更新:2018/01/19

横浜ゴムはどこへいった

 下は、高森町の下市田河原の航空写真。黄色い枠がリニアのガイドウェイ組立ヤードの候補地(6.7Ha)。左上は、高森町吉田の横浜ゴム長野工場の跡地。右下は、天竜川を挟んで対岸の豊丘村河野の横浜ゴム長野工場の新工場(約4Ha)。


 横浜ゴム長野工場は最近、高森町から豊丘村へ移転しました(横浜ゴム『南信州』 2012年 10月 24日)。将来、高森町山吹と豊丘村河野の間に天竜川の新しい橋ができる予定はありますが、現在は中央自動車道や国道153号線など、天竜川の西側への交通はやや不便です。

 長年高森町で操業してきたのですが、理由は大いに不明ですが、豊丘村河野に移転したのです。工場用地の可能性はあったのに、高森町は引き留めることが出来なかった。いやいや、引き留める気もなかったのかも。

 ガイドウェイ組立ヤードの用地をJR東海は約8年間借りてあとは返すといっています。現在は水田です。後継者の問題があることはあるにしても歴史のある優良農地です。高森町はJR東海が使用したあとについて、ごく最近作った土地利用計画で工業用途に使う地域と指定しました。将来は工業団地にするとか、JR東海に続いて使ってもらう、あるいは買ってもらうつもりのようです。えっ、買ってもらう? ヤードの用地の扱いは基本的に残土の処分場と同じで、JR東海と地権者との自由契約です。本来、行政が干渉できるものではありません。そして、JR東海は使ったあとの責任は基本的に持ちません。そういう方針のJR東海に対して買ってもらうことを検討しているって、お役人様のお考えは町人には理解しかねます。

 ヤード造成は費用はJR東海が出して高森町の名前で公共事業として造成します。そうしないと農地転用ができないのだそうです。ヤード候補地西に出てくる予定の日野自動車についても用地の造成は高森町の名前で公共事業としてやるそうです。いわゆる名義貸しなのですが、公共事業というには「公共性」があいまいな感じがします。高森町経営企画課は企業が来ることで地域振興に資することになるのでいいんだと説明しています。しかし、地方自治体の業務として、そういうことを定めた条文はあるのでしょうか? そのあたりはどうも町としてもはっきりした説明はできていないようです。何でもそれらしい理由をつけて公共性があるといえるなら、行政はフリーハンドで何でもできることになる。とんでもない話です。

 ヤード候補地の地権者のすべてが、この計画に納得しているわけではないようです。将来、工場が来るのだろうかと疑問視する声もあるようです。町としても将来のことは分からないので、今までのように大きな面積を一括して工業団地として造成することはできないので、進出の話が出てきた段階で小分けに造成していくそうです。

 土地利用計画(法的な拘束力はないが、多分、計画に従って町が決めた判断について町民が対抗するのは難しい)があるので、昔いわれたような虫食いにはならないとは思います。しかし、将来、いままで思って来たような工場の進出は期待できないという認識は町当局にもあるようです。であるのに、工業用途の地域に指定して、せっかくの優良農地を潰してしまうというのは納得いかない人が多いのではないかと思います。これまで町は新しい社会状況に対して適切な対応が出来て来たとは思えません。その流れの中にあったのが新町長ですから、どうなることやら・・・。

 水田耕作の出来る優良農地は、平坦で広大な面積がとれるので、工業用地としても適しています。そういう極めて良い条件を出さなければ工場進出は期待できない。どころかそうやったとしても工場進出は期待できないというのが本当のところでしょう。だったら「そんなことはするな」。採算がとれないのに建設するリニア同様、今の政治はデタラメすぎると思います。

 一括して工業団地化できないから、小分けにするという、空間を時間に置き換えるようなことはできないと思います。行政の責任というものが無くなってしまうではありませんか。将来のことは分からないのでJR東海に売っちゃえばいいでは、全くの責任放棄だといえます。JR東海が買って、あとはどうなるんですか? そこまで考えているのか。結局、明確な見通しがないのでしょう。であれば、ガイドウェイ組立ヤードの候補地の申請はすべきでなかった。リニアに協力できればというだけの軽率で無責任なものだったといえます。申請とは言っても情報提供で、県は受入れの義務はないといっています(県リニア整備推進部からの依頼文書)。

 工場誘致をするにしても、昔からあった横浜ゴムの工場用地を豊丘にもっていかれたのですから、その町に積極的に工場企業を誘致する気構えがないことはあきらか。この12年間はどうも何の理念もなく場当たり、その場しのぎで町政運営がされてきたような気がします。

 住民が増えることが目的であれば、何も工場誘致だけではないと思います。暮らしやすい住環境を守れば、つくればじゃないよ、守れば、住民は増えるはず。「日本一のしあわせタウン」などというキャッチフレーズを使っている高森町です。なのに、人口密集地の集落内の道路を拡幅し1日100台のリニア工事車両を通行させようとするなどバカげた話だと思います。道路拡幅工事で犠牲者がでます。高森町の職員は、全てがとは言いませんがほんとんどダメです。職員上がりの町長にも期待はできません。

 高森町民は町民の生活を顧みない壬生町政(内部資料表内部資料裏)をしっかり監視して、きちんと声をあげていかなくてはならないと思います。町民を顧みないからこそ、町民目線なんて言うんだと思います。