更新:2021/07/26

電気を食う理由

 2つの磁石が離れている場合は、何も起こりませんが、距離が接近すると反発しあったり、くっついたりします。距離が近い方が強く反応します。

 モーターも磁力を利用しているので、外側のコイルを巻いた部分と、回転する部分の隙間は出来るだけ小さい方が効率が良いはず。この隙間のことをエアギャップ(空隙)と呼びます(*)。次の写真は洗濯機のモーターの内部。回転する部分との隙間は1mm以下です。

* ネットで「エアギャップ」を調べるとコンピュータ用語としての説明が多いですが、モーターの隙間について、昔からエアギャップと呼んでいたようです。

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(内部が見えるように前面のカバーをはずしてあります)

 リニアモーターは、回転式のモーターの外側を開いて伸ばしたようなものと説明されます。そうなら、回転する部分にあたる車体の磁石と軌道との隙間も出来るだけ小さい方が良いはずです。

 超電導リニアでは、この隙間が、7.5㎝以上。トランスラピッドとかリニモは1㎝です。結局、電力消費がトランスラピッドより大きい最大の原因は、隙間、つまり浮上量が大きいからです。超電導磁石の磁力は確かに非常に強いのですが、それでも間に合わなかった。

 超電導リニアは、車体を浮かすのに、超電導磁石と軌道側の浮上案内コイルとの間の反発力と吸引力を使っています。JR東海は磁気バネと呼んでいます。バネですから車体に加わる、重量とか遠心力で伸び縮みします。つまり、車体と軌道の間の隙間の大きさが変化します(3.5cm から 7.5cm)。その変化する分(4㎝)を確保する必要があるので、隙間を大きくする必要があります。

 かたや、トランスラピッドは、隙間をセンサー技術で検出しエレクトロニクスを用いて浮上用磁石の電流を制御することで1㎝という狭い隙間を一定に保つことを実現させています。モーターの仕組みとして理にかなった方式だと思います。

 新幹線のモーターもエアギャップは1mm以下です。同じ300㎞/hという速度であれば、トランスラピッドよりさらに電力消費は少ないです。

 回転式モーターは、回転軸が、頑丈なケースにベアリング(軸受)で支えられているので、小さなエアギャップが実現できています。

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