更新:2021/04/14

残土の処分先の現状は?

 リニア建設の残土の処分先が決まっていないといわれているんですが、一体どれぐらいの量の処分先が決まっているのか? しかし、はっきり言えば、分かりません。なぜかというと、基準が明確でないのです。

 なんですが…。

 2020年の12月14日に、長野県内のリニア建設に関係のある市町村長たちとJR東海の意見交換会がありました。その席上、JR東海の宇野護副社長は次のように説明しています。

県内のリニア中央新幹線工事で発生する残土974万立方メートル(JR見込み)を巡り、地権者と協議中の土地も含めれば全体の9割の処分地が確保できるとの見通しを示した。…現時点(2020年12月)で、飯田市、伊那市、下伊那郡喬木村、大鹿村、豊丘村の計11カ所が処分地として決定。この他に約30カ所を候補地として地権者らと協議している。(『信毎』2020年12月15日3面 "協議中の30カ所含め残土9割処分確保 JR見通し")

 『信毎』の記事は、「飯田市、伊那市、下伊那郡喬木村、大鹿村、豊丘村の計11カ所が処分地として決定」と書いています。この範囲の地域で名前の上がっている処分先や活用先を表にしてみました。

現状市町村処分活用先土量
(万m3)
備考
飯田市龍江番入寺40万
飯田市下久堅小林20万
工事中飯田市北条丹保移転代替地造成3.5万
工事中飯田市唐沢宮前移転代替地造成1.1万**
伊那市西箕輪工業団地造成28万
工事中喬木村伊久間工業用地造成3.5万
計画内*喬木村堰下ガイドウエィ組立保管ヤード造成7万
完了大鹿村総合グランドかさ上げ整備10万
完了大鹿村ろくべん館前敷地造成0.5万
完了大鹿村旧荒川荘跡地3万
工事中大鹿村深ケ沢7万
大鹿村鳶ヶ巣沢護岸整備20~30万
大鹿村村内の公共事業4カ所不明
工事中豊丘村本山ジンガ洞130万
工事中豊丘村戸中下沢26万
豊丘村福島てっぺん公園駐車場整備10万
計画内*豊丘村柏原JR変電所造成14万
豊丘村村道改良2カ所11.5万

* 「計画内」:リニア建設工事の中で使われる分
** 北条丹保移転代替地の面積と受け入れ量を元に推定

 表の「工事中」、「完了」、「計画内」が全部で11か所になることがわかります。その合計は、205万6千m3です。長野県内全体の発生土量974万m3の21.1%にすぎません。

 ただし、伊那市といっているのですから、この11か所ではない。それに、下條村の100万立方メートルが上がっていない。

 表で「現状」を空白にしたものが7つ。その中に、大鹿村の「村内の公共事業4カ所」と豊丘村の「村道改良2カ所」についてまとめて書いたものを個別に数えると11になります。つまり宇野副社長の説明は「12月時点で新たに決まった処分先」という意味なのかも知れません。

 報道等で分かっている範囲の候補地を全部上げてみました。いっさいがっさい合計すれば約700万立方メートル、約72%です。JR東海がいう9割との差は177万立方メートル。某所について地元の方に聞くと、危険なレベルまで無理すれば入るのではないかといっておられた量とだいたい一致します。今のところ長野県内最大規模の残土処分地は130万立方メートル受け入れる豊丘村本山のジンガ洞。ここの保安林指定の解除が確定して残土置場として使用できるようになったのは去年の12月下旬でした。地元から残土の受入れの希望が出されてから約8年かかっています。今後、これだけの規模の処分地が新たに出てくる可能性はないと思います。

 表には、地元住民の反対が根強く到底無理といえる、飯田市龍江(40万)と松川町生田(30万)をはじめ、計画がいまだに漠然としたものまで含まれています。トンネルの掘削の進み具合に合わせて残土置場が決まっていけば良いとJR東海は考えているようです。しかし、これは、ちょっとおかしい。リニア計画が環境に与える影響を評価しなくてならないという建前がJR東海や国交省にあるならば、974万立方メートル全部の残土置場、処分先が確定してからでなければ工事はできないはずです。



残土処分見込み 2021年4月1日作成






検討市町村 発生見込み量 処分地または活用 受け入れ量 備考





大鹿村 302.5 大鹿グラウンド 10 工事完了


旧荒川荘 3 工事完了


ろくべん館前敷地造成 0.5 工事完了


鳶ヶ巣沢護岸工事 30 注1


深ケ沢 7 工事中


村内の公共事業4カ所

豊丘村 223.2 神稲本山 130 工事開始


神稲戸中 26 工事開始


福島てっぺん公園駐車場造成 10


村道改良2か所 11.5


柏原・変電所造成 14 用地の伐採等済
喬木村 8.5 ガイドウェイ製作保管ヤード造成 7 耕土すきとり完了


産業用地造成 3.5 搬入中
飯田市 192.8 住宅移転代替地(丹保・北条) 3.5 搬入中


住宅移転代替地(唐沢・宮前) 1.1 注2。搬入中


飯田市龍江番入寺 40 住民が反対要望書


飯田市下久堅 20 環境計画提出
阿智村 71 村内4カ所 71
南木曽町 176 町道改良2カ所
注3
松川町
県道改良(飯田建設事務所が情報提供) 11 注4


町道・前河原道路 10


生田丸ボッキ 30 生東区は取下げ表明


生田福与地区の低地の埋め立て

高森町
下市田ガイドウェイヤード 10 注5


川の駅造成 6.5 注6
下條村
睦沢火沢 100
中川村
半の沢県道改良工事 33 注7


村が県に情報提供、詳細非公開



小和田地区水田嵩上げ 60 注8
駒ヶ根市
中沢区再開発事業 20


赤須産廃施設跡地整備 3 注9
伊那市
市道改良



産業用地造成 28 注10





974
699.6

注1: 『信毎』(以下『信毎』とだけ記載は2020年1月6日1面記事に掲載の表に示された内容を元にしている)は20万だが、30万という報道もあるので多い方をとった。

注2: 現在、唐沢・宮前の代替地にも残土を運んでいる。丹保・北条の面積と受け入れ量から推定。

注3: 南木曽では、最終処分地として、十二兼と長者畑の2つが上がっているが、受け入れ量は不明。JR東海が調査中。県の最初の照会に該当なしと回答した経緯もあり、町は慎重姿勢。

注4: 『信毎』は、7~11万 だが多い方をとった。

注5: 説明会の質問におおよその値として回答された数字。

注6: 『信毎』2018年1月17日 "高森町天竜川沿岸整備へ 国体カヌー誘致目指す" によれば、町は一帯の整備に必要な6.5万立米の土についてリニア残土の活用も視野に入れている。

注7: 『信毎』は53万としているが、20万は県道改良工事の残土がすでに半の沢の対岸に保管されている。

注8: 2021年3月9日、中川村議会全員協議会の席上中川村が計画を公表。

注9: 2020年10月、駒ケ根市は、同市上赤須で放置されている産業廃棄物最終処分場跡地の暫定措置として予定している埋め戻しについて、リニア中央新幹線建設工事に伴う発生土の活用を検討していくことを決める。

注10: 2020年10月伊那市は西箕輪の工業団地の区画造成に活用するためリニアのトンネルなどで発生する残土28万立米の受け入れを決定。