更新:2021/07/08

熱海の土石流災害

 熱海の土石流災害では、原因はまだ完全には分かっていませんが、約5万立米の盛り土だった部分も崩れています。盛土より下の部分が崩れたのが原因で盛土が崩れたとしても、ともかく盛土は崩れたんですから、盛土それ自体には問題がなかったといえるかどうか。

 熱海の災害を受けて、長野県が県内の盛土の緊急点検を行うそうです。

 土砂災害警戒区域内にある宅地約150カ所の大規模な盛り土造成地の他、警戒区域の上流にある盛り土などが対象 … 緊急点検は目視で行い、盛り土のひび割れや水漏れ、水路の破損状況など外見上の変化を確認する。点検結果を踏まえ、土地所有者らに必要な注意喚起を行い、市町村と対応を協議する。(『信毎』)ということで「長野県が」市町村と連携して行うとしています。

 リニア新幹線のトンネル残土処分の盛土については、県は7日、JR東海のリニア中央新幹線工事で出る残土の置き場について、安全対策や工法を再確認するよう同社に要請した(『信毎』)、県は、リニア中央新幹線のトンネル工事などで出る土砂の管理について、安全性に問題がないかJR東海に改めて確認するよう依頼したことも明らかにしました(『信州 NEWS WEB』)。

 JR東海のリニアの残土で既に工事が完了した盛土は、大鹿村の旧荒川荘跡地(3万立米)、あとは大鹿村村総合グランドの嵩上げ(10万立米)、大鹿村ろくべん館前の公共用地嵩上げ(5千立米)、飯田市の丹保・北条移転代替地造成(3万5千立米)、喬木村伊久間の工事移転代替地造成(3万5千立米)などです。

 JR東海がこれから行う計画の盛り土は、工事の始まったものが、豊丘村下沢(26万立米)、豊丘村本山(130万立米)、大鹿村深ケ沢(7万立米)など。他に、具体化しているものとしては、飯田市下久堅小林の20万立米、中川村半の沢の53万立米、大鹿村の鳶ヶ巣崩壊地直下の30万立米、などがあります。

 本山の置場について長野県は、いったんは、地権者であった本山生産森林組合の運営に問題があるという理由ではあったのですが、ともかく白紙に戻させました。おそらく、県の治山や治水に関わる現場では、想定外の規模の開発行為という認識があったのだろうと思います。しかし、最終的には、鉄道用地にするという公益性があるからと保安林指定の解除を認め、工事が始まりました。

 中川村の半の沢と大鹿村の鳶ヶ巣崩壊地下については、安全性の確認について、JR東海が費用を負担して長野県が設置した検討員会がOKを出していました。

 これからJR東海が造成する「想定外の規模」の盛土について、「長野県」が、安全対策や工法を再確認するよう同社に要請したり、安全性に問題がないかJR東海に改めて確認するよう依頼するだけでは、各地の住民説明会で住民からの指摘に、JR東海が安全だとそのたびごとに言い逃れてきたのと同じことを繰り返すだけだと思います。

 熱海のあれだけの被害を見て、長野県のやることは、ポーズにすぎないと思います。静岡では、燕沢というところに、長野県内の残土置場の規模と比べてもさらに非常に大量の残土を積み上げるという計画があります。この残土についても静岡県は検討課題にあげるはず。長野県の姿勢はあくまでリニア優先に見えます。

 また、盛り土は住宅に関連するものばかりでなく、道路や鉄道、公共施設など広く行われています。JR東海については飯田線の線路に盛り土(築堤)部分が多く、大きな事故になったものとしては2004年10月20日に辰野町で、最近では、3月2日に飯田市北条で盛土が崩れています。