更新:2023/08/18

アメリカのリニア計画はどうなっているか?(3)
アメリカ売り込みは日本人むけのPR

 2015年の11月に書かれたページですが、MediumSam Holdenさんのページ「リニアをアメリカに売り込む本当の理由とは?」。

 筆者は次のようにいっています:

アセスへの反応など、マイナスの報道がない

 このページで、2011年から2016年に環境影響評価が始まるまではアメリカへの売り込みの様子が報道されていたけれど、以後、2021年1月に環境影響評価書の草稿が出されたという報道(『日経』2021年2月26日)があって、次は2023年2月にJR東海の柘植会長がニューヨークでリニアのPRの講演をしたというニュースまで、日本国内のテレビやラジオや新聞ではなにも報道されていなかったと書きました。

 で、2021年1月から2023年2月までのあいだにあったことは、環境影響評価書の草稿に対するパブリックコメントは、ボルチモア市などの「建設中止」勧告などさんざんなものだったのですが、日本では何も報道されて来なかったわけで、「そこが、重要で、なぜなのかという話になる」と書きました。

 サム・ホールデンさんは、「リニア売り込みはアメリカに向けてのPRではなくて国内メディアを通じて日本人をターゲットにしたPR」で「戦後の開発主義やナショナリズムと結びついたこの夢=妄想を日本人に持たせようとしている」という説明は、2015年の指摘なんですが、2023年の現在からみて、見事にあたっていると思います。つまり不都合なニュースはつたわらなかったわけです。または、つたえなかった。

 山本義隆さんも『リニア中央新幹線をめぐって』のなかで、葛西さんにも、開発に携わった技術者にも、明治維新以降の大国主義にもとづく考え方があると書いています。ふるくさいイデオロギーで始まったリニア計画のために「運悪く」移転対象となった方から、「赤紙が来たようなもの」、「JR東海はお殿様、そこのけそこのけお馬が通るでしかたない」、「失敗した時に誰も責任を取ろうとする様子がない。リニアみたいな公共事業は戦争のようなもの」といった声が出るのは至極当然です。静岡県知事バッシングを右翼メディアが熱心にやっていることからも、納得できると思います。

 葛西敬之さんの「やれ」という号令だけで始まったものと考えれば、一人の独裁的な経営者が考えたことですから、いくら東京大学の法学部を卒業された優秀なかたとはいえ、リニアを本当に建設するという考えに合理的なところがない可能性はある。つまり、JR東海の建設目的に合理的なものがないことは不思議でも何でもない。JR東海が建設しようとする真の目的はなんだろうなんてことを考えすぎると、もともと悪い頭がいっそう悪くなりそうです。なのに、そういう計画が、まかり通る不思議を考えるべきだと思いますね。

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