更新:2019/10/03

共産党黒田支部と飯沼支部の "「あおぞら」2019年9月号外"

 日本共産党の黒田支部と飯沼支部(どちらも飯田市上郷地)が発行した「あおぞら」のリニア特集の号外を紹介します。

 以下、PDF を HTML に変換しました。


リニア中央新幹線への「期待」は冷静に
~リニア新幹線の凍結と見直しを求めます~

日本共産党上郷黒田支部飯沼支部 あおぞら 2019年9月号外 発行:日本共産党黒田支部飯沼支部 飯田市上郷別府16-6 TEL 0265-22-3582

◆ リニア中央新幹線に対する日本共産党の見解 ◆

 日本共産党は、すでに、2012年5月にリニア中央新幹線(以下りニア)について、見解を発表し「計画に反対し撤回を求め」ています。

 それは、計画に大義がないこと、国民に多大な負担と犠牲をおしつける危険性、安全性への大きな不安、過大な投資は地域経済をおしつぶすことなどの理由によります。

 あれから、7年が経過し、この指摘はリニア計画が進むにつれて。いっそう現実のものになっています。私たちは、リニア計画をもう一度冷静に見つめなおすべきではないでしょうか。

◆ リニアに対する期待(バラ色の夢)を煽ってきた長野県、飯田市 ◆

 長野県も、飯田市も、リニアにたいする「期待」を機会があるごとに最大限に煽ってきました。

 発表されてきた資料では、リニア効果として①時間が短縮することによって通勤・通学時間が短縮される ②今、ある地域資源を生かして交流人口を増やし、人口減少でも地域を活性化することができる ③雇用を創出し、人々の生活を支えるなど地域経済の発展に寄与する ④世帯や地域への経済的な波及効果が大きい ⑤生活がしやすくなる ⑥国内外からの誘客が促進される⑦学術・研究機関が立地する知の拠点になるなどです。

 一方でリニアに関するさまざまな問題点は、県民、市民、住民にはほとんど知らされず、計画だけが一方的に進められています。

◆ 「呼び込み型」の活性化策は失敗する ◆

 期待をあおるこうした議論に対して私たちは、もう1度たちどまり冷静に考えてみる必要があると考えます。

 それは、第一に、リニアの目的は、大阪、名古屋、東京を一時間以内に結ぶことによって、巨大都市圏(スーパーメガリュージョン)を形成し、機能を集中させることでコストを削減し大資本の利潤を高めることにあります。これによって、世帯がうるおい南信地域もうるおうと言う研究者がいますが、大きな利潤は大企業の利益になっても労働者や世帯、地域へはほとんど回ってきません。

 第二に、人口減少下で行われる開発は、人口減少による消費の低下とそれによる地域経済の低迷を大開発によって、地域外の客をよびこむことで、消費を拡大し地域経済の活性化を実現しようというものです。

 しかし、これらは、地域の需要にもとづいたものではなく観光客や企業を呼び込む計画であり、その消費に期待する計画です。呼び込み型によって地域外の需要にたよることは、入口減少のもとで、また自治体間が競争している中では危うい計画です。飯田市が想定している」日当たり6800人の乗降客数はどう考えても非現実的です。また、海外からの観光客に頼ることにも飯田のような限られた資源のもとでは限界があります。

 第三に、1990年代の開発とちがって地方自治体の財政はさらに厳しくなっており、財源は、住民サービスの削減によって賄うことになり市民生活の悪化を招きます。

 第四に、このような過大な予測に基づいて、駅前周辺整備計画に91億円も投資することは、飯田市の財政を危うくすることにつながります。そしてそのしわ寄せは市民に負わされることになります。

◇ この地域を活性化するためにはどうするか ◇

 地域経済が衰退している原因は、市民の所得の低下による個人消費の低迷にあります。非正規労働者の増加。伸びない賃金、最低賃金の安さ、年金などの社会保障費の削減と保険料の負担増、そして10月から予定されている消費税の増税。市民の消費をうばっては「地域の活性化」はありえません。また、東京一極集中がすすむもとでは、人口減少に歯止めはかかりません。

 このようなことを考えれば、この地域を活性化するには、第一には、市民の所得を向上させることです。最低賃金をただちに1000円にひきあげ、近い将来1500円にすること、非正規を減らし正規労働者を増やすことです。第二には、社会保障や教育施策を充実させ、将来の不安を解消することです。国民年金の引き上げ、子ども・障がい者の医療費の無料化、学校給食費の無料化、国民健康保険料・介護保険料の引き下げなどです。第三には、最低賃金の支払いへの保障など雇用の大半を占める中小企業対策の強化です。第四には、自治体が可能な限り雇用をつくりだすことです。第五には、こうしたことにより、この地域でお金が回っていく循環型の地域経済をつり出すことです。

 このような立場に立てば、今飯田市がすすめなけれぱならないことは、リニアに莫大な投資をすることではなく、その予算を市民の所得や雇用を増やし、市民が安心して暮らせる施策を行うことではないでしょうか。

北陸新幹線の新駅建設で市民生活にしわよせ
飯田市も富山県高岡市の二の舞になる可能性が

 富山県の新高岡駅は、2005年から2015年までに周辺整備事業に総工費104億円を投じて開業しました。旧高岡駅も周辺整備事業に総工費150億円を投じて改修しました。

 完成した高岡駅は、大変立派で、旅行者が、「あまりの変貌ぶりにただ呆然としてしまう」ほどだといいますが、一日の乗客数は1989人とおもったより伸びていません。最近の高岡駅の様子を、7月14日付の朝日新聞は次のように伝えています。「もともと中心部である高岡駅周辺は自治体主導で、新高岡駅周辺は民間主導で整備を進め、『二つの中心部』で人を呼び込む相乗効果を -- 開業当時は『バラ色』の未来が語られた」が実際は「約17万人の高岡市全体の人口は毎年千人前後のペースで減り続け。『二つの中心部』を支える活力はない。新高岡駅近くのイオンモールに人が集まるようになり、元の中心部は空洞化に拍車がかかった」と。また、「より行きやすくなった金沢市や首都圏へ人が流れ出す『ストロー』現象も起き」ていて、「新幹線建設そのものが優先で、地元が本当に潤うかは二の次」で進められた計画であり、「全国の縮図にも見えた」と報じています。

 ところで、このふたつの駅と道路整備、その他の大型公共事業で、高岡市は、40億円を超える赤字を抱えることになりました。そのうえ、市債残高はこの新駅建設のための新たな116億円をふくめ、1128億円に達しています。

 一般会計が680億円ですから、約2倍の負債です。この負債が市民生活にしわ寄せされ、高齢者の足として大切なコミユニティバスが廃止されてしまいました。その他にも、公共施設の使用料が1.5倍に。団体補助金が1割から2割減らされ。移動図書館も廃止されるなどその影響は市民生活のあちこちに及んでいます。飯田市も高岡市の二の舞にならないよう、リニア計画は中止して見直すべきではないでしょうか。

上郷では、リニア通過でこんなに問題が!

☆ 移転を迫られる住民は不安・心配だらけ

 土地や建物にいくらの補償がされるのか、補償額が決まったとしても、スケジュールはどうなるのか。また、移転先は、これまでの環境とくらべてどうなるのか。引き続き農業はできるのかなど住民の不安はつきません。

☆ 長野県駅乗降客数6800人は過剰な試算

 飯田市は新駅の乗降客数を毎日6800人と試算し、それをもとに周辺整備計画の駐車場などの施設規模を決めました。これは、6年前に飯田市が、「一般財団法人計量計画研究所」という国土交通省と関係が深いコンサルティング会社に委託して調査させて得られた結果によるものです。

 この調査では、東京方面と名古屋方面「への」また「から」の現状の移動数にリニアができたら乗るか乗らないか、という質問のアンケートから算定した割合をかけたものです。アンケートのサンプルが非常に少ないうえに、何年も先の予想を尋ねた主観的なものであり精度が低いものです。

 また、名古屋からの移動数(11493人)が東京(2865人)より圧倒的に多く9割以上が自動車を利用しておりリニアが出来てもあまり利用しないと答えています。

 また、この6800人はあまり利用しないと思われる上伊那も含めた数字であり、それを引けば4500人になってしまいます。

 これらから考えて、6800人は過剰な数字だということがわかります。さらにこの過剰な数字を使って必要な施設の規模面積を試算しているのも問題です。これによって移転する人たちの範囲が過大になってしまっています。

☆ 沿線住民は騒音被害にさらされる可能性があります

 JR東海も500kmで走行では、人がうるさいと感じる80デシベルを超えることを認めています。沿線の住民は、騒音に悩まされることになりかねません。

☆ 飯田線の乗り換え新駅は、本当に必要なのでしょうか

 飯田市は、乗り換え新駅を8億円かけて作ろうとしていますが、利用者の需要予測がはっきりしないまま計画されており、税金の無駄遣いではないでしょうか。

☆ 地下水が枯渇したときの補償は

 山梨実験線のようにトンネルエ事では、思わぬところで地下水の枯渇がおこります。黒田では果樹園などに地下水を使っている人もいます。JR東海に、枯渇したときの対策や補償を求める必要があります

開業までに多数の困難
各地で住民の抵抗が

 リニア計画は当初の計画と比べてかなり遅れています。2027年の開通はほとんど不可能な状況です。それは以下の理由によります。

(1) 南アルプストンネルなど県内のトンネル残土の総量は970万立米ですが、処分先の谷の災害を心配する松川町の住民などの反対で約790万立分の処分地が没になりました。

(2) 長野県、JR東海は残土の処分地の確保に必死ですが、確定したのは3か所約13万立米だけです。

(3) 静岡県の大井川は8市2町の重要な水源ですが、リニアのトンネルで大井川の水が毎秒2トンが減るとJR東海は予測しています。減水を心配する静岡県はJR東海の事前の調査や対策が不十分としていまだに着工を認めません。

(4) 山梨県南アルプス市では騒音など生活環境の悪化を心配し、市内5つの地区の住民がリニアの工事差止裁判の訴えを計画しています。裁判が始まると工事は止まります。

(5) 名古屋駅建設の用地買収が遅れ取得期間が2年延期されました。いち早く着工した品川駅も南アルプス掘削に並ぶ難工事といわれます。