準備書に対する意見についてのJR東海の見解

附:大鹿村での工事用道路新設について

 リニア新幹線の環境影響評価の準備書に対して出されたわれわれの意見の「概要」とそれに対するJR東海の見解が関係自治体に送付されたそうです。

 送付とはいっても、例えば飯田市などにはJR東海の社員が直接届けたようです。

 報道された範囲では、準備書説明会での回答と同じことを繰り返しているように思いました。繰り返しているといえば、中川村の村長さんにあれほどいわれたのに・・・

JRが見解を送付した県内市町村は、飯田市、下伊那郡高森町、阿智村、喬木村、豊丘村、大鹿村、木曽郡南木曽町。意見書を出した上伊那郡中川村は含まれなかった。(信濃毎日)

 今後の長野県の対応は、

長野県は、見解などを有識者でつくる県環境影響評価技術委員会に報告するとともに、見解に対する意見を県内の関係7市町村などに照会。知事意見をまとめ、2014年3月25日までにJR東海に伝える。(信濃毎日)

(参考) 静岡県分については、「準備書意見へのトンチンカンな見解」(リニア中央新幹線 南アルプスに穴を開けちゃっていいのかい? 2013年11月25日)に書かれています。


 非常に問題の多い大鹿の残土運搬ルートについて、報道各社の記事を読んでいてちょっと混乱してしまったので、準備書ほかを読み直して見ました。

 JR東海は、準備書の本編で文化財に関連して次のようにいっています。

福徳寺本堂は、工事用道路を新たに設置し、指定等文化財の近傍を回避する道路を設定するため、文化財への影響はないと予測する。

 上蔵集落を避けるということです。地図が示されています。黒い丸印の並んでいるのが新たに建設するといっている工事用道路です。この図では分りにくいですが、発電所の導水パイプの上を2回ほど通過します。


 準備書にも示されているように土砂災害の危険のある場所です。


 現地の風景。


写真1 左の鉄塔付近から発電所付近までの場所に変電施設も予定されている(2013年11月撮影)

"「美しい村」の議員日記" のこの記事によれば、大鹿村の第1回目の準備書説明会で、住民から「上蔵、釜沢は景観上大切なところなので絶対守ってほしい。小渋川沿いに工事用道路をトンネルで造ってもいいのではないか。」という質問があって、JR東海は「小渋川は急峻で工事用道路の設置は困難。既存の道路を改修して工事用車両が運行できるようにしたい。」と答えています。


写真2 上蔵(2013年11月撮影) 既存の道路はこの集落内の道路だけ

写真3 上蔵(2013年11月撮影)


 各紙の記述。

下伊那郡大鹿村が村内の急傾斜地に予定されている工事用道路の建設を見直すよう求めたのに対し、同社は見解で「村の考えを聞きながら代替案についても検討する」と回答した。(信濃毎日)
工事用車両の通行については「道路が狭く不安だ」「生活に支障をきたす」などの意見が出た。同社は待避所の設置や部分的な拡幅を実施すると説明。大鹿村で計画する工事用道路の設置では、意見で「急傾斜地で災害危険性が高い」と指摘があり、同社は「技術的に可能だが、大鹿村の考えも伺い代替案も検討する」と変更に含みを持たせた。(毎日新聞)
大鹿村などで不安視されている残土運搬の車両による住民生活への影響については、既存道路に待避所や安全設備を設けるほか、車両の運行時間を分散させるなどの対策をとる考えを示した。・・・大鹿村大河原上蔵地区では、工事用道路を新設する計画だが、村の考えを伺い、代替案も検討する。(中日新聞)
大鹿村内で不安の声が強い残土搬出については、工事用道路の新設などで通行台数や通行期間の最小化を図る考えを明示。・・・大鹿村内の工事用車両の通行については「松川インター大鹿線が中心になる。村内では国道152号、赤石岳公園線などを活用する」とし・・・上蔵地区の生活環境に対する影響を低減させる目的で新設する工事用道路については、急峻な地形を懸念する同村からの意見に対して「急峻な地形でも工事用道路の設置は技術的に可能と考えている」と回答。「村の考えも聞きながら代替案について検討する」と加え、柔軟な姿勢も示した。・・・大鹿村の長尾勝副村長は「上蔵地区の工事用道路計画の見直しを要望したのに対し、代替案について検討する考えが示された。村としても、地元の意見を聞きながらJRと詰めていきたい」と強調。

 大鹿村が準備書に対してJR東海に出した意見書は次のようにいっています。

国重要文化財福徳寺と上蔵集落を通行しない対策として、工事用道路の新設が計画されているが、計画地は急傾斜地であるため、森林の皆伐による景観破壊と土砂崩壊などの災害が発生する危険性が高い。また、貴重な動物の生息環境が保全されない可能性が指摘されている。
評価書において、上蔵地区の工事用道路計画を見直し、工事計画と運行ルートを再検討した結果を明記すること。( 中央新幹線(東京都・名古屋市間)環境影響評価準備書に対する意見)

(2013/11/27)

(補足 2013/12/11) このページで参照した記事はすべて電子版です。信濃毎日新聞本紙の11月2日付けがJR東海が残土運搬車の上蔵集落内の通過を回避するために新たに設置しようとしている工事用道路について詳しい説明記事がありました(『環境不安 大鹿から異論 、リニア工事用道路 建設見直し要請』)。次のように書いています。

(大鹿村の)意見書では村は既存道路の活用を求めているが、作業用トンネルの出入り口から県道赤石岳公園線につながる既存道路は上蔵集落内を通っており、村も対案をもっているわけではない。他に工事用道路の適地があれば ― と含みを持たせて「見直し」との表現を使ったとする。だが、周囲も同様の地形のため、上蔵集落を回避する工事用道路の建設は不可能とみる。工事計画と村の要望を両立させるには、県を含めて知恵を絞っていく必要がある。

 代替案を検討するというのがJRの見解ですが、『信濃毎日』の11月2日の記事に従えば、普通にいえば、当面は大鹿村としてもJR東海としても代替案はないということで、釜沢の2つの斜坑口からの掘削は不可能ということだと思います。