更新:2024/02/08

分をわきまえて

 島田市の染谷絹代市長が、静岡県知事の川勝平太氏について「分をわきまえて話をすることが、誠実に物事を前進させるために大事なことだ」と述べたそうです。

 まあ、このごろはめったに聞かないお言葉。普通には、パワハラだとか、小姑根性だとかいって、糾弾されるか、無視されるはずです。染谷さんは、沖縄県のデニー知事についても「分をわきまえて」というべきじゃないか…いえるものならいってみろですね。

 結局、もうリニアを建設させてもいいんじゃないか、仕方ないんじゃないかというお立場の方々のお考えというのはこの程度なんだと思います。「分をわきまえて」なんて言わなきゃよかったはず。島田さんのお子さんやお孫さんをあいてにお説教するわけじゃなくて、「公の席で仰ったんです」から…。

『TBS(静岡放送)』2022年5月27日 "「公の席で仰ったんですよね?」島田市長が驚きと戸惑い リニア問題で川勝知事が持論展開(静岡県)"

 リニア建設は、静岡で静岡県がOKしないので工事が遅れていることは事実です。しかし原因はJR東海にあります。

 静岡以外でも、ほとんどの場所で工事は遅れています。沿線のほかの都県や自治体は協力的ですから、原因はこちらもJR東海にあるはずです。簡単にいえば、「2027年開業」なんていうゴールを明確に示せるような計画じゃないのに、ゴールを定めてしまった。そして、その割に、事前の調査や準備が足りなかった。工事が始まる以前から無謀な計画と指摘されていたし、工事が始まってみると、そのことが日々明らかになってきているわけです。

 長野県の一番静岡県に近い部分、南アルプストンネルの長野工区の工事の状況をみて、斜坑の坑口がそれほどの山の中にあるわけでないのに、現場に向かう道路状況が悪かったり、豪雨災害で被害を受けたりするようなことがあります。静岡の場合はもっと、すごい山奥で、当然道路事情も悪いわけです。すんなり着工できていたとしても、2027年の開業は無理だったはずです。

 静岡県は、そうなる前に机上の空論の段階で無理なものなら止めようという考えがあったのかも知れないし、それが環境影響評価制度のそもそもの精神だと思います。他都県の惨憺たる状況をみれば、静岡県の姿勢は大正解というしかないでしょう。染谷さんは現実がわかっていない。

(2024/02/09 補足) 『朝日』2月8日の23面に "政治とカネ\を問う:日本の子ども 政治と深い溝 学校現場 中立性への配慮"(web版)という記事がありました。

 結果的に小中学校で政治については中立性を重視して教育がお行われてきたので、国民の間に中立性という土台、つまり政治的な判断をしない、発言をしないのが無難、美徳という考え方が根付いてしまった。そういうことを永年にわたって学校教育でやってきたので、染谷さんみたいな、恥ずかしい失言を気楽にできる政治家が出てきて不思議はないでしょう。即座に失言ととらえれないマスコミもどうかしていると思います。いくら「トンチのきいた発言」が多い川勝さんでも県知事は県知事。県知事に向かって「分をわきまえよ」といったんですからね。

 染谷さんの失言で思い出したのが、2011年7月、民主党政権の時代だったんですが、当時の松本龍復興担当相が岩手県知事にむかっていきなりサッカーボールを蹴り込んだという事件。それだけでなく、いろいろと問題ある発言をされていたようで、結局、松本さんはすぐに辞任しています。

『朝日』2011年7月4日 "松本復興相、岩手・宮城両知事にきわどい発言連発"
『日経』2011年7月5日 "松本復興相、就任9日目で辞任"

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