更新:2019/04/05

日向休と環境影響評価

 大鹿大河原地区の中心部から釜沢地区へ行く道路は県道赤石公園線です。JR東海はリニアの環境影響評価書でこの道路の途中の「日向休」という場所について取り上げています(8-5 人と自然との触れ合い)。

工事の実施(※1)及び鉄道施設(※2)の存在により、主要な眺望点及び日常的な視点場、景観資源、主要な眺望景観並びに日常的な視点場からの景観(※3)への影響のおそれがあることから、環境影響評価を行った。(補正版環境影響評価書 8-5-1-1)

※ 読みづらいので省略したカッコ内は次の通り

※1 資材及び機械の運搬に用いる車両の運行、切土工等又は工作物の除去、工事施工ヤード及び工事用道路の設置
※2 地表式又は掘割式、嵩上式、駅、変電施設、保守基地
※3 以下「景観等」という。

「補正版環境影響評価書 8-5-1」は、JR東海のHPの、中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価書(平成26年8月)評価書本編8-5-1 人と自然との触れ合い - 景(PDF 4.8MB)

 評価書を順にみていくと:


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画面クリックで拡大 地図中の「02」は地理院地図で「日向休」と書かれた場所で、JR東海はここを調査地点としている。点線が路線。


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 予測結果は、それほど幅が広くない道路の脇で、景色を眺める人の背後を大型車両が通行する状況を考えると、非常に人をバカにした書き方なのです。この場所へ歩いてくる人はほとんどいないわけで、たいていは車で来ます。駐車している車があれば、たぶん大型の工事車両は通行できません。大型の工事車両が通るなら駐車できないので、落ち着いて景色などみておれません。


赤石公園線の日向休の道路の様子(グーグル地図に加工)

 グーグルの地図のストリートビューに2014年9月の「日向休」からの眺めがありました。


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 評価書ではここから見える景観資源として「赤石岳」と「小渋川」をあげています。上の写真では赤石岳が見えていますが、黄色い枠部分を拡大すると小渋川も見えています。


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 三正坊というのは小渋川に小河内沢が合流するところです。写真で、三正坊の、現在は残土の仮置き場となっている場所が見えることがわかります。環境影響評価書は残土仮置き場が見える可能性に全く触れていません。残土の置き場、仮置き場については、環境影響評価の段階では全く決まっていなかったのですから、当たり前。私たち住民がうっかりしていたとは言えません。

 今年(2019年)3月に同じ場所から撮影した写真です。


 丸印の部分を拡大すると:


(撮影位置は同じですが上の写真とは別のコマです)

 三正坊の残土の仮置き場が見えることがわかります。これでは、環境影響評価の意味がありません。違法なのかどうかは分かりません。しかし、これと似たことが、飯田市内の中央アルプストンネルの松川工区の工事ヤード(環境影響評価では「風越公園」)、高森町下市田のガイドウェイ組立・保管ヤード(同「天竜川親水施設」)でも同じようなことが起きている、あるいは起きるはずです。

 三正坊の仮置き場は3年間といういうことなので、自ら行った環境影響評価を尊重するなら、JR東海は、少なくとも期限内に撤去しなくてはならないと思います。JR東海に環境重視の考えがあるなら、残土の仮置き場を選ぶときに「遠慮」したはずの場所とも言えます。