更新:2022/12/27

"「より速く、より便利に」の裏側で リニア沿線住民の証言~長野県編"

 NPO法人の FoEJapan が長野県内のリニア計画に向き合う人たちにインタビューした動画をまとめました。

"「より速く、より便利に」の裏側で リニア沿線住民の証言~長野県編"

 大変よくできているので、解説はいらないと思いますが、以下は、補足的な説明です。

県内最初の工事現場

 大鹿の釜沢は南アルプストンネルの斜坑が2つあり、2008年には調査ボーリングが行われたりして、県内で一番早くからリニアの工事が始まったところ。釜沢地区唯一の平坦部にはトンネル残土の仮置きがされたままで、地区外へ運び出しのための先進坑が貫通したのに仮置き残土の撤去は始まる気配がありません。また、釜沢地区の水道水源は所沢という沢です。JR東海は毎年、環境調査結果を公表しているんですが、長野県の環境影響評価技術委員会は釜沢地区の水道水源の減水の状況が正確にわかるようなデータをだすようJR東海に求めています。水源に影響が出ているようだけれど、正確にわかる数字が示されていないというのです。

認可前のアセスメント対象でなかった送電線工事

 大鹿村の青木では、伊那山地トンネルの青木川斜坑口があって、中央構造線の西側から掘削をするのですが、いったんは名古屋方面に本坑を掘り進め、これから、青木川の直下約30m、またそこは中央構造線そのものなのですが、これから、最難関部分に取りかかろうとしているところ。中央構造線を抜けると大量の蛇紋岩が待っている。また、大鹿村の上蔵地区に計画されている、JR東海のリニアの電力変換施設に電気を送る高圧送電線の工事も行われており、作業に使うヘリコプターの騒音被害が深刻です。うるさいという住民に耳栓を配布するような対応に批判が出ています。中電の新設の変電所や送電線は工事認可まえのアセスメントには含まれていませんでした。

県内最大規模の残土処分地

 豊丘村を流れる虻川の支流の上流では、県内最大規模の130万㎥のトンネル残土の谷埋め処分が始まっています。さらに虻川流域の別の谷でも26万㎥の残土を埋立中です。両方合わせた156万㎥という量は、虻川の治水の計画が想定している土石流災害の規模の15倍にもあたるもの。本当は、長野県の治山治水の現場も困惑しているはずなのです。本山の処分地受入れの決定過程では危険性を心配する意見も強くあったにも関わらず、話し合いを尽くすこともなく強引に決定された経緯もあります。現在工事途中ですが、地形の関係で、非常に不安定な状態で残土が置かれている状況で、地震などあった場合に崩壊すれば工事の作業員が被害にあう心配もあります。

夢だけを語っている段階ではない。目の前に問題が迫っている。なぜ国や村、JR東海のために個人の生活を犠牲にしなければならないのか。その説明がないままに進められることへの違和感が、残土問題にあらわれている(公民館報『とよおか』2017年12月20日)

民主主義に反する

 中間駅ができる飯田市上郷飯沼北条では、12月22日に起工式と安全祈願祭が外部を遮断したかっこうで行われました。移転に応じないという方はルートと駅周辺整備を合わせると複数います。工事の認可や、建設指示を国交省がだす以前に、ルート上の土地所有者や様々の権利を持つ人たちに、事前に相談することは、民主主義にてらせば、また民間会社がやることであれば、当たり前のこと。ところが、環境影響評価の準備書の公表と同じ時に路線が公表されるまでいっさい相談はありませんでした。ことが始まれば「すでに、きまったこと」でJR東海も地元の飯田市も押し通します。このやりかたに、「そこのけ、そこのけ、お馬が通る、JR東海はお殿様だから」とか、赤紙ひとつで有無をいわせず戦場にひっぱりだされた戦前と同じ、リニアのような公共事業は戦争と同じようなものという声も聞かれます。

 今年は大東亜戦争敗戦から77年。戦前のやりかたがゾンビのように生き残っているわけです。そして、そもそも、このリニア、技術の点でも、1980年頃までには、高速の磁気浮上式鉄道として死亡宣告を受けた方式。ゾンビなのです。

筋の良くない技術

 超電導リニアのアイデアは1967年にアメリカの2人の技術者が発表。アメリカでは結局、開発を始めたものの途中で止めているし、ドイツではシーメンス社などがテストコースで試験走行までして研究した結果、技術上のいろいろな欠点から開発を中止。日本航空も超電導方式と常電導方式を比較検討して超電導を採用しませんでした。いまだに開発を続けているのはJR東海だけ。一方、常電導の磁気浮上式は、高速の上海トランスラピッド(2003年~)、中低速では、名古屋のリニモ(2005年~)、韓国の仁川、中国の北京、長沙などで長いところではもう20年近く営業運転をしています。技術的に最適の方法を選択した結果です。その常電導も鉄輪方式の従来の鉄道に比べ最高速度以外で優れる点はなく、逆に分岐装置が鉄道にくらべ問題点が多く劣ります。ドイツがベルリンとハンブルグ間の計画を取りやめるなど、いままでに長距離で幹線となるような路線で採用された例はありません。

開業は絶望的

 多くの方がご存じのように静岡県は南アルプストンネルの「静岡県内」の工事を、大井川の水資源や南アルプスの生態系に悪影響があるとして、その対策が具体的に示され、納得できない限り、工事の着工を認めないといっています。

 静岡県以外の地域でも、工事はかなり遅れているところがあり、2027年の開業の困難は、静岡県だけが原因ではありません。南アルプストンネルの長野工区でも現在の工事のペースからすれば、2035年ころまでに完成させるのがやっとだろうと思います。風越山トンネルの工期は入札前の工期では2027年に間に合わないはずだったのに、契約後は2026年度中に完成するような工期に短縮されています。東京の大深度法の適用を受けたシールド工法のトンネル工事は昨年10月始まってすぐに機械が土に締め付けられて動けなくなり、愛知県でもシールマシンが故障して立坑のなかで立ち往生、同じような工法の東京外環道では調布市内で陥没事故を発生させるなど、大深度で大口径の掘削断面をほるシールド工法の未熟さが明らかになっています。さらに、アメリカ東海岸のリニア計画も環境影響評価段階で頓挫しかけけている状況。

「2027年開業」は空証文、リニアそのものも「絵空事」

 環境影響評価の資料編の工事工程は当初の工事のスケジュールを示したものですが、おそらく、認可の2014年10月以降すぐに着工しても2027年の開業が無理なものだったことは、現状の手続きや工事のペースを見ればあきらかで、それは工事の常識として当初から十分予想できたはずなんですから、「2027年開業」というのは「空証文」に近いものだったといえると思います。最初から、完成させるという熱意が「組織全体としてのJR東海」になかったのだろうと思います。

 東海道線を二重系化するのだというJR東海。リニアのルートも南海トラフ地震の震源域。JR東海の掲げる建設目標はどれも合理性はない。コロナ禍をきっかけにリモートワークやオンライン会議が一般化して、今後直接会って商談や会議をする機会が限られて来ることも明らか。新幹線だのみのJR東海が今後もリニア計画を続けることができるのかという問題があります。さっさと計画を中止すべきです。

リニアは地域づくりに役立たないと住民はわかっている

 JR東海は、最初、中間駅の建設費用は地元が負担するようにといっていました。つまり、中間駅にリニアを停車させてもJR東海にとって利益がない、利用者が少ないと考えていたわけです。長野県は6800人の利用者があるはずと想定しましたが、それは沿線で一番少ない利用者数。別の想定方法では3800人という数字もあります。

 2020年8月の長野県内の世論調査で、リニアに期待するが約3割に対して、期待しないが約7割。最近の豊丘村民に対するアンケートでは、開業後、村民の暮らしが今よりよくなるかの問いでは、『さほど思わない』が55.1%と最も多く、『思う』が23.8%、『思わない』12.9%と続いた」。「さほど思わない」と「思わない」を合わせると68%、と県全体の数字と似たような結果が出ています。住民の多くは期待していません。

 長年、飯田下伊那で地方自治にかかわってこられたある方は、自治体がリニアや三遠南信道に熱をあげるのは、リニアまかせ、三遠南信まかせだと指摘しています。つまり自治体が独自に地域活性化のやり方を考えることができない状態で、外部からの変化に期待するだけということで、これでは、そもそも地域づくりなどできるはずもありません。

 地域活性化でほうほうで話をされている藻谷浩介さんは、新幹線の駅が予定される各地で新幹線の駅が早くできると良いと話すのだそうです。そのこころは、新幹線まかせの地方の行政の姿勢がダメだったことがはっきりするからだといっています。