更新:2022/06/28

住民の会の要望に対するJR東海の回答

 6月1日、「リニアから自然と生活環境を守る沿線住民の会」は「東海旅客鉄道㈱中央新幹線長野工事事務所長」あてに「リニア中央新幹線に関連しての要望書」を提出しました。6月27日にJR東海から回答がありました。

 午前9時半から、飯田市元町の国鉄時代には国鉄の病院だった建物の「中央新幹線長野工事事務所」を、住民の会側は4名で訪問(1名は予備人員)。事前に3名でという約束だったので3名が建物内に入りました。回答は、文書でと要望したのですが、口頭で回答を聞きました。なお、あとでいったいわないということにならないように、JR東海側で録音記録するようにというと、建物内のどの部屋についても常に録画・録音をしているとの答えがあったそうです。どういう会社なんだと思いますね。

 要望項目への回答は以下の通りです。

風越山トンネル本体工事の説明会について

・風越山トンネル上部にあたる上郷黒田地区ほかでは風越山トンネルの本体工事について情報が知らされていない。これらの地区で早期に一般住民参加のトンネル工事についての説明会を開き、丁寧な説明をすること。
JR東海の回答:これまでに行ってきた説明会は準備工事についてのもの。本体工事については令和7年度中には着工したいが、まだ検討中であって、飯田市と協議中。

 説明会に関連して、「まちづくり委員会」は地域の住民全体を代表するものではないことを指摘すると、それは聞いているとのことだったそうです。

新戸川、土曽川の災害対策

・土曽川、新戸川は豪雨で流木、土砂等により災害発生する可能性が高く、飯田線の暗渠を大きく作り変えること。
JR東海の回答:新戸川の築堤の暗渠や防災については、長野県や飯田市と相談していく。

トンネル工事については地権者の承諾が必要

・民法 207 条によれば、土地の所有権は地下に及ぶので、風越山トンネル上部のそれぞれの土地の個別の所有者に対してトンネル掘削の承諾を得るための交渉をすること。個別の所有者の承諾を得ずに工事をすることは不法行為である。トンネルの上部の土地について所有者の承諾を得て区分地上権を設定し登記することは、鉄道の運行の安全を確保するためにも必要である。
JR東海の回答:トンネルの深さが30m以下の場所については、土地所有者も含めた説明会で丁寧な説明を行っていく。(不法行為という念押しに)従来そうしている。

トンネル工事の地表への影響

・振動、騒音への対策を実施するとともに、東京、神奈川、愛知などの大深度地下法の適用されるトンネル工事と同様に事前の地上部の家屋調査を行うこと。
・地表面の高さの変化を計測し、周辺を巡回して監視すること。
・シールドマシンの位置やそのほかの工事情報をきめ細かく住民に知らせること。
JR東海の回答:検討する。

地盤沈下、陥没などの責任は

・陥没事故、地盤沈下などの被害が生じた場合の責任を明確にして十分な補償をすること。
JR東海の回答:飯田市のリニア推進部と相談して決める。

トンネル工事の検討委員会

・調布市内では外環道トンネル工事で陥没事故があった。 首都圏第一トンネルの北品川立坑からの試験的な掘削は計画通りに進んでいない。また広島高速 5 号線の双葉山トンネルではシールド機がたびたび停止することが起き工事の完成が非常に遅れている。工事方法の適否について、第三者的立場の専門家の検討委員会が組織された場合にはその勧告を受け入れること。
JR東海の回答:情報を集めている。

工法の詳細は検討中

・最初から全断面掘削ではなく、小径のシールド機で先進坑を掘削し地質状況を確認すること。
・東京外環道で東京地裁は気泡剤を使用したシールド機による掘削の中止を命じた。 気泡剤の使用をしないこと。
JR東海の回答:(トンネル工事の契約はしたが)垂直ボーリング調査は18カ所で行ったが、シールド機の仕様が決まっていない。安全な工法を検討中である。

 工事前に地権者の承諾については、不法行為という指摘をしているのに、非常にあいまいな説明です。

 風越山トンネルははじめは NATM工法という計画を、地下水利用者が多いので影響の少ないシールド工法に変更しました。18カ所の垂直ボーリングはリニアの都市部のシールド工事区間に比べるとはるかにきめ細いです。東京外環道の調布市の陥没事故や、リニアの第一首都圏トンネルの北品川立坑からの試験掘削が上手くいっていないことなどから、そうとう慎重になっているのかなという印象も受けます。

 シールド工法はNATM工法に比べ工事費が高いそうです。しかし、地質調査が十分におこなわれ地質に適したシールド機が製作できれば、掘削速度は1月に400mにもなるそうで、NATM工法の100m程度に比べるとはるかに速いです。風越山トンネルのシールド工事区間である上郷工区の全長は3300mなので、10カ月もかけずに掘削できるはずです(工期は予定では65カ月)。しかし、第一首都圏トンネルの北品川工区は半年以上かけても50m程度しか掘れていません。