更新:2021/09/29、2021/10/01 補足と訂正

第21回大鹿村リニア連絡協議会

 9月28日夜、大鹿村交流センターで第21回大鹿村リニア連絡協議会がありました。

 残土搬出経路の県道59号の改良工事をしている長野県から、資材不足などで工事が若干遅れているとの報告がありました()。会が終了し帰路の59号線では夜間工事が始まろうとしていました。

 JR東海の報告の要点は:

小渋川斜坑

釜沢地区

伊那山地トンネル青木川工区

工事で発生する温室化ガスは?

 工事車両についての報告によれば、大鹿村役場前の通過台数は予定も含んで、2021年3月から12月で、資機材運搬が約60台、残土が約420台。残土運搬の車両の方が圧倒的に多い。残土運搬や処分に必要な、二酸化炭素の排出量について見過ごされていると思う。

運が続けば…

 釜沢・小渋川間の先進坑ができた場合の残土運搬はどうなのかというような今後のスケジュールに関する質問に、いつからこうしますという明確な答えはなく、検討中、あるいは先進坑ができてから検討して、12月の協議会では報告できると思うといった答えが目立ちました。

 『信毎』の web版 の見出しは "リニア南アルプストンネル 大鹿の先進坑、年内にも貫通 小渋川―釜沢両非常口間" です。6月24日の協議会の報告では1600mの5割でした。今回は7割です。3か月で320mですから1月当たり107m。残りは480mです。単純に計算しても約4か月半かかるはず。この先進坑は3か月間掘削が停止したことがこれまでに2回ありました。また、2019年8月23日の掘削開始からの通しでは約25カ月で1120mなので月平均44.8m。これで計算すると約11か月弱です。年内にということになれば月あたり160m掘る必要があります。

 古谷部長は、今のところ順調に掘削が進んでいるので先進坑は釜沢まで年内につながるのではないかといっていました。もちろん個人的印象ですが、「順調に」という言葉になにか「運よく」という雰囲気が感じられるところがありました。順調なら近い将来の計画はある程度明確に提示できるはずです。どうも順調がいつまで続くか分からないということは考えているのでしょう。

 もちろん個人的な見解ですが、この先進坑はおそらくこれから、たぶん今までで一番困難な場所に遭遇するはずです。釜沢集落の水源でもある、所沢の直下を掘ることになります。小河内沢の右岸の岸辺の岩肌がそんな目つきをしています。先進坑の他に、昨年夏から、地滑り関係で集落の近くでは水抜き工事も行われています。釜沢集落は現在は所沢から取水しているのですが、代替水源は影響のない場所に確保してあるのでしょうか。付近に影響がない場所などないように思うのですが。

再三要望が出ていることは承知している

 集落自体も地すべりしているので、地すべり計が設置してあります。そのデータを公表するよう釜沢の自治会長から要望がでました。JR東海は、自治会長から再三要望が出ていることは承知しているといっていました。公表に向けて調整中で準備が整い次第懇談させていただきたいという回答。

 JR東海の回答は、時期とかイエス、ノーなど明確に答えることができるであろう、また答えるべきことについて、どうもはっきりしないところがあります。つまり、何が起こるか分からないという状況で工事を進めている自覚があるのではないかと思います。

村民は我慢している

 やはり静岡の件が話題になりましたが、長野県は予定どうり進めるという説明。静岡で着工の見通しがあるとは説明していなし、説明できるとは思えない。根拠のない見込みで進めているとしか思えません。

 前段落(下線部分)は質問者の発言の要点が分かりにくかったので誤解がありました。『信毎』、『中日』に工事が未着手の静岡工区を長野県側から掘削する可能性があるかという質問があった書いてありましたので、非常に読みにくいメモを再確認してみました。質問者は、長野工区の範囲が静岡工区へ延長されるとすれば、村民が行ってきた工事への対応として我慢していることが無駄になってしまうと思う。工区の延長はあり得るかという意味のことを発言していました。それに対して、古谷部長は工区の延長はないと答えています。実際そんな余裕はないと思います。

『信毎』29日2面 "大鹿の先進坑 年内にも貫通 小渋川・釜沢非常口間"、『中日』30日13面 "先進坑の掘削 7割完了 大鹿村連絡協で工事の進捗説明"。

 観光業者が土曜日休工を求めている件について、高齢者の通院に関連して、工期が伸びる可能性について配慮していたのかといった質問がある自治会代表からありました。

 工期が年間52日分伸びるというような計算はできます。しかし、トンネルの掘削ペースの実績は当初予定に比べ現在三分の二程度に低下しているし、行政手続きも思い通りに進まずということもあり、そもそもスケジュールの見込みのあいまいな工事計画だっといえるので、それを受け入れてしまった以上は、どうなんでしょうか? 当面、打撃を受けている観光関連事業者のために土曜休工は必要だと思います。また、工事現場の働き方の問題でもあると思います。県道の拡幅工事は週休2日、深ケ沢の残土置場も週休2日で行われていると思います。

(補足 2021/09/30) JR東海の古谷長野県担当部長は、冒頭のあいさつのなかで、観光協会から村議会に出された請願書については、議会からJR東海に申し入れがあり、引き継続き関係者の間で懇談させていただくことにしていると述べています。

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左に「ろくべん館」や「中央構造線博物館」があります。重機のある場所は「ろくべん館」や「中央構造線博物館」の来客用駐車場です。

 ダンプカーが10台ほど「ろくべん館そば」に駐車していることについて、観光客の目につかない場所に駐車できないかとの要望も出ました。話題にはならなかったですが、残土運搬をしているダンプカーは他県ナンバーが多いです。

 中電からも新設高圧線の工事と配電線の架けかえについて報告がありました。

 はじめた戦争は止めるのが難しいといいますが、JR東海さんは、今、そういう状況にあるんじゃないかと思います。迷惑を受けるのは地方の住民です。


補足 2021/10/01

県道59号線拡幅工事

 『南信州』29日1面 "10月から残土搬出本格化 大鹿村連絡協 県道5区間の改良、上旬に完了 関連事業の進捗 JRや県が報告" によれば、県道拡幅工事については、工事中の2区間は今月中に道路改良が終わるが、全国的な落石防護網の不足により防災工事は10月上旬までかかる と長野県が説明。

 県道59号の迂回路として使っている小渋川の河川敷内の道路については、観光シーズン中の配慮を求める村の要望を踏まえ、閉鎖は11月上旬とする予定(『南信州』)。

青木川工区の掘削方向は品川方面

 また、青木川工区については、現在は品川方面への掘削準備のため、名古屋方面に掘り出している(『南信州』)。JR東海の説明で少しでも疑問と思う点をきちんと取材しているさすが地元紙『南信州』。記者さんは工事計画をよく理解していると思います。

ていねいな説明とは

 村議会から観光協会の残土運搬についての請願について、議会で採択したので懇談をさせて欲しい、また、議論の中では土曜日の運行を全部止めると工期が伸びるのではないかといった意見があることは重々承知しているが、観光業は大変な苦境にあるので、観光シーズンについは出来るだけ配慮してほしいという発言がありました。

 これに対してJR東海の古谷部長は、しっかり懇談させていただきたいと思うと答えてから、土曜日の運行を止める点については今までの経緯を考えれば、2013年、環境影響評価の準備書の出た時点では小渋線(県道59号線)に1日1700台以上の工事車両が通るという前提で影響評価をしたところ、大鹿村の皆さまから非常に多いという声があって、大鹿村や長野県と協議して対応を検討した中で、対応策として小渋線に2本のトンネルをあけ、5カ所の拡幅工事をすることで安全の確保をするということ、村内については大河原の中心部を迂回する道路を作ることがあり、現在トンネル建設と道路拡幅が完了した状況である。2016年9月の南アトンネルの工事説明会で日曜休業、土曜は工事をすることで、県道改良等を行うということで、当時契約ができていた鹿島JVとも相談し、1350台におさえるので、日曜休工だけの体制で工事をさせていただくという説明をした。こうした経緯があって、2016年10月に工事用車両の通行に関わる確認書を大鹿村と結んだ。この確認書で、運行時間とか工事を休む期間について明示して工事が始まったという経緯で来ているので、そういうことも、ちょっと頭の片隅においていただきながら、JR東海としても調整出来るところはするけれど、引き続き懇談をさせていただければと思いますのでよろしくお願いします、と答えていました。

 けっこう長いおしゃべりなんですが、要点は「引き続き懇談をさせていただければと思いますのでよろしくお願いします」だけです。でも、小渋線が良くなったことなんかも忘れないでねということ。

 まあね。こういう説明を丁寧な説明というのですね。実質は、観光協会の今回の要望もちょっとねということなんだと思います。その点、前回の連絡会でその場でダメと答えたあとはそんなことは知ったことか風の高森町の対応の方も、これはこれで良くないですね。高森町民としても、土曜日は残土の搬入を止めて欲しいと思います。

認可前から残土置場の見当はついていた?

 ちょっと変だとおもうことは、小渋線を1700台以上のダンプカーが走るという予測ができたという点。環境影響評価の準備書で検討しているのです。大鹿村内に残土置場として適当な場所がないことが分かって、村外なら処分地があるから、ということは、JR東海は準備書を出すまでの段階で、おおよその残土処分地の候補地について、このあたりが良いという「めぼし」があったはずです。ところが、長野県に候補地の紹介をお願いしている。長野県を通さなくても、直接地権者(法務局で調べれば分かります)と交渉すれば済んだことです。準備書の段階で、豊丘村では、おそらく本山について、説明会で村民から、地権者のところへJR東海は早く交渉に来いという意見が出ていました。つまり、JR東海がめぼしい土地について直接に地権者とはじめから交渉することもできたはずなのです。長野県を介してということの意味はなにか。地権者が拒んだ場合にJR東海の後押しをしてほしいと言うことじゃなかったのかなと思います。

 しかし、環境大臣が意見書で厳しく指摘している通り、残土置場については環境影響評価書の段階でもほとんど決まっていなかった。工事認可の取り消し訴訟では、原告側は残土置き場が決まっていなかったのに認可したのは不適当だったと主張していますが、めぼしがあったとすれば、JR東海の工事申請と国交省の認可はちょっと問題があったと思います。