更新:2019/07/31

平成30年度における環境調査の結果等に対する意見書

 JR東海の出した「平成30年度における環境調査の結果等について【長野県】」について、長野県環境部が「環境保全の見地からの意見書」を募集していたので、以下のような意見書を提出しました。

環境保全の見地からの意見書

リニア中央新幹線に係る平成30年度における環境調査の結果等に対する環境の保全の見地からの意見

以下4項目(ア~エ)が意見です。

(ア)本山の残土置き場候補地について

 PDF107ページの次の部分、"2-4-2-2 豊丘村内発生土置き場(本山) (1)調査方法

現地調査(任意観察)により移植・播種を実施した植物の生育状況を確認した。"とある。

 本山(ジンガ洞)については、この「平成30年度における環境調査の結果等について(長野県)」が公表された2019年6月の時点において保安林指定の解除の申請がなされていない。「現地調査(任意観察)により移植・播種を実施した」時期は2017年4月21日となっている。残土の持ち込みが可能になる時期はいまだに未定である。工事が本決まりになる以前に、危険性の高い移植作業を保全の名のもとに行うのは、常識的に考えて非常におかしい。本来であれば、環境保全策としての希少植物の移植は、保安林の指定が解除されるなど、工事開始前の手続きがすべて完了した後で行うべきでなかった。(※ 「行うべきでなかったか。」のつもりで、最後の「か」が落ちています。)

 「任意観察」という用語は環境影響評価制度の上で正式に規定されている言葉ではない。また「観察」と「移植」はまったく別のことである。「任意観察」という制度があって、「移植」は「任意観察」の一部との誤解を生じさせる書き方であり、環境保護の視点から極めて不適切と言わざるをえない。JR東海の環境問題への取り組みについては、長野県のより一層厳しい指導や処置が望まれる。

 候補地の地権者である本山生産森林組合(当時)の長谷川組合長(当時)は環境保全計画に記載があるから2017年4月21日の移植作業については問題はないとの見解を示していた。リニア新幹線建設については、都市部において大深度地下の利用に関する特別措置法が適用される。民法では土地の所有権は地下に及ぶとされる。しかし、大深度法では、国交大臣の認可を受けることで、事前の用地補償など、通常の土地使用についての種々の手続きを省いて他人の土地の地下を利用することができることになっている。大深度法については民法との関連において適切な法律なのか議論のあるところだ。本山生産森林組合長の見解は、これよりさらに踏み込んだ見解であって、地元の有力者の間では、リニア建設のためであれば多少のことは目をつぶれがまかり通る状況だといえる。そんな中で、理由はともかくとして、本山生産森林組合の残土受け入れの決定を無効とした県の指導は適切だっと思います。

(イ)粉じんについて

 大鹿村釜沢の除山付近の粉じんについて(PDF115ページ、3-1-5)、予測値を5から10倍程度も上回る調査結果が出ている。評価書においては、「整合を図る基準等」としてスパイクタイヤ関連で示された「10t/㎢/月」 を「参考値」として示しているが、今回の報告書では、「指標値」として「20t/㎢/月」を示している。「整合を図るべき基準及び目標は定められていない」(評価書)のであれば、予測値を上回らないようにすべきである。しかし、整合を図るべき値の数値を変えて基準等と整合性があると主張しているかにみえる。これでは環境影響評価の意味がない。

 予測値の5倍から10倍の数値が観測されたことから、予測方法や防止策に問題があったと考えるのが当然といえる。予測値の範囲内になるように残土の運搬方法や埋め立て地の管理の仕方の改善策を示すべきである。現在は、三正坊橋から釜沢斜坑ヤードへの桟橋までの間は小河内沢の左岸のほとんどは塀で囲まれている。左岸に以前から道路が存在したが、この道路は現在は河川敷から垣間見える限り、路面にトンネルズリが撒かれていると思われる。散水車が走ってはいるが、ズリを撒いた道路上を工事車両が走ることも粉じんの増加に寄与しているのではないかと思う。そういった、なぜ粉じんが予測より多いのかという点について考察がなされていない。

…(現時点で、公表は不適当と思うので削除)…

 除山斜坑ヤードのちょうど坑口にあたる付近の山側に以前は湧き水があった。現在その付近から、パイプで小河内沢に水が流れ落ちている。その先の流れの中のアオミドロが周辺の小河内沢の流れに比べ非常に多い。周囲の環境の変化に目を配るべきであり、変化があればその説明が必要である。

(ウ)河川の減水について

 小河内沢では、評価書で豊水期で約5割、渇水期で8割の減水が生じるとされる(長野県の大鹿発電所に影響があるはず)。一方虻川については、小河内沢同様に河川の直下をトンネルが通過する部分があるのに、評価書において調査対象になっていない。虻川は伴野地区の井水の水源になっている。静岡県では大井川の減水について、その調査方法を含め、いまだに論議が続いている。環境影響評価の段階で静岡県で現在行われているレベルの論議がなされて当然といえる。JR東海は環境保全を重視しているといえず、アセスメントの他の項目についても、調査方法から改めて検討する必要性がある。形式的に手続きを踏み文書を出せば済むことではない。損なわれた場合に取り返すことが困難な環境である。環境保全を第一に考えるべきである。

(エ)「天竜川親水施設」について

 高森町下市田河原にガイドウェイ組み立て保管ヤードの設置が予定されている。この場所は、環境影響評価書の「8-5-2 人と自然との触れ合い - 人と自然との触れ合いの活動の場」において取り上げられた「天竜川親水施設」の隣に位置する。JR東海は、ガイドウェイ組み立て保管ヤードに出入りする、生コンミキサー車や資材搬入の大型車、ガイドウェイパネルを運ぶトレーラーなどの通行について、高森町の町道7290号線を利用する意向である。この町道も「天竜川親水施設」の周縁にあって、「天竜川親水施設」の利用者がアクセスに利用する。

 評価書によれば、工事関係車両は約500mはなれた国道153号線を通行するので、「天竜川親水施設」の利用者のアクセスに影響はない。「天竜川親水施設」から工事車両の通行は視認されないので利用の快適性に影響はないなど、評価がなされた。

 高森町はJR東海の便宜のために町道7290号線の改良工事を計画。拡幅工事のために、すでに「天竜川親水施設」の要素に含まれる「カヌーハウス」を解体撤去した。JR東海が直接に手を下したものではないが、つまりリニア建設の影響で「天竜川親水施設」の「カヌーハウス」が撤去された。次回の報告では説明が必要ではないか。JR東海がこの場所をガイドウェイ組み立て保管ヤードとして希望すること、あるいは、候補地として提示されたとしてこれを選択することは、環境影響評価を尊重するのであれば、本来あり得ないことではないか。

 候補地は、江戸時代に築かれた惣兵衛堤防により200年余にわたり美田を保ってきた場所である。県に稲の種モミ栽培を委託されている水田もある。築堤以前からの、この地域の天竜川と人とのかかわりを示す遺物もあり、人と自然のかかわりの歴史を目の当たりにできる優れた文化的景観でもある。また、南風が卓越風である当地では、北に位置する出砂原集落の生活環境の条件(気温)にも寄与している。使用後復田するのであれば、約8年間出砂原の住民は我慢をすれば良いと言えなくもない。しかし、高森町当局は、企業団地化を考えており復田の見込みはない。それどころか、JR東海が買い取ることを望んでいる。

 そもそも、この場所へのガイドウェイ組み立て保管ヤードの誘致は地元住民の要望によるものではない。高森町当局は、農業後継者の問題抱える地権者に、農業振興の立場でなく、農地の企業用地化を提示してヤード受け入れ計画の検討について了承を得、町議会とも相談をせずに申請したものである。(これほど広大で優良な水田地帯を企業団地化する土地利用計画のある高森町の町長に農地転用許可の権限を与えたのは間違いであったといえる。)

 ガイドウェイ組み立て保管ヤードについての環境調査は今後行われるかもしれないが、場所の選定そのものが環境影響評価書の評価結果と矛盾している。

 長野県としては、将来にわたって県民の持続可能な生活環境が守られることに重きを置いて考えていただけるよう希望いたします。