更新:2022/12/11

静岡県内のリニア計画についての静岡県の基本姿勢

 静岡県議会、12月7日のリニア計画に関連する鈴木県議の一般質問に対する川勝知事の答弁が、フェースブックの「リニアを考えようコミュニティ」に紹介されていました。静岡県の今後の考えかたを示すものと思うので、転載します。

林克
2022年12月10日 土曜日 10:55

リニア工事に対する静岡県の基本姿勢

リニアの投稿が続きますが、今、情勢は一つのヤマ場、頑張り時です。県知事自ら、今のリニアに対する静岡県の考え方が端的に表明されました。運動の側でも記録しておく価値があり、また今の静岡県のリニア問題の到達点を知ってほしいのでアップします。

いつもリニアを取り上げている共産党の鈴木節子議員の県議会質疑が7日にあって、私は傍聴に行けなかったのですが、昨日そのビデオを見せてもらいました。傍聴した人の話によると自民党からのヤジはすさまじいものがあったそうですが、知事はそれに動ぜず淡々と考え方を示していく答弁でした。

以下知事答弁の要約です。

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リニアトンネル工事の着工について、その整備に対する基本姿勢は、大井川の水資源と南アルプスの自然環境との両立を図ることであり、そのため環境影響評価の手続きに基づきJR東海との対話を進めております。大井川の水資源の保全について、昨年12月国の有識者会議の中間報告を取りまとめ、今年4月から県においても専門部会で議論してきているところです。①県外流出量を大井川に戻す方策(いわゆる全量戻し)、②水質への影響、③発生土の処理、どれも重要な論点ではありますが、目下のところいずれもJR東海から説得力ある説明がなされていません。

1. 全量戻しについて

全量戻しについては、先進坑の掘削が終わるまで戻せないということではありますが、JR東海の工法によりますと先進坑と本坑とはほぼ同時に掘られます。その前にまず工事用トンネル4キロ弱、斜坑を2本で約7キロ弱、導水路トンネル11.4キロを掘らなければなりません。これらを全部掘り終わってから先進坑と本坑を掘るということです。

これはトンネルを全部掘り終わってから水を戻すということなので説得力がありません。掘れるかどうかの議論をしているのに、掘ってから戻すというのは話が違うといわなければなりません。

2. 水質への影響について

トンネルを掘った水はきれいな水ではなく、場合によっては要対策土も入っています。ですから水質はよくなるということはなく浄化しても水質は落ちるということです。

3. 発生土の処理について

そして発生土について、推定370万立米のうち360万立米を置く燕沢については、地質学者によれば千枚岳が過去数回崩壊してできた段丘型の沢で、また千枚岳が山体崩壊する可能性があるので適地ではありません。

また要対策土(註:重金属など有害物質を一定以上含む土)を置くと準備される藤島沢は、工事現場から10キロ以上離れておりますので適地ではありません。本県の盛り土条例に照らせば、1000立米以上は許可制になります。要対策土は工事現場で処理される場合は適用除外になりますが、藤島沢はそれに当たりません。

このようなことをいかにクリアするか、十分な説明がなされていません。

南アルプスの視線環境の保全については本年6月、国交省によって環境保全有識者会議が設置されました。これまで関係者へのヒアリングが行われたところです。今後論点整理が行われ、生態系への影響についての適切な管理策等の議論が進展していくものと認識しております。

生態系について、よくなることは考えられず、悪くなることをどう回避するかが論点となります。それを受け入れるかどうかが問題となります。

現時点では、流域のみなさんや県民のみなさんが納得できる段階に至っておりません。2014年の工事実施計画の認可の際、国交大臣は「地元の理解と協力を得ることを確実に実施すべき」と言われたことができておりませんので、本県においては南アルプストンネル工事を認める状況にないということです。