更新:2023/02/28、補足03/01

アメリカのリニア計画はどうなった?

突っ込みが足りない報道

 JR東海の柘植康英会長がニューヨークで開かれたリニアのPRイベントで講演をしたそうです。

『中日』24日3面 "リニアの効果 米でも JR東海会長 NYで講演"、『信毎』24日6面 "JR東海会長、米でリニア売り込み"

 ワシントンDCとボルチモアを結ぶワシントン・ボルチモア・ラピッド・レール社(WBRR社)による超電導リニア計画は2021年8月25日に連邦鉄道局が環境影響評価の手続きを中断した以後は進展がない状況です。またWBRR社はルート上の土地の購入に失敗(他業者が居住地区として開発するために購入)しています。

 新聞記事は『中日』のほうが詳しいんですが、環境影響評価の現状とか用地取得に失敗した問題(WBRR社が控訴したはず)など、いっさい書いていません。

 他の報道機関のこのニュースもにたりよったり:

〇『名古屋テレビ』23日 "JR東海・柘植康英会長が米で超電導リニアをPR ワシントン~ニューヨークを1時間で"(動画)。

〇『ANN NEWS』23日 "JR東海会長NYで講演リニアの利点訴える NY-ワシントン間1時間で結ぶ計画(2023年2月23日)"。

 日本でも南アルプストンネルの静岡工区(8.9㎞)が大井川の水の問題で未着工なほか、各地で工事が難航しているところがあり、沿線の地元では、少なくとも飯田下伊那では、本当に完成するのだろうかという声も出始めています。そもそも、環境影響評(2014年)時点で公表されていた工事工程表はそうとうに無理があったといえそうです(*)。

 アメリカのリニアが上手くいっていないということは、リニアの反対運動の中では常識です。報道関係者が知らないはずはなく、その点について「なぜ」報道しないのかと思います。

 2月8日に『中日』は、 "JR東海 鉄道依存脱却へ 収益多角化目指し10年計画"、"新幹線頼み タガ外そう JR東海 中村副社長に聞く 不動産に力 駅ビル生活密着" という二つの記事をのせていました。これらの記事の中ではリニアについてまったく触れていません。『朝日』は9日に "脱・新幹線依存へ、JR東海グループに指針 「10年で利益倍増」(web版)" という記事をのせ、「コロナ禍の影響で21年3月期から最終的なもうけを示す純損益が2年続けて赤字だった。23年3月期は黒字になりそうだが、コロナ禍前の4割に満たない見通しだ。建設中のリニア中央新幹線の東京・品川―名古屋間も、27年の開業が困難になっていて、事業費の見込みも以前より1・5兆円ほど多い約7兆円にふくらんでいる。」と書いているんですが、JR東海が長期ビジョンのなかでリニアの扱いについてどう考えているのかという「事実」について伝えているわけじゃありません。物足りない記事です。突っ込みが足りないのは「なぜ」なのか。

* たとえば、静岡知事が指摘した神奈川県内に予定される関東車両基地や、南アルプストンネル長野工区(8.4㎞)。山梨工区(7.7㎞)などは、実は認可前の2008年から事実上、斜坑の掘削を開始していたわけで、15年かけて、それでもようやく静岡県境まであと約1㎞という状況です。飯田市内の風越山トンネルはシールド機を発進させる坑口が竜西一貫水路(農業用水)を横切るのでバイパス工事(仮の水路、サイホン)が必要なんですが、しかもこの工事は冬季しかできないので年単位で遅れるのですが、用水を管理している組合との間で協議が進んでおらず、実際にいつ着工できるのかは不明なだけでなく、シールド区間(3.3㎞)の工期について入札見込みの時点では80カ月だったのに契約段階では65カ月と短くなっており、2027年開業につじつまを合わせようとしたのではないかと疑わざるをえません。壬生沢川の約500mの橋りょうについては、流路の変更のための用地交渉はどうにかできたようなのですが、工事車両の通行などのための道路改良工事など準備工事に約3年、本体工事が4年かかるとのことで、それだけで、すぐに着工したとしても2030年以後の工事完了でさらにガイドウェイの設置になどに2年かかるなら、はじめから2027年開業などは、考えていたとは思えません。なおこの工事は、JR東海が最初に示した3㎞幅のルートの中心とした場合には不必要だったはずの工事です。ルート変更は飯田市長らの働きかけによると見る人が多いですが、全体の計画に対して不合理な要求を飲んでしまったとすれば、建設の計画自体がそもそもあやふやなものだったからともいえるのではないか。

(補足 2023/03/01)『読売』の報道

 『読売』23日が意外にまともな書き方をしていました。

 …計画は、環境影響評価といった当局の認可に時間がかかっている。数兆円かかるとみられる工事費の工面も課題だ。…

関連ページ