更新:2021/01/16、2021/01/30 パブリックコメントを提出しました

南信州地域公共交通計画に対するパブリックコメント

パブリックコメントを提出しましょう

 『南信州』1月16日の1面 "飯伊14市町村 マスタープラン作成へ 公共交通計画素案パブコメ" によれば、 南信州地域交通問題協議会(南信州広域連合)は飯田下伊那の地域公共交通計画についてパブリックコメントを募集しています。計画の素案は、基本方針に「リニア時代に備えて、住む人に優しく、訪れる人にも使いやすい地域公共交通システムの実現」を掲げ… ということで、リニアができることを前提にしています。

 リニア計画は各地の工事に遅れが出ているし、初めから困難を指摘されていた南アルプストンネルの掘削のペースは当初予定していたペースの3分の2程度。静岡の問題がなくても2027年開業は無理。開業の延期は計画の中止にもつながります。静岡の大井川の水の問題は解決は絶望的。コロナ禍で新幹線の利用が激減、コロナ後の回復も不透明。遠距離交通の減少傾向は一時的なもではなく将来も続くでしょう。現状をみればリニアが必要ないことが明らかになってきている。JR東海は赤字に転落。JR東海自身も開業時期がいつになるか分からなくなっている。リニアはできない、来ないと考える方が現実的だと思います。

 リニアが来るからという計画では将来きっと無駄になるものが出てくるはず。少なくともリニアが来ない場合と来る場合の2つの案が提示されるべきです。来ても来なくても両用できるようにという計画は中途半端なものになるでしょう。

 そんな論点で意見を提出したら良いと思います。もちろん郡内の各地域ごとに関係する具体的なことについても、リニア抜きに考えたほうが実現しやすいものがある可能性が高いはずですから、リニアが来ない前提で考える必要があります。どの場合も、リニアがくる場合と来ない場合の、まったく別々の2本立てで考えるべきです。

 締め切りは2月3日。まだ十分時間はあります。素案や提出方法は:

 応募資格は飯田下伊那に住所のある人、勤務・通学する人なら誰でもとなっています。しかし、「訪れる人にも使いやすい地域公共交通システムの実現」といってるんですから、観光や仕事などでたまに訪れる人も対象のはず。将来、飯伊地域に移住とかIターンとかの可能性だって考えれますよね。関係ないわけじゃない。リニアに批判的な考えをお持ちの方は是非パブリックコメントをだしましょう。応募資格のない方、つまりたとえば県外の方も、不採用になるだけの話なんですから、提出されたら良いかと思います。


「南信州地域公共交通計画に対する意見」

(1) 素案の「はじめに」の最初の3つの段落、「南信州地域は 1 市 3 町 10 村で構成されていますが…当地域では、路線バスや乗合タクシー等の運行はほとんどをそれぞれの市町村が担っています」という現状について、なぜ、「地域全体の公共交通の調和を図り計画的に維持・確保を図る観点」で検討する必要があるのか、現状についての問題点が具体的にかつ明確には示されていないように思います。なにが問題なのか、冒頭から、だれにも分かりやすい言葉遣いで書いて欲しいと思います。そうしないと関心をもってもらえないと思います。それほどの切迫感がないのであれば、敢えて検討する必要はないでしょう。

 飯田市の中心市街地の経済活動の下は自動車の普及にその原因の多くを求められるところと思いますが、それ以外の地域においても、昭和30~40年代までの生活の利便性は、車なしでは考えられないものになりました。いわば、車が地域社会の地理的な構造を変化させたといえます。エネルギー多量消費型になったともいえます。かっては田舎であっても「歩く」ことも主要な交通手段であり得たわけで、同時にバス路線も現在より多くあり公共交通が成り立っていた時代です。消費の中心が、地元の商店から主に地域外資本による幹線道路沿いの商業施設に移って住民が自家用車に頼らざるを得ない状況があります。自動車の増加につれて道路の新設や改良などの公的な費用の支出が結局は、自動車の購入という経済行動の持続により自動車産業に吸収されることが、地方の公共交通に金が回らない根本的な原因だと思います。

(2) 「2027 年(令和 9 年)開業をめざすリニア中央新幹線の長野県駅(仮称)が当地域に設置されることとなり、リニア開通効果をより広域的に行き渡らせるために、公共交通にも新たな役割が求められています」とリニア開通を意識しているようなのですが、3ページの「(4)来訪者への対応 」は、「リニア開業後の県外来訪者に対応するため公共交通の充実が必要」としながら、「生活交通の維持・確保に課題を抱えるなかで新たな路線の運行は困難であり、観光等の来訪者への二次交通整備は、既存路線の見直しによる活用が現実的。」ということであるので、リニア開業後のことを、考える必要があるとは思えません。

 リニア新幹線は東京と名古屋と大阪の3つの大都市を結ぶものです。最初の計画では中間駅は地元負担であり、それはJR東海はもともと中間駅の利用は想定していないということです。長野県駅について1日6800人の利用があるという想定が飯田市から出されていますが、神戸大学・小池淳司さんの交通モデルを用いたリニア新幹線各駅の乗降客数の予測値推計によれば3418人です。つまりリニアの波及効果については見直す必要があります。

 南アルプストンネルの工事が静岡県内で遅れていることに関連して、JR東海の宇野護副社長は12月14日に飯田市内において次のように説明しています。ヤードの整備にあと3か月、西俣斜坑口からの6500mを5年5か月で掘削、ガイドウェイの設置と試運転に2年の合計7年8か月が静岡工区の工事期間であると。一方、長野工区での現状の掘削のペースからすれば、開業は2034年にずれ込む可能性が高い。長野工区の実績から推定するなら静岡工区の工事期間は約16年程になるはず。つまり、JR東海自身が開業時期について見通しを付けることができなくなっています。それはもともとこの計画が、事前の調査が不十分など拙速、杜撰なところがあったからです。コロナ禍で新幹線の利用が激減し赤字に転落したJR東海がリニア計画を完遂できる可能性はきわめて低いと言わざるを得ません。静岡県の大井川の水の問題で続く協議はいつ終わるとも知れません。

 リニア計画は飯田下伊那地域にとってそれほど役にたつとは思えないし、そもそも実現可能なのかもあやふやになってきている。「生活交通の維持・確保に課題を抱えるなかで新たな路線の運行は困難であり、観光等の来訪者への二次交通整備は、既存路線の見直しによる活用が現実的。」という認識があるのであれば、この際、リニアが開業しないことを前提に計画を建て直すべきだと思います。

 何年先になるのか分からないリニア、いわばあてにならないものですから、リニアについては、できてから考えればよいことなので、リニアは来ないことを前提にしっかりと検討していただきたいと思います。

以上