更新:2022/03/10、03/1103/15 追記

『文藝春秋』リニア座談会について(まとめ)

 『文藝春秋』リニア座談会について書いたページへの目次です。

 2022年3月7日付『中日』19面 "エンジン振動 抑える闘い H3ロケット打上 再延期で見通し立たず" で『文藝春秋』3月号で葛西敬之さんや森地茂さんと鼎談をしていた、松井孝典さんが、「JAXAの技術開発は対症療法的なので、新たな問題が出てきて、いたちごっこになる可能性がある」 とコメントしています。リニアも「超電導磁石を採用する誘導反発方式」という一番最初の発想が良くなかったので対症療法的に無理に無理を重ねる技術となってしまったといえます。

 超電導リニアの乗り物としての技術を素人の立場で評価するならどうすれば良いでしょうか?

 車を選ぶとき、例えば、サニーにしようかカローラにしようかと考えるわけです。例が古いですね。ベータにしようかVHSにしようかとか。似たような製品を並べて比べて選ぶということをするはずです。

 JR東海の「超電導リニア」は、時速500㎞/hで運行できる磁気浮上式鉄道という製品です。そういう乗り物が他にあるのかといえば、上海で走っている常電導のトランスラピッドというのがあります。だから、超電導リニアとトランスラピッドを、カローラとサニーを比べるような感じで比較したら良いと思います。このページでそういう比較をしています。トランスラピッドの方が優れているというのが結論です。

 超電導リニアの面倒で複雑な構造は、そのほとんどすべてが、超電導磁石を採用したことで起きる不都合をカバーするためのものです。つまり冒頭で紹介した、松井孝典氏のいっている、対症療法的な開発が行われてきたので複雑で重厚な技術になってしまったのだと思います。

 トランスラピッドを開発したドイツは、超電導方式も手掛けてみて、その欠点が分かったので、常電導に方向転換をしてトランスラピッドを1980年代の終わりごろまでには実用的な乗り物として完成させました。ところが国鉄、JR東海と国交省は超電導にこだわり続けた。

 超電導リニアだけをみて、例えば強力な磁界の問題は、磁気シールドを施したうえで基準値に対してどうなのかというよりは、トランスラピッドでは、そもそも磁界が非常に弱いので磁気シールドが必要でないということの方が違いがはっきり分かると思うのです。

 あるいは、超電導リニアでは浮力が十分になる速度まではゴムタイヤが必要です。その出し入れ装置も必要なのですが、速度がゼロでも浮上できる常電導では、ゴムタイヤも出し入れ装置も不要です。もちろん超電導磁石を冷却する装置や液体ヘリウムも必要ない。

 カローラとサニーという感じで比べたら、じつは、えっ!、蒸気機関と電車ぐらいの違いがあるんだと、そんな感じになるんじゃないかと思うのです。

 リニアモーターカーはドイツでも採用されなかった程度の引用では掘り下げが足りないと思います。

 リニアに対する批判も対症療法的なものでは「なかなかね」ということだろうと思いますよ。