、「LF」、リニア・フレンド、「リニアのお友達」というグループの名前でリニア新幹線について、かなり詳しい研究発表をしていました。




発表の最初の部分。


(画面クリックで少し拡大可)発表のまとめ。

 自由な論理の展開であれば「リニアの中止」という選択肢もあるはずなのに、建設は決まったことという前提が「忖度」されています。飯田高校の生徒でも優秀な人たちはこう考えるのが伝統なのかもしれません。

 私たち反対派がてっきり左遷されたと思い込んでいた、2013年当時、生徒を指導していた先生もちゃっかり出世されたようです。保守的な県議さんたちが思うより、学校の先生たちのほうがもっと保守的、保身意識が強いかもしれません。しかし、推進側は高校生をてなづけるのに成功したといえるのか?