更新:2019/06/14

「2027リニア革命」

6月6日高森町中央公民館ロビーに「2027リニア革命」のポスターが貼ってあるのを見つけました。


(画面クリックで拡大)。

 一番真ん中に "「ぶつからない」原理" の説明。

 この絵では、ガイドウェイの中に車体の大部分がはまっているように見えます。実際は約半分です。これでは、「ぶつからない」か心配する人が多いと考えたのかも知れません。

 しかし、この説明は疑問です。常に中央を走るのではなく、遠心力や車体の重量と釣り合う位置までずれます。下の図は、リニアを研究している鉄道総合技術研究所編の『ここまで来た!超電導リニアモーターカー』の曲線を通過するとき車体が左右にどれだけぶれるかを示した図。たぶん半径8㎞のカーブをいろいろな速度で走る場合の計算値が右下がりの線。中心線を走るのは時速約400㎞/hの時だけで、より速ければ外側(マイナス)に、遅ければ内側(プラス)にずれた状態で走ります。黒点が実験の結果。速度が遅いとき内側にずれるのは、カーブでは軌道面が内側に傾けてあるからです。


(鉄道総合技術研究所編『ここまで来た!超電導リニアモーターカー』、交通新聞社、2006年、119ページ)

 カーブで超電導磁石が磁力を失うクエンチ現象が起きたら車体を支えることが出来なくなってすぐにぶつかります。だからリニアは真っすぐしか走れない。2か所も方向を大きく変えるカーブのあるBルートは安全上無理です。


(交通政策審議会 第4回中央新幹線小委員会長野県資料(説明資料、参考資料)より) 黄色い丸で囲んだ部分で大きく方向を変えるカーブ。大きく方向を変えるには、曲線部分を走る距離と時間が長くなって、クエンチが起きた場合の危険性が大きくなる。直線では左右のバランスをとれば何とかなるようですが。

 長野県としては、Bルートを主張していました。最近、大井川の水資源を守るために、静岡県の川勝知事はルートの変更についてもちょっとふれました(※)。大井川の上流部、つまり南アルプスを迂回するという点では長野県と静岡県の利益は一致するはずです。

※ 『日経ビジネス』の2018年8月20日号でも、「もうルートを変えることも考えた方がいい。生態系の問題だから。水が止まったら、もう戻せません。そうなったら、おとなしい静岡の人たちがリニア新幹線の線路に座り込みますよ」と話しています(「陸のコンコルド」、リニア新幹線の真実)。

 路線をどこにするかの検討が不十分だったし、したがって事前の調査が不完全になってしまった。さらに、工期を急ぐので、各所で工事現場で事故が起きているように思えます。無謀で無理な計画です。被害の少ないうちに一旦工事を止めて、時間をかけて、中止も含めて、国全体で十分議論を重ねるべきです。