更新:2022/04/03

開き直る阿部知事、いいぞがんばれ

 4月2日の『信濃毎日新聞』1面トップに "リニア残土置き場候補地 土石流の危険 知事、公開情報と強調 「市町村が知らない状況ではない」 計画浮上時こそ発信責務 事前の浸透には限界"(web版)という記事が乗りました。2面には、 "リニア残土置き場候補地の危険性 知事会見やりとり 「阿智村会の抗議 驚いた」" という知事会見での記者とのやりとりが。

 村内でトンネル残土置場候補地になっているクララ沢について長野県が「崩壊土砂流出危険地区」の指定をしていた情報を住民に伝えていなかったことについて、阿智村の村議会が抗議しましたが、これについて長野県の阿部知事の記者会見で「市町村が知らない状況ではない」と感想を述べたという内容。

 阿部知事が市町村に対して開き直ったような発言をしたことは、ともかくちょっと面白い。

 まずは、とりあえずは、長野県がこれらの情報をオープンにしているという点を確認。

 長野県の「土砂災害のおそれのある場所」というページの「情報の入手」というところ、おっと:

正式に区域を確認する際は、必ず県庁建設部砂防課または区域を所管する建設事務所、砂防事務所及び区域の存する市町村で図面によりご確認ください

などと、書いてありますね。市町村が知らないわけはないという知事の発言はごもっともかも。

 で「情報の入手」の「信州くらしのマップ(外部サイト)」を開くと16枚のタイル表示があります。最上段左から2つ目の「防災」をクリックすると、小さな窓「マップ選択」がポップアップします。左の「防災」をクリックして開いた地図で、「土砂災害危険箇所」が分かります。

 豊丘村の小園の2つの谷は2016年に住民運動が起きてJR東海に使用を断念させたところです。この小園の谷、同じく豊丘村の本山、下沢、松川町生田の寺沢川の3カ所ともに「土石流危険渓流」であることが上で紹介したページで確認できました。これらの谷については、地元の住民から残土を谷埋めした場合の災害について心配の声があがったところです。市町村の役場が知らなかったにしても、住民は知っていたのと同じこと(豊丘村小園の場合は明らかに住民側は知っていた)。市町村が知らなかったといえるわけがない。

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豊丘村小園のリニア残土の盛り土反対の住民運動で使われたチラシより。「土石流危険渓流」、「治山堰堤」の文字が見える。

 思わずなのかどうか分かりませんが市町村に対して開き直った感じの阿部知事さんは、少なくとも報道されてしまったこれら2つの場所については、長野県として候補地の情報提供を撤回すべきです。

 また、住民から少しでも心配の声のあがっている場所については、すでに工事が始まっているところについても、住民側からの意見を改めてしっかり聞いて再検討して、候補地を撤回すべきです。まあ、谷埋めの候補地はすべてダメになってJR東海に協力できないことになりますが、日本で建設しようとすれば、どうしても地下部分が多くなってしまうほぼ直線しか走れない超電導リニアの残念な技術が原因なのですから仕方ないというしかない。長野県は、いわば、JR東海にだまされたようなもの。

 長野県内ではトンネルが掘れないことになりますが、阿部知事は同じくリニア推進の立場の静岡県知事を見習って「ちゃぶ台返し」をすればよい。村井知事の時代に長野県が主張していた茅野や諏訪地域を通るBルートに変更するようにいうべきです。

書類がそろっていれば安全?!

 2面の一問一答で、阿部知事は、

法規制のない土石流危険渓流などについても建設部で安全を確認している

、といっています。

 豊丘村の本山(130万㎥)の場合は水源涵養保安林の指定解除が必要でしたが、長野県は、盛り土の規制については、15mを超える場合に当たるので盛土の安定計算を提出してもらって、林地開発許可と同じような扱い、安全性を確認したこととして林野庁へ書類を上げるということでした。15m以下の場合の安全基準も「道路土工-盛土指針」にしたがって設計するということがあるだけです。JR東海が提出した安定計算が2次元解析に基づくものだった点を長野県は、「豊丘村内発生土置き場(本山)における架橋保全について」への助言で、3次元解析で説明すべきとしていましたが、JR東海は2次元で十分と回答しています。それで済んでいます。長野県の建設部が安全を確認したとはいっても、そもそも安全の基準がない(なかった)はずです。書類がそろっているから安全と判断したでは被災する住民としては困ります。

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