更新:2021/08/03

虻川上流の谷埋め盛土の安全性は?

「虻川の安全を願う会」の「村長となんでもしゃべらまい会」

 8月2日、「虻川の安全を願う会」が「村長となんでもしゃべらまい会」を豊丘村公民館(ゆめあるて)で開催しました。テーマは虻川の上流部で支流になる下沢とジンガ洞へのリニア残土の谷埋め盛土の安全性について。

 下平村長は、谷埋め盛土が崩れる危険性よりは、自動車でも飛行機でも事故はつきもので、絶対安全ということはないという意味において、リニアそのものの事故の危険性の方が高いと思うと述べました。根拠など示していませんが、一般論としてなんとなく納得しがちな説明なんですが、南海トラフ地震の起きる可能性や豪雨の激甚化を考えるとそうとばかりは言えないはず。虻川下流の集落から参加したかなり高齢のかたですが、明治元年(1868年)の洪水で被害の言い伝えを話されました。谷埋め盛土のない状態での災害でも、虻川の下流域でも相当の被害があったということです。ひいお爺さんからの言い伝えだそうです(*)。

* 1961年の三六災の虻川による被害については、豊丘村の公民館報「とよおか」 に 原章さんによる「虻川下流域三六災害体験談(聞き書き)」が掲載されています(2013年3月20日の第697号 から)。

 村長は豊丘村には、技術面について判断できるノウハウがないと以前からいっており、今回もそういう発言がありました。役場職員も3名同席。しかし、土砂災害の起こりやすい地形の地域の自治体である以上は、そういうノウハウが無ければ住民を守ることができないはず。そういう部分については、県や国に言ってくれという態度は、まあ、思うところに正直なところは良いのですが、ちょっと無責任ではないかと思います。

 本山の残土置場で、盛り土の最下部の直径1mの水抜きパイプの下に予備の30cm径のパイプが見えない点については、現場を見てきたという職員が小動物の侵入を防ぐための措置がしてるので見えないと説明がありました。こういうちゃんとした職員もいるのですから。村長の技術的なものは云々という発言は職員に対して失礼ではありますね。

 たぶん総務課長だと思いますが、熱海の事故の盛土について、違法性だけを強調していた点が気になりました。重力の作用は全く同じに働くという事実は変わりありません。高度差150m、土量130万立米におよぶ谷埋め盛り土を対象にした安全基準はないので、こちらも将来的には違法の可能性があるわけです。熱海の事故は、基本的に危険なのに違法だったからとんでもない話だという評価しかあり得ないと思います。

 村長との懇談のあと「虻川の安全を願う会」は虻川上流の2か所のリニア残土盛り土計画の安全再確認について要望書を国交大臣、長野県知事、豊丘村長あてに出すことになりました。細部については今後変更もあるとのことなので、案の要点のみ紹介します。

熱海で豪雨により上流の盛り土が崩れ土石流が発生し大きな被害がでた。虻川上流では、本山の谷に130万立米、戸中の谷に26万立米のリニアトンネル残土を、盛土する工事が始まっている。これらの残土が豪雨や地震により土石流を起こし、われわれの生命財産に影響を及ぼすことが心配である。虻川上流の残土盛り土について安全性の再確認を強く求める。必要な事項については立方や条例作成などもおこない、JR東海の計画変更も行政指導し、将来にわたり虻川の安全が維持されるよ願う。
懸念事項は以下:
  1. 虻川上流のリニア残土量が、熱海の盛り土量に比べてあまりにも膨大である。
  2. 一般的に建設残土を水みちや谷筋に盛り土をして処分することは災害要因となり不適切。それを実施するのなら、法による規制や行政指導により永年に渡って厳格に安全が維持されるようにしていただきたい。 JR東海の虻川上流のリニア残上置き場の工事計画の基準となっている法律や条例などは国や県でも十分整備されておらず、そのことからも今回の工事計画は信頼できない。(豪雨や地震に対する盛り土の評価基準や安定計算の方法、奥山谷埋め盛り土の高さや量の制限、安全確保の盛り土工法の規則、地質・谷の傾斜や周りの沢の特性判断方法など)
  3. JR東海は、虻川上流のリニア残上置き場の工事について一応計画を作り長野県などの許可も得て進めているが、我々から見ても不十分と思える二とが多い。残上が崩れて熱海のような土石流のようなことが起こる心配かある。
  4. 残土置き場の排水施設、滑り防止施設なども当然経年劣化をする。JR東海はそういう基本的なことを認めていない。また、JR東海は虻川上流のリニア残上置き場を購入し管理すると言っているが、十分な残土置き場の維持管理が永遠に続くとは思えない。
  5. 虻川上流のリニア残上置き場崩壊に備えた砂防堰堤などの施設や非常時の連絡体制などの計画が今のところ無い。

 なお、「リニア中央新幹線建設促進協議会」の総会が7月14日にあったのですが、豊丘村は参加したのかという質問に、村側は連絡もなかったし出ていないと答えました。この総会を伝える報道記事では自治体や市町村長が出席したとしているものもありました。『信毎』は参集範囲について書いていません。

 長野県のプレスリリースでは、「出席予定者」としてあげられている中には確かに「市町村」という言葉はなく、それに近いものとしては「県内3地区(上伊那、飯伊、木曽)期成同盟会関係者」というものがあります。なにかちょっとおかしな感じですね。

出席予定者
 (1)来賓:東海旅客鉄道(株)、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構、県議会リニア建設促進議員連盟
 (2)会員:県、県議会、県市長会、県市議会議長会、県中小企業団体中央会、県商工会議所連合会、県商工会連合会、県内3地区(上伊那、飯伊、木曽)期成同盟会関係者、県青年会議所連盟

関連ページ

以下、外部リンク(「飯田リニア通信」)