更新:2025/11/13、11/14 補足

水源地に置くべきでないという委員もいた

長野県環境影響評価技術委員会、11月13日

 技術委員会を傍聴してきました。

 水源涵養保安林であった水源地であるところにヒ素のような有害物を含む残土を置くのはまずいという指摘が出るかと聞いていましたが、なかなかそういう意見は出ませんでした。最後のほうになって、リモート参加の北原曜信大名誉教授が、村民は将来も水を使い続けるのだから水源地に置くのは問題があるのではないか、また保安林指定解除の保全措置をとるという条件との関係で問題があるのではとの指摘がありましたが、委員長がそのことについてはこの場で議論する内容でないとして話は終わってしまいました。ちょっとがっかりしました。

 要対策土の下側の観測井戸の位置では、ヒ素が漏れ出したことは分からないのではないかとのこと。上側で出たヒ素、このヒ素は井戸の近くにもともと含まれていたもので、それが下側で検出されていない。JR東海は図面で地下水の流れを示しているが、この事実はそういう流れがないことを示している、観測井戸は要対策土の置場の中ほどにすべきとの指摘がありました。(資料1 の p31、33 参照。p31 の表では上流側のヒ素が下流側で基準値以下になっている。なぜ減少しているのかという問題。)

 細かい点では、p23、24の不溶化処理済みの暴露試験結果を示すグラフの左の一番下の数値は検出値以下という意味なのだから「0」にしているのマズイ、誤誘導することになるとの指摘がありました。

 ある新聞記者が終了後、委員長に二度目の審議はあるのかと食い下がっていました。私見としてはないと思いますが。

 ともかく、期待はずれの内容でした。PAの調整がわるく委員の声が小さく、帰り際に事務局に、せっかく飯田からきて声がほとんど聴き取れないようでは困るといってやりました。記者さんの中にも声が聞こえなかったといっている人がいましたね。

 期待外れという意味は、中間駅の土曽川橋梁のケーソン基礎の内部に要対策土を入れるという計画については、人の住む場所に危険といわれるものを置くことは環境の観点から許されないと指摘した技術委員会が、人が毎日飲む水の水源地に有害物の含まれる残土を置くことについて環境の観点から許されないとはいわなかった点です。

 手続き問題として、どうなのかは知らないですが、計画地が水源地であることは事実であるし、村民がこれから将来にわたって水を使い続ける可能性も非常に高いのですから、環境の観点から考えるならこの計画は止めるべきです。そして人工物には、耐久性の問題、何年もつのかということ、寿命がある。

 飯田から出かけたんですが、委員の声が非常に小さい、マイクの調整が上手くいかなかったんだろうと思いますが、JR東海の説明や、回答ばかりがはっきり聞こえるという状況。途中で指摘しましたが音は小さいまま。リニア関連の審議については、飯田の合同庁舎でリモートで傍聴できる配慮は必要。

 ところで、ただし、リモート参加の北原委員の至極まっとうな指摘だけがはっきり聞こえたのは、いったいなんだったんでしょうかね?

 リニアのように、間違って始まったことは、なかなかやめることができないものなんですが、いつかは止めなきゃならないんですよ。そうしないと、前の戦争のように行くとこまで行ってしまう。

会議次第・JR東海の説明資料1

 資料1 の p13 「要対策土の搬入に至る経緯」は、豊丘村リニア対策委員会、村民対象の説明会でも示していないし、説明もしていない。飯田市と南木曽町ででた要対策土は「法令等に基づき適切に処理済み」となっている点に注目。静岡県では、鉄粉にヒ素などを吸着させ磁気で分別し「無害化」してから処分するという方法があることを紹介しています(※)。その説明の中で使われている施設の写真はダイセキ環境ソリューションのHPからとったものです。飯田と南木曽の分もダイセキ環境ソリューションに処理をしてもらったと思われます。長野県内で行う、不溶化処理は土砂とヒ素などを分離するわけじゃないので、埋め立て処分した場合も有害物は元の量が残っているはず。溶け出ないかも知れないという程度の対策です。静岡で紹介した方法は、有害物を分離してから処分するというもの。有害物はかなり減らした上で埋めるということです。場所や相手によって説明が全然違っています。費用がかかるかも知れないですが、環境保全を標榜するなら最善の方法を選ぶべきで、そういう選択肢があることを住民に示さずに「苦渋の決断」だということは、まったく人をバカにしていると言わざるを得ないですね。また専門家が費用がかかって大変だから、それはないとしたのでは、JR東海や国に忖度することだから、どうなってるのと言いたいですね。安部以降はこういうことがそこらじゅうで起こっている事なんですが。金がかかってそりゃできないというなら、トンネルは掘るなという話になります。

静岡県 2025年8月4日【資料1-1】今回のご説明の概要(要対策土の処理) (PDF 1.7MB) (キャッシュ)

2025/11/15 補足

 委員会資料1の p31 の「水資源(地下水の水質)観測井測定結果」で、一番下に「2024年7月から開始しているが直近の四半期(1年間)として保全計画書では2024年10月開始と記載している」とあります。保全計画書の該当箇所は、p71 からはじまる「6-5 不溶化処理土の搬入に係る調査」の中で p72 の「表6 不溶化処理土の搬入に係る調査の実施内容」の注「※2」のことだろうと思いますが、測定データそのものは掲載されていません。近傍の地山からヒ素が検出されたという事実は村も住民も知らなかったことだろうと思います。豊丘村はヒ素だらけだから、今さら、要対策土の処分について騒がなくても良いというオジサンたちがいるらしいのに、なぜJR東海はデータを示さなかったのでしょうか。そういうオジサンたちに加担するのはイヤだと思ったんでしょうか?(笑)。

2025/11/16 補足

 本山の残土置場について水源涵養保安林指定の解除の審議が行われたのは2020年です。飯田市内で6月9日に行われた保全部会の会議録があります(令和2年度長野県森林審議会保全部会 議事録)。部会長が技術委員会委員長と同じ鈴木啓介さんで、北原曜さんも委員として出席しています。((予告編) 長野県森林審議会保全部会、6月9日長野県森林審議会保全部会、6月9日 (2))

 p4 で鈴木部会長がトンネル残土には何が含まれているか分からず溶け出るものがあるはずだがその対応について聞いています。JR東海は、トンネル掘削残土については毎日、重金属類の検査をして基準値以下のものだけを運び込むと説明しています。また本山下流地点でモニタリングの計画(工事前に1回、工事中に1回)をしていくと説明。

 p5 では、部会長が、完成後について、降った雨について地下に浸透する分の見積について聞いています。JR東海は、地下に浸透する水がゼロと考えて排水の設計等は行っていると回答していますが、これは部会長の質問への答えとしては、ちょっと違うんじゃないかと思いますね。科学的には、浸透する部分がどれぐらいあるのかという点があいまいになっていると思います。盛土の下側は地山を段切りしただけで防水シートを敷くとかの水が染みない工夫はしていないので、水は浸透するはずです。今回の技術委員会への説明の中で、JR東海自身が段切りした部分より下の地中で地下水の流れがあると説明しているし、それに関連してヒ素などが漏れた時にどこに観測井戸を設置すればよいかという議論がされています。

 p9 で北原委員が水源涵養保安林の意味について、「森林があるとまず蒸発散とかで、降った雨の6割とか7割位が流出という形になります。さらにそれをピークが小さくして平準化していくことが水源かん養機能ですよね。水源かん養機能に代わるものとして施設を造りなさいというのが保安林解除の基本ですよね。」と発言しています。

 2020年6月9日に傍聴者に配布された「資料2」の p2 「(3)解除予定保安林の概要」の中に、「工 指定日的 下流域の生活用水・農業用水等を確保するとともに、これら地域における災害を防止するため (当 該転用地内に谷止工4基 、山腹工あり)」、「オ 水の利用水道水源は、下流虻川において直接の取水施設はないが、天竜川沿いの地下水でまかなわれている。農業用水については、下流虻川沿いの神稲地区で、主に水田に利用されている。」と、地下水が生活用水として利用されていると理解していると思える書き方がしてあります。

 この6月9日の会議の中では、しかし、豊丘村で地下水が飲用など生活用水のほとんどの部分を占めている点が議論されていません。だから、北原委員が技術委員会で地下水の利用があるのだから問題があると指摘したのは、これまでの経緯に関係なく、環境の観点から今回の技術委員会で議論すべきことがらだったはずです。その点で、硝酸性窒素による地下水汚染の調査(参考)にかかわった富樫委員が、本山のジンガ洞に置いたヒ素が漏れても、豊丘村の水道水源に紛れ込む可能性はないと、明確に説明ができたなら、北原委員の指摘を鈴木部会長がここで議論する内容でないと仕切ったことについて県民も納得できるはずです。つまり、本当に環境の観点で十二分な議論がされたとはいえない。


※ 以下は、今朝、もくじページに掲載したものをそのまま載せました。


 本日13日に長野県環境影響評価技術技術委員会で豊丘村本山に要対策土=ヒ素などの有害が重金属類を含む残土を埋めて処分するJR東海の計画について環境の観点から審議が行われます(参考)。

 長野県は、12日にJR東海のこの計画についてパブリックコメントの募集を始めました(長野県のページ)。誰でも意見を提出できます。

 この計画の問題点は、①村の生活用水の水源地に有害な物質含む残土を埋め立て処分すること、②埋め立てにあたって行う不溶化処理や封じ込め対策の安全性に問題があること、③静岡県では同じように要対策土を埋めて処分する計画ですが、埋め立てる前に要対策土を無害化すると説明しており、大鹿村内など長野県内とは違ったやり方=危険性が少ないやり方を説明している点、④相手がしつこく説明を求めれば計画を変更している=一貫性がない点、⑤なぜ、こういう非常識で危険な方法でしか処分できないのかについて、きちんとした説明を住民に対してしていない点=地域の住民に心配や迷惑をかけるという自覚がない点。⑥長野県駅での要対策土使用について長野県のリニア整備推進局は環境行政に対して越権行為の介入を行ったこと。同じようなことをすべきでないこと。⑦誰もが納得できる安全な処分ができないならトンネル掘削を止めるべき。

 以下、詳細についてはこのページで「本山」、「土曽川」で検索をお願いします。これから長野まで出かけるので、後できちんと整理します。


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