更新:2021/12/20

最近(11~18日)の『静岡新聞』の記事から

 1.の記事にあるように、大井川の減水問題はすでに社会問題になってしまっていると思います。現実的にはJR東海が静岡県を通らないルートに変更すると言いださない限りは問題は解決しないし、リニア計画も頓挫するはず。

 東京電機大の寿楽浩太教授の「本来はリニアのルートが決まらない段階で大井川への影響を検討し、合意を得るべきだった」というコメント(1.の記事)。せっかく、「愛・地球博」という戦略的環境アセスメント的な先行例があったのに、法的にはそれで良かったとしても、リニアの環境影響評価が時代遅れの方法で行われた結果、こうなったというしかないと思います。それだけの先進的な試みをしようとする意思のない企業のリニア事業計画に「夢」や「未来」があるとは思えません。

 良い年こいた大企業の社長が、「一生懸命やっていかないといけない」(2.の記事)で通用する時代じゃないと思います。

 無理な計画について工事の認可をした国交省の責任は重大。国交大臣は認可を取り消すべきです。工事認可取り消しを求める訴訟(ストップ・リニア!訴訟)が係争中ですが、被告の国側が『認諾』すると、すごく変なことをやってきている認可にいたる各段階での瑕疵を明らかにできないことになります。

 5.の記事で、そもそも、中間の通過地域のことなど、JR東海は考えていないことは明らかなんですが、伊那谷の市町村長や有力者たちは、いまだに「リニアを見据えて」ということをいっています。

 なお、これらの記事とは関係ないですが、リニアが誘導反発浮上方式を側壁方式で実現していること、超電導磁石を採用していることから、南アルプスをよけて迂回するルートは技術的にリスクが高く現実的ではないはずなので、静岡が通過できないとして、諏訪を経て木曽谷や伊那谷を通過するルートはダメです。つまり、安定して、安全にカーブを走行できないリニアは乗り物の技術としては失敗作です。

  1. 12月19日 "科学的議論に限界 着工是非 誰がどう判断【大井川とリニア 第8章 流域の理解は得られるか⑤完】"
    科学的議論を尽くしてもトンネル工事の不確実性を踏まえれば、中下流域の水への影響を完全に予測できず、事前に影響がゼロと言い切れないというのが識者の大方の見方だ。政治や行政に詳しい県立大の前山亮吉教授は「有識者会議はデータなど判断材料の提供機関でしかない。合理的なデータが整った段階で、妥協して工事を容認するのか、しないのか政治的決断が必要になる」と話す。東京電機大の寿楽浩太教授(科学技術社会学)は「(大井川の水問題は)既に社会的な紛争の状態にある。地元への謝罪や補償も視野に、解決のための妥協案を模索するしかないのでは」とJRの経営判断や政治問題だという認識を示す。「本来はリニアのルートが決まらない段階で大井川への影響を検討し、合意を得るべきだった」と指摘した。
  2. 12月17日 "理解獲得「さらに懸命に」 JR東海社長一問一答【大井川とリニア】"
    金子さんのいっていることは、具体的にどうのこうのというよりは、さらに一生懸命やっていかないといけない という「抽象的」なものだろうと思います。
  3. 12月17日 "減水「可能性低い」 JR東海社長会見 中間報告案の文言根拠【大井川とリニア】"
    12月16日の会見で金子社長は、国交省の有識者会議の中間報告案をもとに、「中下流域の河川流量が維持され、地下水量の影響は極めて小さいという見解が示されている」と述べ、中下流域の水量減少に関して「可能性が低い」とする見解を示した。…不確実な予測が前提だという点について、金子社長は「有識者会議(国交省専門家会議)と違う見解を申し上げるつもりはない」と述べた。
  4. 12月17日 "指導役の国交省会議 肝心な議論不十分の声【大井川とリニア 第8章 流域の理解は得られるか④】"
    1年8カ月にわたる協議では、上流域で地下水位が300メートル以上低下する予測図がJRから提出された。JRが非公表にしてきた地質調査会社の資料の一部や、水量減少・水質悪化の想定パターンが示され、推定したトンネル湧水量の不確実性が明確になるなど、同会議は一定の成果を上げた。難波喬司副知事は「JRとの対話に必要な資料や科学的根拠は相当明確になった」と評価する。、… 県会議の専門部会長と国交省会議の委員を兼務する森下祐一静岡大客員教授は取材に、国交省会議の意義を認めながらも「JRへの指導が目的で、肝心な部分の実質的議論は進んでいない。県の会議で対応するしかない」と中間報告後も科学的議論は継続すると強調する
  5. 12月16日 "JR東海の企業体質 問われる地方への姿勢【大井川とリニア 第8章 流域の理解は得られるか③】"
    葛西氏は01年の著書「未完の『国鉄改革』」(東洋経済新報社)で、コストの2倍の運賃に設定された東海道新幹線の収益は国鉄時代に地方の不採算路線の赤字補塡(ほてん)に充てられていたとし「経済合理性」を優先して補填をやめるべきだと主張。17年の著書「飛躍への挑戦」(ワック)では「東海道新幹線の旅客から収受した資金をもってリニア中央新幹線を建設する」と記す。大都市圏以外の地方都市や農村部の発展には触れていない。
  6. 12月15日 "減水リスクの認識、情報開示不足 溝深める【大井川とリニア 第8章 流域の理解は得られるか②】"
    国交省出身でJRとの協議を担当する難波喬司副知事は各地での公共事業の経験を踏まえ、住民と事業者が認識する影響の大きさは異なると考える。9月の専門家会議では「科学的に同じ説明をされても住民とJR東海ではリスクの受け止め方が違う。対等なコミュニケーションができないと(流域の)理解は得られない」と対話の在り方を説いた。18年に上梓(じょうし)した著書「実務家公務員の技術力」では「誠意ある、分かりやすい情報公開は事業者の義務」と記し、「情報公開の不足は住民の不信感を大きくさせる」と指摘する。
  7. 12月14日 "JR東海の説明、丁寧さ欠き混乱 不信感【大井川とリニア 第8章 流域の理解は得られるか①】"
    14年の事業認可の際、太田昭宏国土交通相(当時)は「丁寧な説明を通じた地域の理解と協力を得ること」を同社に求めた。 しかし、利水者は、たとえば、取水制限を行った年ではなく、平年を上回る降水量のあった2012年を「渇水年」と表記して予測に使った。不適切と指摘を受けた後も「(予測に使った3年間で)最も降水量が少ない年」と表現を直し、取水制限がなく平年の降水量を上回る年だったことは今も記載していない。 といったことについて丁寧とはいえない。
  8. 12月14日 "年1億トンは「影響小」か/中間報告、客観的事実を 国交省専門家会議・第12回議事概要【大井川とリニア】"
  9. 12月12日 "掘削進む山梨区間 県境の破砕帯、幅は不明 専門家「標高差で水流出も」【大井川とリニア】"
    現在静岡県境まで2㎞付近まで進んで知る山梨工区の掘削。静岡県境に近い部分のトンネル掘削が大井川の水量に影響を与える可能性については、山梨県内の掘削の地質データを開示した上で、ボーリング調査や電気探査、弾性波探査などを組み合わせた調査が必要との指摘。11月26日の会見で金子社長は、「県境までいくのか、もう少し余裕を持って(掘削停止を)決めるのかも含めて適切に判断する」と対応を説明
  10. 12月11日 "リニア水問題、県から意見出さず JR東海と対話へ 副知事が答弁"
    静岡県議会での難波副知事の答弁。国土交通省専門家会議の中間報告について「あくまでJR東海の指導のためだ」と指摘し、これ以上、静岡県から専門家会議への意見は出さず、今後は県の有識者会議で対応する方針
  11. 12月11日 "リニア関連知事発言 「国交相に謝罪」【静岡県議会知事答弁】"
    記事の最後の段落: 川勝知事は井林氏について「住民理解が得られなければ工事をすべきではない」とする立場だと理解していたとし、「丁寧に説明したことをもって(住民の)理解を得たと事業者が見なせば、工事に入られることになる」と独自の解釈を披露。自身が応援した立憲民主党の候補は南アルプスのトンネル工事を認めない立場だったとし、その違いを強調するためだったと釈明した。。記事は、川勝知事の「独自の解釈」としていますが、事実は説明会で丁寧な言葉で説明すれば、住民の反発が多数あっても、住民は理解したことになるというのがJR東海や国交省の「公式な見解」。