更新:2024/02/12

そこまでやるつもりなら、こっちもやれよ

鉄道局長と川勝知事の面会

 2月7日、国土交通省の村田鉄道局長と静岡県の川勝知事が静岡県庁で面談しました。面談の内容の主なところは:

 いくつかのニュースをややちゃんと読めば、または見れば、だいたいそんなことだろうと思います。

 ところが、『テレビ静岡』の9日の記事 "国交省の提案を“拡大解釈” 川勝知事は報道陣に自説を延々と…リニア問題は混迷増すばかり 静岡" は、川勝知事は村田局長の発言(1)を「拡大解釈」したと報道しています。

 この記事では、村田鉄道局長が説明した内容は、国交省が「報告書を踏まえた対策が…水資源の問題、環境保全の両分野について総合的な視点で継続的に確認する新たな体制を準備している」という話は、既に議論の終わった国交省の専門家委員会と、新たなとはいっても国交省が人選する委員会がJR東海の保全対策の効果をモニタリングするというものですから、「屋上屋を重ねる」ようなもの。

 川勝氏は年配者として、「『お~』と唸り、『大変興味深い話』」といったのは、年下の者がしでかしたマヌケに対する思いやりのようなものでしょうか。つまり鉄道局長の提案は実質的に意味はないといえば意味のないことですから、拡大解釈でもなんでもなく、この際、自説を、実は正論なんですが、自説を村田局長に対して述べたにすぎないわけです。

 でこの記事の「今回の面会は、言わずもがなこのことを伝えることが主な趣旨」って書いているんですが、「言わずもがな」の使い方として適切でないような気がしますが、読者の皆さんはどう思いますか。

 一方、工事の進ちょくについて第三者的な委員会がモニターするというアイデアは、たとえば神奈川県の車両基地の問題のようなこともあるわけで、意味がありますね。まあ、JR東海がいろいろなところで公表している進ちょく状況をみても上手くいっていないことは十二分にわかりますが。で、記事は「面会は原則非公開」だったとしているので、記事の執筆者は面会の会場にいなかったのでしょうかという問題。面会後の川勝さんのコメントに対し報道陣から「『村田局長がそう言っていたのか?』と質問があが」ったということは、報道陣は外にいたはず。しかし、鉄道局長の提案に「これには川勝知事も『お~』と唸り、『大変興味深い話』と返した。」と書いているんですから、この記述からは面会を直接聞いていたことになりますね。

 面会は「原則非公開」だったという意味が、非常にあいまいな書き方だと思います。冒頭の挨拶が終わると、報道陣は退出したというのが「原則非公開」の意味なんでしょう。そういう具体的なことがかかれていません。

 だから、記者の「村田局長がそう言っていたのか?」という質問が生きてくるわけです。いかにも川勝氏が村田局長の説明を「拡大解釈」して記者団に話したように取れますね。まあ、この記事でも慎重に読めばそうじゃないことはわかるんですが。この記事は、特に一番最後の「しかし、相手の言うことに聞く耳を持たず、いつ何時どんな場面・局面でも持論や自説を展開し、貫き通そうとする姿勢」という記述なんかを見ると、この記事の執筆の川勝さんに対する悪意が見える感じがしますね。

 『静岡新聞』8日の "静岡県と国 リニア報告書巡り認識隔たり 国交鉄道局長、47項目「全て対策明示」 知事と面談" も、「面談で説明を受けた川勝知事は『第三者(の委員会)だから、全ての人がデータにアクセスできる。高く評価している』とする一方、『(リニア)工事の実施計画の進捗(しんちょく)をモニタリングする委員会かなと受け取った』と報道陣に自説を述べた。」と書いています。次に紹介する『静岡朝日テレビ』のニュースと比べるとハテナという感じというか、ちょっと無理があるんじゃないですかという感じです。

 『静岡朝日テレビ』7日のニュース "リニア】国交省鉄道局長の提案に静岡・川勝知事「大変興味深い話」 予定時間を大幅にオーバーして会談 知事「遅らせるつもりは全くない」" は、面談後の川勝さんへの取材について次のように書いています。

静岡県 川勝平太知事:「委員会のメンバーが明らかになってくると性格が見えてくる。どういう方が座長を務めるのかもある。工事の進捗について第三者的なモニタリングをするということは、大変重要であると思った。特に車両基地の問題がある。2027年までに神奈川に造る車両基地はできるとJR東海が言っているが、それも本当にできるかどうかも分からない。こうしたこともモニタリングしていただくには、第三者がそれなりの権限を持ってやるのがいいと」
Q.神奈川の車両基地の確認もすると村田局長が言った?
A.「いいえ、私が申し上げて関心があることなので、2027年までにできるかどうかということもある」

 このページのニュース動画のこの部分を書き出すと次の通りです。

川勝知事:まあ、委員会のメンバーが明らかになってきますと、なんと言いますか、その性格が見えてくると思いますね。どういう方があのー座長を務められるかもあります。工事の進ちょくについて、えー、やはり、そういう第三者的な委員会がモニターをされると、まあ、そういうことは大変重要であると思いました。特に車両基地の問題がございますね。車両基地、2027年までに神奈川に作る車両基地はできると、いうふうにJR東海さんのほうは言ってられますけれども、まあそれも本当にできるかどうかわからんということもございまして、まあこうしたところをですね、モニタしていただくためには、あのー第三者がそういうそれなりの権限を持ってやるのがいいと
記者:神奈川の車両基地とそのあたりの確認というのも、されるということを村田局長がおっしゃったのですか
川勝知事:いいえ、私が申し上げまして、関心のあることなので、あのそれに2027年までにできるかということもございますはね。

 『静岡朝日テレビ』のニュースでは、川勝さんは、国交省がJR東海の工事中の環境対策の効果をモニタリングする委員会を設けるというなら、面談の中で、工事の進捗状況だってモニタすべきじゃないかと提案とか要望したということが、わかりますね。

 記者団の中に、川勝さんは余計なことを必ずいうという先入観があるんじゃないかと思います。それをネタに妄想をたくましく記事を書いちゃうことあるんじゃないかと思います。これじゃ、困るんですがね。

工事の進ちょくについて、えー、やはり、そういう第三者的な委員会がモニターをされると、まあいうことは大変重要であると思いました。

 というコトバで、鉄道局の説明そのものについて拡大解釈しているわけじゃないことは、わかるわけで、確かめることは必要ですが、川勝さんの話の文脈をきちんとたどれば、いわば別の問題について村田さんに要望したということでしょう。

 そこまでやるつもりなら、こっちもやれよという意味ですね。決して拡大解釈じゃないです。

 ところで、ちょっとびっくり仰天…。

 『静岡第一テレビ』7日 (動画)"【リニア】国交省・鉄道局長が知事と面会…「議論終えた」VS「不十分」の両者“話し合い”やいかに!?(静岡県)"は面会後の川勝さんのコメントについて:

(川勝知事)工事に関わるモニタリングの委員会を独自にもう一回、もう一つ立ち上げるというふうにいわれました。これは人選も含めてお考えになっているということで、私としましては大変これには関心をもった次第でございます。さすが鉄道局、ついにあの本格的に乗り出されたかなと
(アナウンサー)国交省からの提案を評価すると話しました。国が知事に直接説明した今回の面会はリニア問題の進展につながるのでしょうか。

 この記事の文字起こしは、"【リニア】国交省・鉄道局長が知事と面会…「議論終えた」VS「不十分」の両者“話し合い”やいかに!?(静岡県)"。

 『テレビ静岡』の記事の意図にピッタリの発言をしていたのですね。なのに『テレビ静岡』はこの部分の映像を使っていない。総合的に見れば、国交省はJR東海の保全対策の効果についてモニタリングするということを伝え、知事は、それとは別に、いや、それなら、工事についてもモニタリングしたらどうかと要望したのでしょう。それから、国交省の有識者委員会の報告について、鉄道局と静岡県のとらえかたに違いがあるという点ですね。

 川勝さんの発言は、ヒンシュク自在のトンチです。マスコミの記者さんも視聴者、読者も気を付けて。

EOF