更新:2019/05/27

「かわせみの家」の取り壊し


 高森町のカヌーの発祥の地は市田港です。1970年代の初めから多くの人がこの付近でカヌー遊びをするようになりました。その市田港の「かわせみの家」の取り壊しが5月初めから始まりました。「かわせみの家」は別名カヌーハウス。カヌーの保管や、トイレ、シャワーなどありカヌー大会でも使います。また住民の集会所、福祉関係のNPO法人の活動拠点としても有効利用されてきました。元は天竜舟下り観光の案内所でした。上流約2.3kmの田沢川の出口付近に2027年(!)国体のカヌー競技会場を誘致すること、国交省の防災拠点施設と隣接して「川の駅」をつくる構想があるらしく、カヌー遊びの拠点はそちらに移すという話なのです。

川の駅はまだ構想段階


川の駅予定地の現状。松川ダムの堆砂が仮置きされています()。何のそれらしい施設もできているわけではありません。

 それらの施設の整備が整ってから取り壊せばよいのに、もう壊しちゃっているのです。 8月終わりのカヌー大会はどうするのでしょうか? 高森町が、後先考えずに壊した理由はリニアのガイドウェイ組立ヤードを下市田河原に誘致したからです。工事車両の通行の便宜のために町道を拡幅するのに邪魔だから壊すというのが本当の理由です。そして、この拡幅工事も予算の許す範囲で小刻みにやるというのですから、開いた口がふさがりません。そんなものはJR東海に金を出させてささっとやってしまえば良いのにそういう悪知恵も働かない。

 地元の住民は、集落内の生活道路に大量の車を誘導する道路拡幅、ラウンドアバウトの設置など、安全上も、便利の上でもうれしい話だとは思っていません。

 このサイトで何度か書いてきましたが、JR東海は、「かわせみの家」を含むこの一帯を「天竜川親水施設」と呼び環境影響評価を行っています。リニアの工事車両は500m離れた国道153号線を使うので「天竜川親水施設」の利用には影響はないと結論していました。拡幅するという町道は「天竜川親水施設」のすぐ外側の道路で、天竜川にアクセスするにはこの道路を通らざるをえません。JR東海はこの町道を使わせてくれとは本来言えないはずです。

 町長も、町職員も、町議会議員も環境アセスメントを読んでいないと思います。こまったものです。

 「かわせみの家」の前の桜は今年も咲きました。桜の開花中に雪が降るということもありました。その時撮影した写真がこちらにあります。

 5月26日の『中日』の「視座:『時』が生み出す豊かさ」で哲学者の内山節さんは、「現在多くの人々が求めている豊かな社会とか幸せな暮らしといったものは、蓄積に支えられたものが多いのである」といっています。決して古く価値のある文化財とは言えないかも知れないけれど周囲の住民が惜しむものは蓄積なんだと思います。景観というのは、創るのではなく、基本は守るものだと思います。

※ 関係ない話ですが、このダムの堆砂をリニアトンネルの残土だと思っている方が結構いるようです。それほど情報が知らされていないのだと思います。ここにあるのは松川ダムに貯まった砂です。リニアトンネルの工事はそんなに進んじゃいません。