更新:2020/06/17

ウソも2回言えば… 「世界最速を実現した日本の超電導リニア」

 超電導リニアの動画のご紹介。「WiLL増刊号」というチャンネル。内容としてはJR東海の寺井さんという方が説明されているので、「JR東海さんの公式の見解」ととらえて良いと思います。アップロードされたのは、ごく最近、2020年6月14日 です。

 まあ、ちょっとハテナと思う点もないではないけれど。

[ 0分55秒 ] 台風とか地震に対してシステムとして非常に強いものに仕上げることができるので超電導の電磁誘導方式を採用していると説明しているんですが、なぜできるのかという説明がないですね。

[ 1分27秒 ] 超電導を輸送機関、乗り物に活用しようと考え出したのは日本が最初で、今この技術を持っているのは日本だけと言っています。実は、1966年にアメリカ人のパウエル氏とダンビー氏の発案で、日本が超電導方式の開発を始めたのは1970年からです。ウソを言ってはいけません。

参考ページ:超電導リニアは日本独自のアイデア?!

超電導磁石を用いた磁気による浮上・案内の方式は、1966年にアメリカのブルックヘブン国立研究所のJ・R・パウエルとG・R・ダンビーの二人が米国機械学会に発表し(リニアシンクロナスモーターによる推進の組み合わせは1969年に発表)、その後、各種模型による実験がなされたが大きな進展はなかった。当時の国鉄は、このパウエルとダンビーの方式に着目し、超電導リニアの開発を進めることとした(『ここまで来た!リニアモーターカー』鉄道総合技術研究所、2006年、p156~p157)

[ 3分48秒 ] 画面右下に注目。上海トランスラピッドの映像は「スーツ交通チャンネル」提供!!

[ 5分6秒 ] 東大の大崎先生がバネで浮いているけれどフワフワじゃないよなんてのもちょっと注目。

[ 6分27秒 ] 超電導磁石と電磁石の比較で、同じ磁力を得るのに電磁石だと巨大なものになるという説明。列車を浮かせるには、トランスラピッドやリニモを見れば、鉄心にエナメル線を巻いた電磁石で十分間に合ったし、超電導方式より少ない電力で十分だったわけで、意味のない比較です。

[ 9分42秒 ] 超電導リニアの推進、浮上、案内の元になる物理法則は電磁誘導で、レンツの法則で説明できるという点はその通り。

image

[ 10分04秒 ] で出てくる「リニア鉄道館」の展示品の実験装置に注目。一つは車体の模型の後ろ壁際にタイコ型の重りがついている点。重りと模型とはほとんどバランスがとれた状態になっていて、模型の方がごくわずか重くしてある。だから誘導で生じる磁力が本当にごくわずかでも模型は浮き上がります。つまり実物でこれを実現するには超電導磁石でないと無理ということ。もう一つは、浮上してからしばらくは上下に揺れているという点。バネで支えるのと同じだということです。高速走行時に安全上問題になる振動をどう解決するかという課題があるはず。

2020年3月にJR東海は、小牧研究施設に設置した「リニア走行試験装置」で「乗り心地向上確認試験」や「超電導磁石の長期耐久性試験」などの検証を開始(『鉄道ファン railf.jp』"https://railf.jp/news/2020/03/10/181000.html")。ドイツが超電導について「すべての考えられる運転条件の下で、良好な乗り心地が得られる技術問題が解決されていない」(*)、日本航空の開発担当者は「高速における動安定など今後解明せねばならぬ多くの点がある」(**)と指摘しています(*大塚邦夫著『西独トランスラピッドMaglev―世界のリニアモーターカー』、**「HSSTの開発について」。)。どちらも走行時の振動に関わる問題。いまごろになって走行試験装置での実験を始めた理由は?

[ 10分50秒 ] 宮崎実験線の時代は線路の下面に浮上コイルを敷き詰めて反発力で浮かしていたと説明しています。この方式は効率が良くないので、山梨では側壁の浮上コイルで持ち上げる方式に変えたと言っています。それでも、トランスラピッドより電気はいる。

[ 11分13秒 ] 案内の仕組みの説明のアニメ。車体が左右にブレると中心に戻るのですが、実はこれも1回で戻るんではなく、徐々に振れが少なくなっていくはずと予想できませんか。「磁気バネ」で支えているんですから(「リニア鉄道館」の説明)。

[ 12分29秒 ] の画面右下に「※10㎝浮上は高速走行時のみ」って書いてあるんですが、どういう意味なんでしょうか。ちと分かりません。

[ 13分16秒 ] の画面で、ガイドウェイ側のコイルのピッチと車体側のコイルのピッチが少し違っているのに気が付きましたか? これまでJR東海が説明会などで配布した資料では、ガイドウエィ側も車体側もコイルのピッチが同じでした。比率の値は別として、この動画の方が正しいはずです。

[ 13分56秒 ] 列車の位置を浮上コイルの数を数えることで把握していると言っています。

[ 14分08秒 ] この動画が制作されたのは2019年ですが、ニオブチタン合金の超電導磁石を使っており液体ヘリウムが必要と言っています。2005年に高温超電導を利用した最初の走行試験を行ったはずなのに(山梨県リニア見学センター:リニアの歴史)。

[ 14分57秒 ] クエンチの説明でネオジウム磁石を敷き詰めた超電導コースター上で超電導材料の浮上体がタレルのはちょっと違うんじゃないかという気がしますね。マイスナー効果とピン止め効果で浮いてたんですから。超電導状態でなくなるという意味では同じなんですが、クエンチで永久電流が止まるのとは違う。

[ 19分05秒 ] 「耳ツン」対策の話をしているんですが、最近になっても、体験試乗で「耳ツン」が起きる人がいるというのはどういうことなのでしょうか。寺井さんの説明は解決できた問題みたいに受け取れるんですが…。 ⇒ 『東洋経済オンライン』2020/03/30 "「完成度8割」、新型リニア車両「残る2割」は何か"

[ 21分21秒 ] 乗車降車時にボーディングブリッジ式の渡り廊下を使うのですが、この部分では、その仕組みがよく分かります。非常に面倒なことをしています。強力な磁界が人体に悪影響があるのは事実のようです。

[ 21分32秒 ] 超電導磁石(台車)と車体の間のカバーがつぶれちゃったみたいな感じに見えますね。これが通常の状態とは思えないんですが。

[ 23分57秒 ] 超電導リニアは災害にも強いという技術的特徴を兼ね備えているとナレーションは語っているんですが、続いて出てくる東大の大崎先生は、なぜ強いのかという点について何も説明していません。

[ 24分48秒 ] 寺井さんは、超電導を輸送機関、乗り物に活用しようと考えたのは日本が最初で、今この技術を持っているのは日本だけと言っています。このウソ2回目です。ナチスの宣伝相ゲッベルスは「十分に大きなウソをしばしば繰り返し話せば、しまいには人々はそれを信じるだろう」と言ったそうです。大勢の人たちがこのビデオを見るというのも似たようなもので、大勢の人がそう信じこむことで真実になる可能性もあるわけで、よさそうな方なのに、寺井さんの説明は、悪質です。

 ヘリウムいらずの高温常電導の話が出てこない点、誘導給電方式の話も出てこないのは物足りないですね。リニアの技術開発は実は行き詰ってしまっているのではないかという印象を受けます。

 最近、静岡でリニア工事が着工できないことについて動画を投稿して、かなりひんしゅくをかった「スーツ交通チャンネル」から動画を借りてるなんてのも、ちょっと、もう少し金かけたらよかったのにと悔やまれます。