更新:2021/05/14

南アルプストンネル山梨工区の掘削のペースは?

 5月12日、JR東海が山梨県内の南アルプストンネルの広河原斜坑を報道陣に公開しました。

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 記事によれば、全長4.1㎞の広河原斜坑は2017年9月に掘り始めて現在までの3年8カ月で3.3㎞を掘削したので、1か月当り約75mのペースで掘ったことになります。JR東海は残りの800mを1年で掘るといっているので、こちらは約67m。JR東海は、地質がかたく、出水も少なく、順調に進んだと言っているそうです。

 長野工区では、せいぜい1か月約40m(メモ)。去年の12月に飯田市内で宇野副社長は1か月100mのペースで掘れば静岡工区は7年8か月で工事が出来るはずなのだが、去年の6月に静岡県が着工を認めてくれなかったので2027年の開業は困難になったという説明をしました。しかし1か月あたり100m掘れるということの根拠は、現実的、具体的には存在しないようです。

 ところで、早川斜坑は2017年6月までに掘削を完了していたはずなので、例えば1か月100mのペースで掘削したとすると2年と1か月で掘削できるので、2015年の5月から掘削を始めたはず。75mのペースであれば、2年と9か月。2014年の9月か10月から掘削をはじめていたことになります。国交大臣がリニア建設工事を認可したのは2014年10月17日でした。

 実際には、早川斜坑はもっと早い時期から掘削が行われていたはずで、2008年に鹿島JVと大成建設JVが工事を落札しています。大鹿村の釜沢では、農業委員会は許可したのにJR東海が一方的に工事を中止したトンネルと同じものです。上の地図で早川斜坑の途中に「2016年10月27日」と記入しました。これが斜坑が正式に着工した日です。認可後に斜坑として掘削したのは2500mのうちの最後の500mだけです。

 さて、早川斜坑の先の先進坑は、2017年7月から掘削開始、現在1900m掘ったのですから、えっ、まさかの1か月のペースは約41m。早川斜坑について41mで計算すると 2500÷41≒61か月。約5年ですから、2012年以前から掘っていた可能性が高い。

 5月13日には、長野県の阿部守一知事がJR東海の金子慎社長とオンラインで会談をしています。県知事は、開業時期について、「1日も早く静岡県との協議を方向づけて事業が進むように」と要請したそうです。金子社長は「27年の開業は難しいが、仮に延びるとしてもできるだけ短くしたい、県内工区についてはペースを緩めることなく進める」と答えたようです。

 去年の12月の宇野副社長の説明は、誠意のあるものとは言えません。もはや、事業計画の先行きが把握できなくなっているのだと思います。今の時点で県知事がいうべきことは、27年に開業してくれではなく、いつできるのかという具体的な時期についてだと思います。それが示せないのであれば、建設を中止せよということだと思います。

補足

(2021/05/15) 阿部知事と金子社長の会談についての『毎日』の記事の一部:

…公開された冒頭、阿部知事は「リニア推進には地元の理解と協力が不可欠。丁寧に対話し、地元の思いに寄り添ってほしい」と話した。金子社長は「地元と意思疎通して工事を進めることは大事。新型コロナウイルスのため経営は急激に悪化したが、リニアの走行に支障はなく、工事も大きな影響はない。着実に進める」と述べた。…

(『毎日』 2021/5/14 地方版 "リニア工事 知事「早期に方向付けを」 JR東海社長と会談 /長野")

 記者さんが間違えたのか? 金子社長が変なことをいっていますね。「経営は急激に悪化したが、リニアの走行に支障はなく」って。経営状態が悪くなったとしても、「走行」には影響ないと国民一般思っていると思います。「走行」に影響が出る場合があるんでしょうか?

 『朝日・長野県版』、『南信州』、『中日』、『信毎』には、こういうことは書いてありません。『毎日』は、金子さんが言いそうなこと、「工事も大きな影響はない」はきちんと書いているので、やはり、金子さんは「リニアの走行に支障はなく」と言ったのだと思います。『毎日』の記者さんは、あれっと思ったので書いたのでしょう。経営状態の悪化や工事が進まない現状から、困り切った金子社長のコトバが支離滅裂になっていると思ったのかも知れません。

 まあ、「リニアの(計画)そのものに支障はなく」を聞き間違えた可能性もあります。他紙は、金子社長の舌足らずで意味不明の部分は省いたのかも知れません。どうせ大したことは話していないと。

メモ

 長野工区の小渋川斜坑の先の先進坑の掘削状況は:

2019年8月23日から先進抗の掘削に着手
(この間、117日で160m、1か月当り41m)
2019年12月18日 160m 
(この間、98日で160m、1か月当り49m)
2020年3月25日 320m
(この間、91日で160m、1か月当り53m)
2020年6月24日 480m
(この間、97日で0m、1か月当り0m)
2020年9月29日 480m
(この間、73日で160m、1か月当り66m)
2020年12月11日  640m
(この間、103日で0m、1か月当り0m)
2021年3月24日 640m

 2019年8月23日の掘削開始から2021年3月24日までの579日で640mを掘削したので、1か月当り33mのペースで掘っていることになります。

 掘削着手の日付以外は、大鹿村リニア連絡協議会の開催日を採用しました。

 およその数字ですが、長野工区の先進坑部分の掘削のペースは当初見込みの1か月60mに比べると約半分です。山梨工区の広河原斜坑の残り800mを1年で掘る予定のようです。とすれば1か月約70mは掘れるという見込みだったかも知れません。ともかく2027年開業というキチキチの目標を目指せば、ヤード整備とか掘削開始がすべて予定通りにいったとして、60m~70mのペースでないと間に合わないはずです。山梨工区の先進坑の掘削ペースも1か月約41mと見込み3分の2程度です。

 参考資料は、大鹿村のリニア中央新幹線情報の No.43 ~ No.49 です。大鹿村の資料で「160m」という数字が繰り返し出てくるのは、全長約1600mの1割とか3割といった形で報告されているからです。