南信リニア通信 ≪もどる

関連ページ:出来事・ニュース:2020年3月:3月12日


環境保全の見地からの意見書(2020年3月12日)

1.報告書の名称

○大鹿村内発生土置き場(青木川)における環境の調査及び影響検討の結果と環境保全について

○大鹿村内発生土仮置き場における環境の調査及び影響検討の結果と環境保全の一部更新について

2.意見

(1)青木川工区の残土置場(深ケ沢)について

 PDFの299ページ、「人と自然との触れ合い・景観」で、「主要な眺望点及び日常的な視点場並びに景観資源の改変はない」としているが、主要な眺望点というのは、県道253号線(赤石公園線)の日向休、日常的な視点場村道引の田線、中沢線です。

 地図を見れば一目瞭然、青木川沿いの深ケ沢という場所からすれば、まったく関係ない場所です。見るはずはありません。そういう場所を選定している。現地を知らない人にとっては、なんの気にも止まらないところでしょう。また、「理屈」としては紙の書類の上の文字の配列としては正しい。しかし、地元の人々を全くバカにした内容だと思います。

 最初の環境影響評価書で「日向休」が取り上げられたのは、赤石岳が見えること、赤石公園線を工事車両が通行すること、付近の谷底に橋梁ができるからだったと思います。今回の残土置場の近辺で、同等の場所とすれば、それは置き場候補地の現地そのものであって、西に崩落地、青木川左岸に残された小山、池などが特異な景観を形成していると思います。

 村道引の田線・中沢線は文化財の松下家住宅への道路ですが、もとより谷底の青木川沿いの国道152号線が見えるはずもない。

 周囲には、検討に値すべき「主要な眺望点及び日常的な視点場」は存在しないとした方が、正直と言えます。もちろんその評価は間違っていますが。

 「人と自然との触れ合い」という点でいえば、国道152号線は遠山郷から地蔵峠を越え大鹿へいたる道路で、シーズンには多数のオートバイツーリングをはじめ観光客が利用しています。また、大河原中心部から中央構造線の安康露頭への道路です。観光客は必ずしもカレンダーの休日だけに来るわけではありません。非常に狭隘な道路であり、残土の運搬ルートのすべてで対向車同士が徐行や停止することなく通行できる道路幅を確保するべきです。その道路整備完了を工事の前提とすべきです。しかし、それが周囲の生態系に及ぼす影響は大きいと思えるので、新たに環境への影響を調査する必要があると思います。

 それができないならば、国道152号線について工事期間中通年、地蔵峠を通行止めとすべきです。

(2)除山の仮置き場Aについては、大鹿発電所の工事残土の上に更に更に積むわけです。図面を見ただけでも、ゾットします。小河内沢に崩れこんだら大変です。除山斜坑ヤードの一部もヤード造成中に河原との法面が崩壊しかけて、設置済みの塀を撤去して補強したことがあったはずです。

 除山斜坑付近では、粉じんが「予測値」の10倍ほどあったとの報告がありました。小渋川斜と釜沢斜坑の間の本線トンネルの先進坑が完成すれば、仮置き場A、B(三正坊)ともに不要です。この部分の先進坑が完成するまで工事を中止したら良いと思います。

 一段目の補強盛土は2段目を積むことを想定したものでしょうか。想定していたとすれば、なぜ最初から今回の規模を公表しなかったのか。本来綿密に組まれた計画なら拡張しなくてはならない状況はないはずです。

 最近は、付近の小河内沢は訪れるたびに川の流れが変わっています。この変化は、自然によるものではないと思います。周辺の環境は明らかに変化していると思います。

 静岡県の状況をみると、少なくとも2021年3月ころまでは、着工はあり得ません。じっくり時間をかけてご検討いただきたいと思います。