更新:2025/10/31

2025年高森町公民館文化祭でパネル展示

 今年も高森町公民館文化祭でパネル展示をしました。

 全体としては、昨年の展示「くらべてみようリニアのガイドウェイとレール」と同じですが、「要対策土の行く先も決めずに工事を始めたのが、そもそものマチガイ」の部分(「リニアは理に合わない リニアは利に合わない」の前までの部分)を以下の内容に置き換えました。


リニアの長野県駅の工事にヒ素入り残土

 上郷の長野県駅工事でヒ素が含まれるトンネル残土を使う計画は、住民の反対があったし、環境に影響がある事業について審議する長野県環境評価技術委員会でも厳しい批判にさらされたのに、JR東海は、3つのケーソン基礎のうちの1つにヒ素の含まれる残土1000㎥を使いました(2025年6月~7月)。残りの2つの基礎についても数年のうちに、合計で4000㎥を使う予定です。

 JR東海は、2022年秋には、ケーソン工事で現場で出てくる土砂をそのまま使ういっていましたが、20224年2月になって突然計画を変更しました。

 この変更について、長野県環境評価技術委員会は、ヒ素などが含まれる残土が出てくることは、初めからわかったいたはずなのに、なぜ2022年の計画に使うと書かなかったのかとただしています。

 JR東海は、トンネルを掘るところは、山の深いところなので、出ることは分かっていたけれど、どれぐらいでるのか分からなかったので、工事の進んでいくその時その時に使える場所があれば使うという考えでやっていると答えています。

 長野県環境評価技術委員会は、それはJR東海の都合だけで考えていることで、環境を考えるという点では、説明になっていないと指摘しました。

 長野県環境評価技術委員会の審議をもとにJR東海に対して長野県知事は、周囲は人が住んでいる場所だし、水も流れているのだから、最初の計画通り現場の土を使うべきであって、どうしても使うのなら、コンクリートで作った物でも必ず壊れるのだからその時のことをきちんと考えて対策をするよう求めていました。

 コンクリートの寿命は100年。周囲で人の生活は、何百年も、実際に長野県駅のできる場所では縄文時代の土器が発掘されていますから、何千年も続くはずで、環境の観点というのは、そういう時間の流れも考えているわけです。あとは野となれ山となれじゃ困ります。

 最初の計画通りでも工事はできますから、遠方からわざわざヒ素を含む残土を運び、現場の土は別のところへ運ぶという二度手間をしなくても良いのに、わざわざ、お金を余計に使ってまで、こういうことをするのはなぜか? そもそも、ヒ素などを含む残土だけでなく、トンネルの残土がものすごくたくさん出てくることについて、その損得をきちんと考えなかったからです。このことは、計画の初めの段階から、環境大臣はじめいろいろな方面から指摘を受けていたことです。

豊丘村の水源地にヒ素入り残土

 JR東海は今度は、豊丘村の生活用水の水源地にヒ素を含んだ残土を始末しようとしています。その場所は、豊丘村の本山(ほんやま)のジンガ洞。一帯は水源かん養保安林の指定があって、ジンガ洞だけは130万㎥という大量のトンネル残土を置くために指定を解除してもらって現在トンネル残土を運び込んでいます。その一画に15000㎥のヒ素などを含む残土を置こうとしています。

 この本山の残土置場の計画について、JR東海は、2019年の計画の中では、ヒ素などが含まれる有害な残土は持ち込まないと書いていました。ここでも、長野県駅の場合と同じように、今年の5月になって計画を変更して、持ち込むと言い出しました。

 この場所は、もともと豊かな水資源を確保するための水源かん養保安林の指定があった場所で、その指定を解除してもらうために、最初から有害物を含む残土を置くとは書けなかったのでしょう。水の問題は村民の命にかかわる重大な問題です。リニアを進めようとする村は、山の中で出た残土は近くの谷に埋めてダンプカーを里に走らせるなとか、水道水にヒ素がでたら水で薄めれば良いなど、あまりに軽く考えているようです。

 さて、長野県環境評価技術委員会は今回はどんなことをいうのでしょうか? ところが、いまになってもJR東海は計画書の変更について発表をしていません。村民に説明した5月には計画は出来上がっていたはずなのに…。

 リニアはほとんどまっすぐにしか走れないからトンネルが長くなる。トンネルが長くなれば残土も多くなる。有害な残土も増える。理屈は簡単です。リニアができて良いこととか、必要性とかと、こういう悪いことのバランス、損得をきちんと考えるべき時期がきていると思います。

テキサス新幹線が中止に

 去年秋には、アメリカのテキサス新幹線が工事が認可されたのに着工できていないことが報道されました。そして今年4月には、アメリカの連邦鉄道局とアムトラックが事業を計画しているテキサス・セントラル・パートナー社への支援を撤回したので、事実上失敗しました。この計画には、JR東海が関係しており、日本政府も協力していました。

アメリカの超電導リニアが中止に

 JR東海はアメリカへの超電導リニアの輸出を考えていて、現地の会社を通じて、ワシントンDCとメリーランド州ボルチモア市間に超電導リニアを建設する計画を出して、環境影響評価が行われていました。2021年1月に環境影響評価の準備書が公表されたのですが、建設反対や批判の声が大きくて、連邦鉄道局は8月に手続きを一時停止すると宣言しました。それが、この7月末になって、正式に環境影響評価の手続きをこれ以上行わないと連邦鉄道局が発表。こちらも事実上、計画は失敗しました。

 2013年9月、当時のJR東海の山田佳臣社長は、「リニアは絶対にペイしない」と記者会見でいっていました。採算が取れない事業計画には、民間の資金は集まらないのが資本主義社会の原理じゃないかと思います。アメリカも日本も資本主義の社会ですが、なぜ日本でだけできてしまうのか、その不思議についても考えた方がよいかも…

 元会長・須田寛氏のジョーク??

世界でこれだけリニアに投資できる決断が可能なところは、これまでの段階では日本の東海道地域しかなかった…」(『私の鉄道人生"半世紀"』イースト新書Q、2019年3月、p177)

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