更新:2021/12/08

飯田市座光寺地区の明り区間のリニア騒音問題

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 リニアの明り部が予定される飯田市の座光寺地区は、移転後の空き地も見える上郷地区に比べると、外見的にほとんど変化が見えません。

 飯田市議会の7日の一般質問で、座光寺地区が地元の筒井誠逸市議(新政いいだ(保守系))がリニアの騒音対策問題について質問をしました。中継録画が Youtube にあります。

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 開業時期に関しての筒井市議の質問に、市長はリニアの工事は遅れていると認識。2027年開業が無理なら開業がいつになるかをJR東海は出来るだけ早く示してほしいと述べています。

 筒井市議は、座光寺地区の河原地区のリニアの明り区間について住民の不安が高まっていると指摘。フード問題についての交渉は職員が行っている、地元の意見を聞く機会ができていないことには忸怩たる思いがあると市長。細田推進部長は、1類型の騒音基準(70デシベル)を上回る騒音がでる場所があることは認識していると述べています。

 騒音のデメリットをクリアするため何かする考えはないかとの質問に、細田部長は、JR東海は、防音壁、フードなどの改良や対象家屋の個別対策をすると言っている、地元は対策の明文化文書化を求めていると認識しているが、JR東海は沿線全体にも影響するので具体的な対策はまだ示すことはできないとしていると答える。

 筒井市議は、地元は7年前から全体に防音防災フードを求めてきたが、JR東海は防災上フードのない区間が必要といっている。地元の対象の住民たちは騒音問題が解決しない限り着工は許さないと言っている。天竜川橋梁の工事が始まるなど、周りから外堀を埋められて、住民が悪者にされているのではという不安もある。

 細田部長は、2年位前にJR東海は重大な火災が発生した場合に備え16両編成分の長さ約400mの防音防災フードのない区間が避難場所として必要だと地元に説明した経緯があると、また、リニア事業については関係者と関係地区の理解と協力があって実施できると市もJR東海も認識していると答えています。

 筒井市議はこの問題は難航すると思うといい、地元のリニア対策部に5~6回出ているが、「もうよそへいってくれ」という住民もいる、今のJR東海の対応では騒音対策は開業までにまにあわないと思う。地元からは、この区間は250㎞/hへの減速の提案も出ているがJR東海は聞き入れない。このままでは迷惑施設で、残念、飯田市が最後まで間に立って交渉を願いたいと述べました。

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 この地区では、飯田市が約25年前に分譲した住宅団地があって、そのほとんどが移転対象になっているということもあります。最初に示された駅の位置は北隣の高森町の南部でした。前飯田市長が中間駅を飯田市内に持ってきたいと頑張ったためルートが現在の位置に変更(※)されたのだと思います。

中間駅の位置は誰が決めたのか?

 リニアについては、8年前から、市民のあいだに、いろいろな面で、わだかまりがあるのだと思います。

 飯田市は、JR東海に対して防音防災フードのない部分の徐行運転を要求してもよいのではないかと思います。駅に近い場所で各駅停車であれば、停止前、発車直後で速度の遅い場所だし、分岐装置があるので減速したほうが安全の上でも合理性はあると思います。

恵那市でも防音防災フード問題

 リニアの工事認可取り消し訴訟の第21回口頭弁論のあとの報告集会での岐阜からの報告によれば、岐阜県の恵那市の岡瀬沢地区には明り区間がありますが、岡瀬沢地区では防音防災フードを設置しない限り工事は認めないとして、いまだに中心線測量もさせていないようです。

『赤旗』2019年9月21日 "党国会議員団 リニアの現場調査 岐阜 地域分断・騒音・陥没…" は2年前の記事ですが、以後、岡瀬沢では進展がない。岡瀬沢地区では、同地区を地上で通るリニアの騒音問題を調査。地域が求めている地上部全線の防音フード設置にJR東海が応じず、住民らは中心線の測量を認めていません。

 年内にはというJR東海さんの見込みより早く小渋川斜坑口と釜沢斜坑口が6日につながって1月からは南アルプストンネル工事の大鹿村からの残土搬出が本当に本格化すると思います。しかし、沿線の全体の状況は一進一退ではなく、未解決だった部分がそのままになっていたのが明らかになったり、工事変更など新たな問題が出たりと、一進三退、1日1歩3日で3歩、3歩進んで5歩戻るという感じでしょうか。このまま突っ込んでいくと崖から落ちる。


 ここからは、ほぼ余談です。事業説明会だったかと思いますが、リニアの車体自体に防音壁のようなものをつけて一緒に走ればよいのではないかという提案が住民から出ていました。8年前のそのときは何を言ってるのかと思いましたが、今にして思えば、すごく本質的な指摘だったと思います。

 超電導リニアは超電導磁石がある台車部分が車体表面から10~15cmほど飛び出しています。この部分がガイドウェイとの間で騒音を出す大きな原因になっているはずです。上海で走っているトランスラピッドは、台車部分が車体の内側に隠れる形になっています。トランスラピッドの電磁吸引方式は、磁石の吸引力を使っているのでもともと安定性が、主に反発力を利用する超電導リニアより安定性が高いはず。だから、軌道の幅を車体より狭くして台車や軌道を車体の内部におさめることができているのではないかと思います。超電導リニアは、安定性が保てないから、車体の幅が軌道の幅より狭いのではないか。だから騒音防止は主に軌道側でしなくてはならない。

 もちろん、だから、トランスラピッドの方が静かだといっているんじゃありません。

image 車体の幅より軌道の幅が広い。
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超電導リニアは台車が出っ張っている。青い矢印は空気の(相対的な)流れ。ガイドウエイとのスキマで大きな騒音を生じる。

image 車体の幅は軌道の幅より大きい。
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トランスラピッド(上海リニア)は台車と軌道が車体の内側におさまっている。

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最初の営業線用プロトタイプのTR-06型。