大鹿村の準備書説明会 (10月14日)

大鹿村の子供たちは、リニアが通るということをとても嫌がっている

 大鹿村の交流センターで10月14日に開かれたJR東海のリニア新幹線準備書の説明会にいってきました。会場参加者の質問からいくつか紹介します。JR東海は録音をさせません。記憶とメモに基づいて書いたので一部間違いがあるかも知れません。


[ 質問 ] (1)地下水について、トンネルの工事と、トンネルが存在することの影響について、住民意見交換会で影響の予測が難しいので広い範囲で調査をという意見が出た。準備書で、高橋の水文学的手法ということで、図8-2-3-3 が懸念される範囲として示されているが、スライドで示して欲しいが、破砕帯、土かぶりの小さいところで主な調査をするとのことだが、大鹿は破砕帯だらけだから予測範囲すべてで、井戸、水資源の調査を願いたい。調査は所有者、村などが立会いで結果を公表してもらいたい。破砕帯の中なので、当初から水が漏れるということでなく、全線湧水を防止する方法で大鹿村の中では施工してほしい。
(2)小渋川は明かり区間となるが、地下で通過して欲しいという意見があったはず。今回、橋梁で通過する理由は? 近くにある鳶が巣(とびがす)岸壁は(景観上)重要な、そして危険な地形でもある。高さ70m、長さ200mの橋だが、危険な地形を保全するような工法はどのようなものか。また景観の検討を願いたい。
(3)上蔵(わぞ)地区の景観について、大西公園から変電所がみえないので影響なしとするが、送電線や鉄塔が新設されると影響は大きいと思う。送電線はトンネルの中を通すとか、上蔵地区の景観保全のため変電施設の設置面積を減らすとかできないか。変電所、道路計画等問題は山積しているので、住民意見を反映できるような協議の場所を事前に設けてほしい。
[ 回答 ] (1)高橋の水文学的方法は予測検討範囲、トンネルの掘削によりトンネルの中に水を引いてくる範囲を地形の特色などから算出する方法。これを用いて検討範囲を設定し検討し予測結果を準備書に示した。南アルプスの地域は土かぶりは深いところで1400mと他の部分でも深い。地表部分の岩(がん)の部分は風化しているが、深い部分は風化の影響は及んでおらず、岩の状態は劈開面も密着していると想定されるので、トンネル周辺の地下水については部分的にはあるが全体的には影響は小さいと予測する。断層の周辺の破砕帯については湧水が予測されるので先進ボーリング等活用したり、止水工法などの補助工法を用いることで進める。破砕帯近くについてはわからない部分もあるので、水資源について事後調査を予定している。範囲については、今回設定したの予測検討範囲内で位置、頻度については、状況をみながら、専門家の助言を得て決めていきたい。(補足説明) 図については用意していないが準備書にのっている。範囲は線路中心に4〜3km程度の範囲。事後調査の箇所については、役場、地元の方と話し合って決めていく。
(2)(線路の縦断図を示して)。トンネルの計画について、南アルプスの部分では土かぶりを極力少なくしたい。天竜川を地上で通るという設計をすると、小渋川は谷が深いので地上部を渡河せざるを得ない。(補足) 具体的な橋梁の施工については検討中だが、小渋川からも避難坑道、非常口として斜坑を掘り本坑を掘る。本坑の口とかトンネルを利用して橋梁を作って行きたいと考えている。
(3)スライドで示しているように、御覧の通り上蔵地区の右岸東の平地だから大西公園からの景観には影響ない。レイアウトなどの変更等検討していきたい。送電線については、極力景観を考慮したルートについて電力会社と調整しながらというか考慮してもらうようにする。


[ 質問 ] (1)小渋橋から先(註:上の地図では左方向)の残土搬出のルートの環境影響調査は行なったのか。1700台の工事車両の通過による自然環境や生活環境への悪影響は否めない。調査なしで工事着工となれば乱暴である。松川インター・大鹿線、地元では小渋線(註:上図参照)というが、このルートを搬出道とするなら問題が多い。猛禽類、絶滅危惧種であるイヌワシ、クマタカ、ブッポウソウが確認されている。生活者や居住環境に対する影響調査がないように思う。また地域産業になっている観光についての影響調査は今後するのかどうか。このままいろいろな条件が未知数のまま工事がスタートすれば、定住者の流出や観光客の減少がまぬがれないと思う。前回の説明会では、村にとってのメリットは経済的発展と社会性の豊穣と説明されたといわれるが具体性がなく、これからできる産業と既存の産業の経済効果をプラスマイナスをしてという話ではない。既存の産業にも十分な配慮が必要で影響の少ない工事を願いたい。観光客の使う道また生活道である小渋線を使われたくない。豊丘から掘ってきたトンネルを残土の搬出ルートにつかえないのか?
(2)予測検討範囲外の鹿塩温泉や小渋温泉については、大鹿村からの意見が出されているのに準備書に反映されていないのはなぜなのか
[ 回答 ] (1)大鹿からの残土は約300万立方メートルある。どこに運ぶかについては、県を窓口に関係自治体に調整をお願いしている状態で決まっていない。道路は国道152号線、県道59号線、22号線を使うだろうと考えている。主体は県道59号線になると考えるが全線の道幅が広くはないことは認識している。管理者と調整して道路対策を検討したい。主要な道路については調査したので影響はない。(会場から????の声) (補足説明) 59号を通る車の台数は最大で想定して1700台としている。59号に出る手前で騒音、振動は予測しているので、59号の工事車両通行による影響はないという意味である。ブッポウソウについては絶滅危惧種ということで調査はしたが、希少ということで、準備所の中では場所などは明らかにはしていない。一部影響があると書いている。観光については、アセスの直接の評価項目ではない。景観資源であるとか、人と自然とふれあいの場ということで公園とかキャンプ場をあげている。59号について、工事で使うが、開通後には、リニアで訪れた客が車に乗り換えて大鹿に訪れるメインのルートになるので、県の将来の整備にについても聞きたいと考えており、大鹿、中川とも改良について話し合いたい。豊丘からのトンネル利用の残土搬出は考えていない。南アルプスのトンネルは時間がかかるので直ちに取り掛かりたいし、豊丘からのトンネルが大鹿にとどくのも時間がかかる。大鹿に残土の仮置場はないので、豊丘からのトンネル利用の残土搬出は考えていない。
(2)鹿塩温泉は、(図を示し)断面でみたトンネルとの標高差と距離を見ると、高さ関係で塩川に比べトンネルが若干高く距離も離れているので影響ないと考える。小渋温泉については、検討範囲を広めにとってもその中に入らないので準備書では取り上げなかったが、事後調査の中で箇所、頻度などは、専門家や意見や地元の方々の話も聞き決めていきたい。

[ 質問 ] (質問者は隣村、中川村の村長) (1)中川村では、説明会の予定も、準備書の送付もない。関係市町村の一覧にもない。中川村は環境影響を受けないと安心していたが、残土は、ほとんどは中川村を通る。中川では調査無しで、やったもんがちであってよいというのか。
(2)騒音基準を70デシベルとしているが、こちらは静かな環境で住民は暮らしているが、10年以上にわたり、朝から夕方までガーガーと騒がしいということが、国が一律に定めた基準内でよければということは、ちょっとちがう、国が定めたものだからOKじゃんというのは如何なものかと思います。(会場から拍手)
(3)事後調査をして、想定外のことがおこった場合にはどういう対応をするのか?工事中は継続的定期的に調査を繰り返して、何かの基準を超えてしまったときには改善されるまで工事をとめるというようなことをお約束願えるかどうか? (会場から拍手)
[ 回答 ] (1)環境影響評価の方法書を公表し、路線をだした。今回はリニアの直接的な事業について影響について評価している。59号の改良については道路事業になるので本体事業とは切り離してアセスをやっている点を理解願いたい。道路を改良することについては工事計画の中で説明するつもり。中川村を通ることは承知している。具体的な工事計画の中で中川村には説明していく。
(2)騒音の基準は国の基準に基づいている。70デシベルに対し大鹿では69デシベルで、常に延々と続くというものではない。また、事業者の実行可能な範囲で低減すべきという観点で評価している。環境保全措置ということで工事用車両の走行であるとか、工事を平準化するとか、運行計画を適切に行なう、ゆっくりとしかし数珠繋ぎにならないようにすることで少しでも影響を少なくする努力をしますので理解願いたい。
(3)今回の環境影響評価の結果について、総じてないとか影響は小さいとしているが、部分的に環境に影響があるときちんとうたっている。影響をできる限り小さくするスタンスで、何か起きた時には地元の方の生活の確保第一で取り組み工事との因果関係を調査し関係あればすぐに対応するつもり。

[ 質問 ] (1)猛禽類について、研究をしている。大鹿から南木曽にかけてクマタカが9ペア、イヌワシが1ペアいる。クマタカの5ペアが影響をうける。3〜2ペアが工事によりいなくなると予想される。非常口が巣に近い。最短500mで1.2kmとか、非常口が営巣地の真下にあるところもある。準備書には影響が少ないとするがなぜか。
(2)イヌワシの巣が遠いとするが、行動圏が5〜7kmあり、そのなかにいくつかの狩場がある。工事で影響される狩場がある。工事中もモニタリングするというが影響のあった場合どういうことをするのか。
[ 回答 ] (1)中には生息環境が確保されないおそれがある。環境省のマニュアルに基づき調査した。専門家の意見も踏まえて、何箇所かについては保全されないと予測している。
(2)注目すべきことはモニタリングしていくが、状況により、地域のよくご存知の方の意見をいただきながら適切な対応をはかっていく。

[ 質問 ] (中川村村議)(1)6月12日の飯田の説明会で質問した。具体的内容は準備書段階でするときいた。具体的な運搬ルートと、改良の必要なところの検討がないか、少ないと感じる。松川インターまで22kmのうち大鹿分は8km、中川が10km余の道路を使用することになり、環境悪化、生活面への悪影響が予想される。工事は24時間操業か、運搬は夜間も行なうのか。
(2)道路の拡幅、改修について考えると、3年後に工事開始として期間的には対応できる期間ではない。県と打ち合わせて最大限必要な部分についての改良を即時行なわないと地元としては受け入れがたい。
(3)住民との打ち合わせが早急に行なわれるのかどうか。小渋ダムから下については河川敷を利用したらどうか。
[ 回答 ] (1)トンネル工事は24時間、橋梁や変電所についてはほとんど昼間(8時間、8時〜17時)。時間は地元と調整するつもり。通勤、通学、デーサービスへの送迎時間などについても考慮する。
(3)県とはいち早く調整したいと考える。河川敷については国交省と調整したいと考える。

[ 質問 ] (1)南アルプスの土かぶりを浅くしたい理由は、コストなのか工期なのか?
(2)上蔵の変電施設は大西公園からみえないのは確かだが、高圧鉄塔が建つのは問題。電力会社との話とするが、景観は環境評価の大きな一つの対象と思う。その工事鉄塔の電気がどこからどこからくるのか、山梨の実験線については皆さんご承知とは思うが、どういうルートで来るのかの説明はここですべきだと思う。
(3)2027年の開業ありきで話が進んでいるのではないか?リニアをどうしても通したいのであれば、もっと丁寧な議論をすべきではないのか? そうすれば賛成多数の形で計画が進められることもあるかもしれない。(七つの子のチャイム鳴る)

注: 「土(ど)かぶり」はトンネルの上にかぶさっている岩や土の厚さ。

[ 回答 ] (1)土かぶりが深いほど地圧をトンネルが受けるので、施工性など考え土かぶりを薄くするように考えている。よって縦断線形は示したとおりになる。
(2)送電ルートについて景観の配慮を電力会社に伝えるつもり。どこから電気を引くかについては、現時点では知りえない。
(3)2027年を目ざしているが手順を省いているわけではない。工事の認可申請するが、認可の日程は役所が相手でいつかはわからない。認可後もすぐはじめるわけでなく、事業にかかわる説明会をしたのち、測量にはいったり、用地にかかわる説明会をしたりがある。工事に本当に取り掛かる前には工事説明会があるので、これからまだ地元の方に説明していく場面は多々ある。別に省略したりしているわけではない。

注: 「縦断線形」地形の断面に投影した線路の形状


[ 質問 ] 1700台の工事車両が国道を通過することが住民に影響ないとのことだが、本当にそうか。小学生の通学路が国道を横切るが時間の制限だけで対応できるか疑問だ。子供に対する100パーセントの安全を確保してもらいたい。保護者にも丁寧な説明を。大鹿村の子供たちは、リニアが通るということをとても嫌がっている。静かな大鹿のままではなぜいけないのかと。2年前に正式にリニアが通ることが決定した時に、子供たちのなかから赤石岳にあなあけるなんてバチがあたるという言葉がもれた。朝な夕な南アルプスを仰ぎ見て、その雄大な姿に敬仰の念をはぐくむべき子供たちのアルプスといえる、すばらしいことだと思いました。この子供たち誰ひとり犠牲にならないように子供たちに100パーセントの安全を約束してほしい。国道通過はやめて取り付け道路をつくってほしい。子供を巻き込む大型車による事故は悲惨なものだからそれだけは避けて欲しい。
[ 回答 ] 台数としては1日1700台として予測評価している。質問の主旨は交通安全的な面を含めどうなのかということと思う。具体的なものは、工事計画の中で請負業者にたいして安全第一ということで指導・教育をしていく。影響ないというのは環境評価面でいった。ルートが国道だけになるが、村と調整し代替ルートが可能であれば含めて調整したいと考える。(補足説明) 交通安全については保護者に説明をする機会を設ける。

[ 質問 ] 新聞に土砂類の運搬は既設の道路を使うことに付き管理者と協議すると書かれていた。県と協議はしたのか、今後どう協議を進めていくのか。1700台でなくても、下市場を1日300台、500台でも通ることになれば、年寄りは外へでることもできないが、どんな配慮をしてくれるか。

注: 「下市場」は大鹿村大河原の中心部

[ 回答 ] 県とは、これからすぐに協議をしていく。具体的な協議はこれから。下市場の目の前の国道だけを通るのか迂回路的なものを設けるのかは管理者と協議していく。今回のアクセスは、一つの道について、一番影響が大きくなる全台数が通るという前提でやっているの点を理解願いたい。

[ 質問 ] 環境影響に特化した説明会とは思うが、われわれの住環境とか観光の環境については配慮がされていない。今後、この点をわれわれとともに考えていただけたらと思う。JR側の一方的な考えを説明するだけで住民の視線に立っていないように思う。一緒に考えるという姿勢をみせてもらいたい。
[ 回答 ] 環境評価についてJRの見解を述べさせてもらう機会であることはご理解願いたい。一方、今回は、具体的に初めてルート・設備等の場所を発表した。次に考えるのは具体的な工事計画のことで、これはこれからのことであり、これらについては、地元の住民の理解を得られない限りは工事はできないと考えている。理解をいただけるような形で進めていく。

[ 質問 ] キャンプ場や公園のアセスをしたと答えたが、観光客の求めているのものはキャンプ場や公園ではない。59号線ならこれからの紅葉とか、新緑の季節に152号線の地蔵峠に抜けるなど、景観を求めてきているのが主力と思う。そちらの方の配慮はいかがか。山梨では水枯れで魚がいなくなったと聞く。その対策について大月の例では、JRの代替の対策の補償は30年で切れるとのことだが、決まりはどうなっているのか。工事中、完成後に水害、地震が起きた場合、どういうことを予測しているのか聞かせて欲しい。
[ 回答 ] 観光については、交通量が一番にかかわってくると思う。工事計画の中で、観光客という観点で調べていくつもり。補償については基準がある。代替水源設備を作るが、耐用年数30年を見積もって維持費用との総額を一括で支払っている。過去の水害や現状の河川計画などをみて施工計画をつくる。工事用の仮設物についても耐震基準があるので遵守してやっていく。

[ 質問 ] 電磁波の影響は複雑すぎて現状ではわからないが、人体にたいして送電線の影響もあると考えられる。品川から名古屋間の変電所の数はいくつか。リニアは多くの問題を背負っている。大鹿村民は賛成といった覚えはないから、受け入れがたい工事である。飯田市では遺跡群や水源を避けたというが、現に1000人からの住民が暮らしている静かなで観光が主力の大鹿で10年以上も工事を行なわれることは耐えがたいので、ルートを少しずらして変更して大鹿村での工事はやめてもらえないか。
[ 回答 ] 変電所の数は10箇所で、長野県では2か所。晴天の霹靂と考える方が多いと考えている。いろいろな場面で説明し理解を求めようと思う。飯田に拠点があるので、大鹿からは遠いが、何についてでも問い合わせしてほしい。

 質問希望者が多く終了予定時間になっても多くの挙手があり、延長して欲しいという声がでて、一部の参加者とJR東海側でもめるという一幕もありました。

(2013/10/16)

大鹿村の議員さんのブログに同じ説明会の質疑の概要がのっています。

(2013/10/16)

 説明会終了時のできごとについては、次のページに詳しくのっています。