更新:2025/07/06
JR東海の土曽川の水質検査は下流側だけ!?
6月9日から、JR東海は、リニアの長野県駅の一部となる土曽川橋梁のP1橋脚のケーソン基礎内部への要対策土の投入を始めました。それだから、飯田市は、7月3日から独自の水質調査を始めました。
- 『南信州』7月4日11面 "要対策土で飯田市水質調査"
- 『信毎』7月4日15面 "飯田市、土曽川で独自の水質調査 要対策土の投入受け"
- 『中日』7月5日16面 "飯田市が独自で 土曽川水質調査 要対策土使用受け"
『中日』の記事の中で、飯田市が行う水質調査の回数を「要対策土を投入している間に1回」と書いていますが、『信毎』が「(飯田市が)独自に行う調査の初回…2回目の調査日は未定」としているのとくいちがっています。
『南信州』が、非常に重要な点を書いています。「JR東海は市との間で結んだ確認書に基づき、要対策土を取り扱う間はヒ素を対象とした水質確認を下流側で週1回実施する」。長県県の助言は、河川の水質検査については上流側と下流側で行うようにといっています。飯田市とJR東海の確認書は別紙3の調査地点の地図の中に、星印で工事箇所の上流側と下流側に赤星印を示していますが、確認書の第4条では、「JR東海は、水質調査とは別に、別紙3の「調査地点:水質(河川水)」のうち下流側の調査地点において、要対策土の取扱中に施工管理の一環として砒素を対象に、河川水の水質確認(以下「河川水質確認」という。)を週1回実施する。」と『南信州』の書いている通りになっています。助言の指摘は、上流側と下流側で同時に調査しないと河川水に含まれるヒ素が工事を原因とするものかどうか分からないので、上下とも同時に調査すべきだといっていたはず。誰が考えても納得できる指摘です。下流側だけではヒ素が工事を原因とするものかどうか簡単には分からないということになります。
長野県のHP、「トンネル工事等における環境保全の計画」の「その他の工事」の「令和9年9月」の欄の右側に "「中央新幹線長野県駅(仮称)新設工事における環境保全について」に対する県の助言と事業者の対応方針(PDF:2KB)" があります。ファイル本文に日付がないのですが、ファイルのプロパティには、2025年3月27日という日付があるので、これが、土曽川橋梁工事関連ではJR東海の最終の対応方針だと思います。
その2ページ目の上から2段目に「水質調査」についての助言に対する「事業者の対応方針」が書かれています。
まず、助言の指摘:
<水質調査>
イ 橋脚基礎部の河川下流側のみではなく、上流側においても同時に河川の水質の調査を行い、水質への影響を的確に把握すること。具体的には、環境影響評価技術委員会において追加するとした内容を確実に実施すること。
事業者=JR東海の対応方針:
令和6年度第6回長野県環境影響評価技術委員会においてご説明したとおり、河川水(水質)の調査は工事の影響が把握できるよう河川上流側に調査地点を追加の上、実施していくこととし、その旨を環境保全計画書に追記します。
となっているので、確認書はちょっとおかしいですね。
「その旨を環境保全計画書に追記します」というのは、3月26日に更新された、「中央新幹線長野県駅(仮称)新設工事における環境保全について」の「58~60ページ」あたりに書かれているような気がするのですが…
確認書の条文を「事業者の対応方針」に合わせて修正したとして:
「JR東海は、水質調査とは別に、別紙3の「調査地点:水質(河川水)」のうち上流側と下流側の調査地点において、要対策土の取扱中に施工管理の一環として砒素を対象に、河川水の水質確認(以下「河川水質確認」という。)を週1回実施する。」
となるはずと、一般的な住民は思うでしょう。
環境保全計画の記述から、どうすれば、上記のような意味に解釈できるのでしょう。もちろん、そうは解釈できないのかも知れない。保全計画の書き方は、少なくとも、「分かりやすく、丁寧な説明とは」いえず「理解ができません」。これでは、認可の時に国交大臣の「住民に丁寧に説明して理解を得ること」という指示に反しています。
『南信州』は、たぶん確認書をみて、調査個所は下流側だけと書いたと思います。われわれは、助言に対する事業者の対応方針を読んで上流側でも調査をするものと、迂闊にも思い込んでいた…。
補足
仲間から、確認書の別紙3の上の表に河川水について要対策土の取扱中に月1回、取扱後に月1回と書いてあると指摘がありました。だから、確認書の第4条は上下ともに行うと読めるとの指摘です。
どうも、この点に疑問を持ったのは私だけのようですが、一般の住民も知るべき内容なのですから、別の文書に書いてあることの他にこれこれと書かれているから全体としてこう理解できると言われても、単純な人間には非常に分かりにくいです。こいう書き方は絶対に許せないし、これで十分理解できるという意見も受け入れがたいです。
官僚主義の言葉遣いに、主権者たる人民がなれる必要はないと思いますね。
新たに確認書をつくるのだから、過去の文書を踏襲するにしても、重複してもよいので、全体を新たな文書として分かりやすく示す、示させるのが行政の住民に対する義務だと思います。
現に説明している内容について、その一部について、以前の文書で説明したと、改めて明確に説明せずにやるのがJR東海のやり口です。例えば、豊丘村本山の活断層の存在の問題について、JR東海は保全計画で、アセスメントで触れたと書いただけで、具体的な場所を示すことは一切しなかったのが、活断層の問題がうやむやになった原因の一つだと思っています。
科学的に間違っている
だいたい、上部は月1回として、各第1週のたとえば水曜日に測定し、下部については各週の水曜日に行うとします。第3週目にヒ素が検出されたとして、それが工事が原因の根拠であると、即座に確実に判断できるかという問題があります。だから同時にやらなければないはず。つまり、上部も週1回行うべきなのです。常に比較ポイントの観測値を比べる、観測というのはそういうものです。
下流部の数値が異常と分かってから上流も調べて確認するということは不可能です。水質検査の結果は即座には分からないのですから、同じ日時に上流側と下流側で水を採取しておけば、結果が出るまでに時間がかかっても、データは同じ日時のデータといえるのです。
もし確認書に別の文書(いくら別紙で表示していたとしても)と合わせて結果として、上部月1回、下部週1回すると理解できたとして、上記のような場合に、上部月1回の測定結果をその月の全日数の基準値とJR東海は認めるものとする、という条項が必要でしょう。
そもそも、週1回という回数が本当に妥当といえるのかどうか。
ケーソン内部にヒ素入り残土を入れることを許してしまった以上は、負けは負けという自覚は持つべきですね。運動の成果で確認書を勝ち取ったなどと思わぬことです。
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