更新:2022/08/02

「調査掘進」と「初期掘進」

 2021年10月14日にJR東海は北品川工区で「調査掘進」を始めました。『朝日』(2021年10月15日*)は、作業について、同社は「調査掘進」と位置づけ…半年ほどかけて、深さ約90メートルの北品非常口から水平に300メートルほど掘削し、地盤や構造物への影響などを確認すると書いています。

『朝日』2021年10月15日31面 "リニア新幹線 大深度地下に着手 品川 JR東海「調査掘進」"

 『日経クロステック』2021年11月8日 "リニアのシールド機で大深度の試掘始まる" は最初の部分で、シールド機の発進作業に着手したと書いています。

 一般向けの解説書だと思いますが『最新!トンネル工法の "なぜ" を科学する』(大成建設「トンネル」研究プロジェクトチーム著、アーク出版、2014年1月)の「シールド工法の施工フロー」には次のように書いています。

…シールドマシンというのは先端のカッター部分だけをさすのではなく、カッター部分のあとに100メートルくらい台車が何台もついていて、それを含めた総称で呼ばれる。つまり、マシンすべてが最初からトンネルの中に入るわけではなく、掘りながら順次引きずり込んでいくことになる。
 マシンがすべてトンネルに入るまでを初期掘進といい、ゆっくりゆっくり掘り進んでいく。そして全部がトンネル内に収まってから本格掘進が始まる。(p74~75)

 北品川工区の状況についてJR東海はマシンに土が上手く取り込めないといっています。機械の先のほうが地盤に締め付けられて動けなくなった(胴じめ)のではないかという人もいます。ともかく、半年で50mしか掘れなかった。

(2022/08/10 補足)『東京新聞』2022年5月13日 "300メートルの予定がなぜか50メートル止まり 都内リニア工事の「調査掘進」 住民から不安の声も"

『東京新聞』2022年5月27日 "調査掘進が進まぬ理由は…「土をうまくマシン内部に取り込めない」 JR東海社長が説明"

 北品川立坑は直径が40m。シールドマシンの全長が100mなら、約10mを残して立坑と掘削した部分に入っているはずですが、残りはもっと長いのかも知れませんが、先が詰まって残りの部分が上手く入らないというのが現状のようです。

 実は本番で失敗しかけているのに、「調査掘進」といっておけば、「お試し掘り」だから、やり直しができますから大丈夫と、JR東海は説明するつもりでしょうか。

EOF